[PA-8-7] 生活期脳卒中片麻痺者に対するmodified-CIセラピーの適応効果の検証
【はじめに】脳血管疾患後の麻痺側上肢に対する治療法Constraint-Induced Movement Therapy(以下,CIMT)は,2週間のプログラム期間中にOTによる個別的な介入時間(以下,直接介入)が1日3時間必要とされ,診療報酬制度内での実行は難しい.諸外国においても同様にOTの直接介入時間の確保が困難であり,イギリスのPageらは,10週間,1日30分,週3回の直接介入に修正し,ドイツのSterrらは,3週間,1日90分,週5回の直接介入に修正したmodified-CIMT(以下,mCIMT)を試み,標準的なCIMTと同等の効果を報告している.今回,我が国の診療報酬制度内で実行可能なmCIMTを試み,その有効性について検証したので報告する.
【方法】2019年12月から2023年7月の間,当センターに入院,入所中の片麻痺患者6名を対象に,4週間,1日40分,週5回の直接介入に修正したmCIMTを実施し,麻痺側上肢運動機能と実生活での麻痺手使用の変化を先行研究との比較により分析した.対象の内訳は,男性5名,女性1名,平均年齢47.1歳,脳出血3名,脳梗塞3名,右片麻痺5名(左利き1名),左片麻痺1名,Fugl-Meyer assessment上肢運動項目(以下,FMA U/E)はWoytowicz 2017の基準において,中等症〜軽症1名,重症〜中等症5名,重度感覚障害のある者4名,麻痺側上肢の屈筋に筋緊張亢進を認める者3名が含まれ,発症からの期間は平均12.9ヶ月であった.1日40分の直接介入は反復・課題指向型練習の一部と必要最小に短縮した行動療法の面接に費やし,不足分は,作業療法室内でOTの遠位監視のもと行う自主トレーニングを40分から80分と対面の面接に相当する選択回答形式の質問紙への記録で補った.評価にはFMA U/Eと入院と入所および重度麻痺手用に修正を加えたmodified-impatient Motor Activity of Log(以下,mi-MAL)のAmount of Use(以下,AOU:使用頻度)とHow Well(以下,HW:動作の質)を用いた.測定は介入開始1ヶ月前,介入の前後,介入1,3月後の計5回行い,先行研究との比較は効果量(Effect Size)と臨床的に意義のある最小変化量minimal clinical important difference(以下,MCID)を指標とした.
【倫理的配慮】当センターの研究開発倫理審査委員会(承認No:yrsh0301)と湘南医療大学研究倫理委員会(承認番号:医大研倫19-0004号)の承認を受け,対象の了承を得て実施した.
【結果】FMA U/Eは30.3±9.1点→38.3±8点(平均±標準偏差,介入前→介入3ヶ月後,以下同様)へ8±2.5点変化し,効果量は0.6であった.mi-MAL AOUは1.3±0.8点→3.2±0.9点へ1.9±0.5点変化し,HWは1.6±0.6点→2.8±1.2点へ1.2±0.8点変化し,効果量はいずれも1.2であった.
【考察】FMA U/E の変化量と効果量の比較は前述のPageとSterrらと同等の結果であり,またPageらが提唱するMCID 4.25点を超えた.実生活場面の麻痺手の使用頻度とその動作の質を評価するMALについては,オリジナルのCIMTを実践したTaubとUswatteらの報告(10日間連続して6時間/日,AOU変化量:介入前2.1から4.0)と比較し同等の結果となった.麻痺側上肢の運動回復(FMA U/E)とMALの改善の程度を比較すると,FMA U/EのEffect sizeが0.6に対し,mi-MALのAOUとHWのEffect sizeは1.2と大きく,対象からは「麻痺手を使わないとこの行為はできない」「麻痺手を使うようになって便利になった」という声が聞かれた.対象に重度の麻痺と感覚障害,屈筋に筋緊張の亢進のある者が含まれ,直接介入時間の制限はあるが,本mCIMTの介入は麻痺手の機能回復を生活動作の使用へと汎化するCIMTの目的を果たしているものと考える.
【結語】今回我々が試みたmCIMTは,麻痺側上肢機能の改善と生活での麻痺手使用の向上に効果のある可能性が示唆された.
【方法】2019年12月から2023年7月の間,当センターに入院,入所中の片麻痺患者6名を対象に,4週間,1日40分,週5回の直接介入に修正したmCIMTを実施し,麻痺側上肢運動機能と実生活での麻痺手使用の変化を先行研究との比較により分析した.対象の内訳は,男性5名,女性1名,平均年齢47.1歳,脳出血3名,脳梗塞3名,右片麻痺5名(左利き1名),左片麻痺1名,Fugl-Meyer assessment上肢運動項目(以下,FMA U/E)はWoytowicz 2017の基準において,中等症〜軽症1名,重症〜中等症5名,重度感覚障害のある者4名,麻痺側上肢の屈筋に筋緊張亢進を認める者3名が含まれ,発症からの期間は平均12.9ヶ月であった.1日40分の直接介入は反復・課題指向型練習の一部と必要最小に短縮した行動療法の面接に費やし,不足分は,作業療法室内でOTの遠位監視のもと行う自主トレーニングを40分から80分と対面の面接に相当する選択回答形式の質問紙への記録で補った.評価にはFMA U/Eと入院と入所および重度麻痺手用に修正を加えたmodified-impatient Motor Activity of Log(以下,mi-MAL)のAmount of Use(以下,AOU:使用頻度)とHow Well(以下,HW:動作の質)を用いた.測定は介入開始1ヶ月前,介入の前後,介入1,3月後の計5回行い,先行研究との比較は効果量(Effect Size)と臨床的に意義のある最小変化量minimal clinical important difference(以下,MCID)を指標とした.
【倫理的配慮】当センターの研究開発倫理審査委員会(承認No:yrsh0301)と湘南医療大学研究倫理委員会(承認番号:医大研倫19-0004号)の承認を受け,対象の了承を得て実施した.
【結果】FMA U/Eは30.3±9.1点→38.3±8点(平均±標準偏差,介入前→介入3ヶ月後,以下同様)へ8±2.5点変化し,効果量は0.6であった.mi-MAL AOUは1.3±0.8点→3.2±0.9点へ1.9±0.5点変化し,HWは1.6±0.6点→2.8±1.2点へ1.2±0.8点変化し,効果量はいずれも1.2であった.
【考察】FMA U/E の変化量と効果量の比較は前述のPageとSterrらと同等の結果であり,またPageらが提唱するMCID 4.25点を超えた.実生活場面の麻痺手の使用頻度とその動作の質を評価するMALについては,オリジナルのCIMTを実践したTaubとUswatteらの報告(10日間連続して6時間/日,AOU変化量:介入前2.1から4.0)と比較し同等の結果となった.麻痺側上肢の運動回復(FMA U/E)とMALの改善の程度を比較すると,FMA U/EのEffect sizeが0.6に対し,mi-MALのAOUとHWのEffect sizeは1.2と大きく,対象からは「麻痺手を使わないとこの行為はできない」「麻痺手を使うようになって便利になった」という声が聞かれた.対象に重度の麻痺と感覚障害,屈筋に筋緊張の亢進のある者が含まれ,直接介入時間の制限はあるが,本mCIMTの介入は麻痺手の機能回復を生活動作の使用へと汎化するCIMTの目的を果たしているものと考える.
【結語】今回我々が試みたmCIMTは,麻痺側上肢機能の改善と生活での麻痺手使用の向上に効果のある可能性が示唆された.