[PA-8-1] Mixed Reality技術を用いた自動車運転や移動支援での評価の活用
【序論】近年リハビリテーションへの映像技術の応用としてVirtual Reality(VR)
およびMixed Reality(MR)が報告されている.VRは仮想の完全別世界に没入させる技術であり,MRは現実空間の特定の位置にComputer Graphics(CG)を配置し,さらにそのCGに干渉すること(触って操作するなど)が可能となる技術である.今回,当院でMR技術をリハビリテーションに活用する機会を得た.
【目的】2名の男性患者に対して,MRのアプリケーションに加えヘッド/アイトラッキング(H/E tracking)による詳細なデータを,自動車運転や歩行での移動時に活用した結果,評価や支援方法で新たな知見が得られるかを確認することとした.
【方法】MR機器はMicrosoft社製のHoloLens®を用いて,ソフトウェアはMRリハビリテーションソフトのリハまる(株式会社テクリコ)を使用した.PC内のコントローラソフトを操作することで,モバイル Wi-Fiルーターで繋がったHoloLens®のアプリケーションが開始され,過程と結果(H/E tracking,動画情報)が自動的に記録される仕組みである.今回,複数のアプリケーションのうち,数字抹消課題,花道課題,視界記録を行った.数字抹消課題は現実空間に現れる視覚的探索運動を誘発する数字の探索,花道課題は患者が実際に動きながら空間内に出現した花を探索する課題である.視界記録は患者一人称視点のデータを得られる課題で,屋内のみならず屋外環境で使用できる.H/E trackingデータ,グラフ,外界と一人称視点を重ね合わせた動画をその場で確認し動作の助言に活用した.報告に関して事例に書面で同意を得ており,利益相反はない.
【事例1】70代男性,延髄梗塞(153病日)で右半側の感覚障害を認めていた.MMSE26/30,認知関連行動アセスメント(CBA)30/30,脳卒中ドライバーのスクリーニング評価 日本版(J-SDSA)合格7.963/不合格7.636,Trail Making Test(TMT)A46秒/B95秒,Action Research Arm Test(ARAT)右51/57,Functional Independence Measure(FIM)122(運動87)で退院後の自動車運転を希望していた.MR数字抹消課題,HONDAセーフティナビ(DS)と屋外の停止車両での視界記録を1回実施した.
【事例2】50代男性,くも膜下出血(352病日),左同名半盲を認めていた.MMSE30/30,CBA25/30,TMT-A35秒/B55秒,FIM120(運動80)で退院後の外出時の不安が強く,妻同行で外来対応していた.花道課題,屋外での視界記録を外来時5回実施した.
【結果】対象2名ともに,介入時に視界記録によるH/E trackingで特異的なデータを示していた.事例1の数字抹消課題ではH/E trackingでは視覚探索ができていたものの,DSや停止車両ではH/E trackingの探索活動がわずかで,右下肢の注意不足につながっていた.自身の感覚に頼った動作ではミスが多いことを伝えたことで動作改善を認めた.事例2の花道課題,屋外でのH/E trackingでは,左同名半盲側への視覚探索が強固となり本来は半盲のない右側への探索不足を認めた.グラフや動画で右への視覚探索不足を確認し移動時に注意を促したことで,外出時の躓きや不安の軽減を認め一人でも屋外を移動できるようになった.
【考察】結果よりMRを用いた自動車運転や移動支援での評価の活用は,今回の対象とした2名の男性に対しては実際の動作の振り返りとなり改善を認めた.検証した事例が少ないものの,MRによる認知課題とH/E trackingを使用することで,受け入れやすく評価や支援時に活用することができる可能性が示唆された.MRはベッドサイドや屋外など,環境を選ばずに使用できるため,動作指導への活用という介入方法として今後の発展や多様性に期待ができると考えられた.
およびMixed Reality(MR)が報告されている.VRは仮想の完全別世界に没入させる技術であり,MRは現実空間の特定の位置にComputer Graphics(CG)を配置し,さらにそのCGに干渉すること(触って操作するなど)が可能となる技術である.今回,当院でMR技術をリハビリテーションに活用する機会を得た.
【目的】2名の男性患者に対して,MRのアプリケーションに加えヘッド/アイトラッキング(H/E tracking)による詳細なデータを,自動車運転や歩行での移動時に活用した結果,評価や支援方法で新たな知見が得られるかを確認することとした.
【方法】MR機器はMicrosoft社製のHoloLens®を用いて,ソフトウェアはMRリハビリテーションソフトのリハまる(株式会社テクリコ)を使用した.PC内のコントローラソフトを操作することで,モバイル Wi-Fiルーターで繋がったHoloLens®のアプリケーションが開始され,過程と結果(H/E tracking,動画情報)が自動的に記録される仕組みである.今回,複数のアプリケーションのうち,数字抹消課題,花道課題,視界記録を行った.数字抹消課題は現実空間に現れる視覚的探索運動を誘発する数字の探索,花道課題は患者が実際に動きながら空間内に出現した花を探索する課題である.視界記録は患者一人称視点のデータを得られる課題で,屋内のみならず屋外環境で使用できる.H/E trackingデータ,グラフ,外界と一人称視点を重ね合わせた動画をその場で確認し動作の助言に活用した.報告に関して事例に書面で同意を得ており,利益相反はない.
【事例1】70代男性,延髄梗塞(153病日)で右半側の感覚障害を認めていた.MMSE26/30,認知関連行動アセスメント(CBA)30/30,脳卒中ドライバーのスクリーニング評価 日本版(J-SDSA)合格7.963/不合格7.636,Trail Making Test(TMT)A46秒/B95秒,Action Research Arm Test(ARAT)右51/57,Functional Independence Measure(FIM)122(運動87)で退院後の自動車運転を希望していた.MR数字抹消課題,HONDAセーフティナビ(DS)と屋外の停止車両での視界記録を1回実施した.
【事例2】50代男性,くも膜下出血(352病日),左同名半盲を認めていた.MMSE30/30,CBA25/30,TMT-A35秒/B55秒,FIM120(運動80)で退院後の外出時の不安が強く,妻同行で外来対応していた.花道課題,屋外での視界記録を外来時5回実施した.
【結果】対象2名ともに,介入時に視界記録によるH/E trackingで特異的なデータを示していた.事例1の数字抹消課題ではH/E trackingでは視覚探索ができていたものの,DSや停止車両ではH/E trackingの探索活動がわずかで,右下肢の注意不足につながっていた.自身の感覚に頼った動作ではミスが多いことを伝えたことで動作改善を認めた.事例2の花道課題,屋外でのH/E trackingでは,左同名半盲側への視覚探索が強固となり本来は半盲のない右側への探索不足を認めた.グラフや動画で右への視覚探索不足を確認し移動時に注意を促したことで,外出時の躓きや不安の軽減を認め一人でも屋外を移動できるようになった.
【考察】結果よりMRを用いた自動車運転や移動支援での評価の活用は,今回の対象とした2名の男性に対しては実際の動作の振り返りとなり改善を認めた.検証した事例が少ないものの,MRによる認知課題とH/E trackingを使用することで,受け入れやすく評価や支援時に活用することができる可能性が示唆された.MRはベッドサイドや屋外など,環境を選ばずに使用できるため,動作指導への活用という介入方法として今後の発展や多様性に期待ができると考えられた.