[PA-9-10] 急性期脳梗塞患者で,重度肥満と医療行為の拒否により作業療法に難渋した症例
【はじめに】今回,自宅で引きこもり状態であったが,脳梗塞を発症し重度の運動性失語,基本動作全介助になった症例を担当する機会を得た.重度肥満による離床の制限や,リハビリテーション(以下リハ)および治療の拒否があり,作業療法に難渋した.そこで,作業療法士(以下OT)主導の関わりから,症例が自ら意思決定する症例主体の関わりへと変えたところ,再びリハに応じられ,基本動作・ADLの向上を得ることができたので報告する.発表に際し,本人へ口頭同意,ご家族様へ口頭,書面での同意を得た.
【症例】40代,男性,右利き.体重143kg,BMI51.3.経過:約X- 3年より,重度肥満の影響で仕事を辞め,自宅に引きこもるようになった.X日,意識障害にて当院搬送され,緊急入院となる.MRI画像では,DWIにて左半球の広範な高信号を認め,急性期脳梗塞の所見.同日,開頭減圧術施行.X+1日,作業療法開始.
【作業療法初期評価 X+10日】JCS:Ⅱ-20.ROM:制限部位なし.Brunnstrom Stage右Ⅰ-Ⅰ-Ⅰ.筋緊張:右上下肢弛緩.感覚:表在・深部とも重度鈍麻~脱失疑い.MMT:左上下肢4 高次脳機能障害:重度運動性失語.意思疎通はクローズドクエスチョンでの首振りが可能.褥瘡:右背部,臀部.基本動作:寝返りは3人介助.ADL:食事は経管栄養.排泄は尿バルーン留置,便はオムツ内.その他Ns介助.FIM:20点.
【Ⅰ期:ベッドサイドにてリハ主導で関わった時期 X+10~25日】ROM訓練および,複数人介助下での端座位訓練を開始した.端座位は重度介助を要し,3分ほどで疲労感が著明に出現した.OTは急性期の離床訓練が必要と思い,本人のリハへの意欲を考慮しつつも,OT主導で端座位訓練を進めていった.
【Ⅱ期:治療・リハを拒否した時期 X+26~53日】褥瘡処置後の強い疼痛や,下痢症状,座位訓練後の疲労感等により,次第にリハ拒否がみられた.更に治療の拒否もあり,毎日声かけはするもののリハは行えず中断となった.
【Ⅲ期:症例主体への関わりへ変更し,再びリハに応じられた時期 X+54~126日】移乗用リフトを用い,端座位の抵抗なく車椅子へ移れる環境調整を行った.次に,症例と目標を再確認し自宅退院を目指すことを共有した.その上で離床や,ROM訓練,もしくはリハを休むなどといったプログラムを複数提示し,それを症例が選択,意思決定できるようにした.自ら選択してく中で,次第にリハに意欲的に取り組むようになり,基本動作・ADLの向上が得られた.X+127日,回復期リハ病院へ転院した.
【作業療法最終評価 X+126日】体重120g.BIM:43.0.JCS:Ⅰ-3.ROM:右上下肢に可動制限あり.Brunnstrom Stage右Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ.筋緊張:右上下肢亢進.MMT:左上下肢5.高次脳機能障害:失語残存.褥瘡:臀部.基本動作:起居は軽介助.座位,立位は見守り.移乗は立位にて2人介助.ADL:食事はゼリー食を摂取.排泄はオムツ内失禁.FIM:33点.
【考察】急性期脳卒中患者は早期に積極的なリハを行うことが推奨されており,介入当初はOT主導でリハを積極的に行えるよう進めていた.しかし,症例は元々引きこもりの生活であり,更に脳梗塞による急激な身体的・環境の変化が起き,精神的不安があったと考えられる.斎藤は,引きこもりの患者に対し,医療者側が一方的に押し付ける治療を批判し,治療の主軸は自発性,主体性を発揮できる場所を見出すことと述べている.今回,症例の拒否があった後,OT主導から症例主体への関わりへと変えた.それにより,症例が意思決定したリハプログラムを達成していく過程で,症例の自己効力感を高めることができ,リハを積極的に行え,基本動作・ADLの改善を支援できたと考える.
【症例】40代,男性,右利き.体重143kg,BMI51.3.経過:約X- 3年より,重度肥満の影響で仕事を辞め,自宅に引きこもるようになった.X日,意識障害にて当院搬送され,緊急入院となる.MRI画像では,DWIにて左半球の広範な高信号を認め,急性期脳梗塞の所見.同日,開頭減圧術施行.X+1日,作業療法開始.
【作業療法初期評価 X+10日】JCS:Ⅱ-20.ROM:制限部位なし.Brunnstrom Stage右Ⅰ-Ⅰ-Ⅰ.筋緊張:右上下肢弛緩.感覚:表在・深部とも重度鈍麻~脱失疑い.MMT:左上下肢4 高次脳機能障害:重度運動性失語.意思疎通はクローズドクエスチョンでの首振りが可能.褥瘡:右背部,臀部.基本動作:寝返りは3人介助.ADL:食事は経管栄養.排泄は尿バルーン留置,便はオムツ内.その他Ns介助.FIM:20点.
【Ⅰ期:ベッドサイドにてリハ主導で関わった時期 X+10~25日】ROM訓練および,複数人介助下での端座位訓練を開始した.端座位は重度介助を要し,3分ほどで疲労感が著明に出現した.OTは急性期の離床訓練が必要と思い,本人のリハへの意欲を考慮しつつも,OT主導で端座位訓練を進めていった.
【Ⅱ期:治療・リハを拒否した時期 X+26~53日】褥瘡処置後の強い疼痛や,下痢症状,座位訓練後の疲労感等により,次第にリハ拒否がみられた.更に治療の拒否もあり,毎日声かけはするもののリハは行えず中断となった.
【Ⅲ期:症例主体への関わりへ変更し,再びリハに応じられた時期 X+54~126日】移乗用リフトを用い,端座位の抵抗なく車椅子へ移れる環境調整を行った.次に,症例と目標を再確認し自宅退院を目指すことを共有した.その上で離床や,ROM訓練,もしくはリハを休むなどといったプログラムを複数提示し,それを症例が選択,意思決定できるようにした.自ら選択してく中で,次第にリハに意欲的に取り組むようになり,基本動作・ADLの向上が得られた.X+127日,回復期リハ病院へ転院した.
【作業療法最終評価 X+126日】体重120g.BIM:43.0.JCS:Ⅰ-3.ROM:右上下肢に可動制限あり.Brunnstrom Stage右Ⅱ-Ⅱ-Ⅱ.筋緊張:右上下肢亢進.MMT:左上下肢5.高次脳機能障害:失語残存.褥瘡:臀部.基本動作:起居は軽介助.座位,立位は見守り.移乗は立位にて2人介助.ADL:食事はゼリー食を摂取.排泄はオムツ内失禁.FIM:33点.
【考察】急性期脳卒中患者は早期に積極的なリハを行うことが推奨されており,介入当初はOT主導でリハを積極的に行えるよう進めていた.しかし,症例は元々引きこもりの生活であり,更に脳梗塞による急激な身体的・環境の変化が起き,精神的不安があったと考えられる.斎藤は,引きこもりの患者に対し,医療者側が一方的に押し付ける治療を批判し,治療の主軸は自発性,主体性を発揮できる場所を見出すことと述べている.今回,症例の拒否があった後,OT主導から症例主体への関わりへと変えた.それにより,症例が意思決定したリハプログラムを達成していく過程で,症例の自己効力感を高めることができ,リハを積極的に行え,基本動作・ADLの改善を支援できたと考える.