[PA-9-8] 脳卒中後の患者におけるトイレ動作自立に関連する要因の検討
【はじめに】トイレ動作は生理的現象を伴って毎日行う行われるものであり,その必要性は高い.また,在宅療養における介護においても主要な問題要素の一つになっている.そのような中,トイレ動作自立に関連する報告は散見されるがトイレ動作自立に関する要因の検討をした報告は少ない.そこで本研究は,当院回復期リハビリテーション病棟にリハビリテーション目的で入院した脳卒中後の患者のうち,トイレ動作自立に関連する要因を検討することを目的とした.
【方法】
本研究は当院に入院し退院した脳卒中後の患者を対象とした単施設後向き観察研究である.データの欠損がある者等は除外した.本研究は,当院の倫理審査委員会の承認を受け,個人情報の取り扱いに十分な配慮のもと実施した.
調査項目は,年齢,性別,診断名,発症から入院までの日数,入院時Functional Assessment for Control of Trunk(FACT),入院時Functional Balance Scale(FBS),入院時Mini-Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),入院時National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS),入院時Functional Independence Measure(FIM)とした.今回は,退院時FIMトイレ動作項目が6点以上の者を自立群,5点以下の者を非自立群と定義した.各項目の2群間比較を行ったのちに,ロジスティック回帰分析を用いて,トイレ動作自立に関連する要因を検討した.説明変数はトイレ動作に影響すると考えられる変数を投入した.統計解析はRを使用し,有意水準は5%とした.
【結果】
研究期間中の脳卒中後の患者は257名であり,除外基準に該当しなかった213名を本研究の対象とした.年齢の平均は73歳,男性127名(60%),女性86名(40%),脳梗塞141名(66%),脳出血62名(29%),くも膜下出血10名(5%)であった.退院時にトイレ動作が自立していた群は111名(52%),非自立群は102名(48%)だった.トイレ動作自立群は非自立群と比較して,年齢が低く(P<0.001),入院時FACTやMMSE-J,FBSが高く(P<0.001),NIHSSが低かった(P<0.001).
トイレ動作自立か否かを目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,年齢(P=0.002)および入院時NIHSS(P=0.026),入院時トイレ動作FIM(P=0.037)が抽出された.
【考察】
回復期リハビリテーション病棟入院時の年齢およびNIHSSが高い患者は,退院時にトイレ動作の自立が獲得し難いことが明らかとなった.先行研究で,FIMの点数がNIHSS得点の影響を強く受けることが報告されている.本研究も同様にNIHSSの点数が低いほどトイレ動作が自立になるという結果に至った.要因として,NIHSSは脳卒中重症度を評価するツールであり,身体機能,運動失調,高次脳機能までスクリーニングが可能である.よって,トイレ動作に必要とされる能力として,上肢,体幹,下肢の協調運動,立位バランス,高次脳機能など様々な能力が必要とし,NIHSSが高い患者ほど,総合的に能力が低く,自立が困難と考えられた.年齢に関しては,年齢が高いほど,脳卒中後の身体機能,高次脳機能の回復が困難になる事が多く,さらに筋力,栄養状態などの影響も受け,トイレ動作自立に至り難かったと考えられた.今回の結果から,年齢及びNIHSSが高いほど,充実したリハビリテーションと,環境設定,福祉用具の導入の検討が必要になる事が示唆された.
【方法】
本研究は当院に入院し退院した脳卒中後の患者を対象とした単施設後向き観察研究である.データの欠損がある者等は除外した.本研究は,当院の倫理審査委員会の承認を受け,個人情報の取り扱いに十分な配慮のもと実施した.
調査項目は,年齢,性別,診断名,発症から入院までの日数,入院時Functional Assessment for Control of Trunk(FACT),入院時Functional Balance Scale(FBS),入院時Mini-Mental State Examination-Japanese(MMSE-J),入院時National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS),入院時Functional Independence Measure(FIM)とした.今回は,退院時FIMトイレ動作項目が6点以上の者を自立群,5点以下の者を非自立群と定義した.各項目の2群間比較を行ったのちに,ロジスティック回帰分析を用いて,トイレ動作自立に関連する要因を検討した.説明変数はトイレ動作に影響すると考えられる変数を投入した.統計解析はRを使用し,有意水準は5%とした.
【結果】
研究期間中の脳卒中後の患者は257名であり,除外基準に該当しなかった213名を本研究の対象とした.年齢の平均は73歳,男性127名(60%),女性86名(40%),脳梗塞141名(66%),脳出血62名(29%),くも膜下出血10名(5%)であった.退院時にトイレ動作が自立していた群は111名(52%),非自立群は102名(48%)だった.トイレ動作自立群は非自立群と比較して,年齢が低く(P<0.001),入院時FACTやMMSE-J,FBSが高く(P<0.001),NIHSSが低かった(P<0.001).
トイレ動作自立か否かを目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,年齢(P=0.002)および入院時NIHSS(P=0.026),入院時トイレ動作FIM(P=0.037)が抽出された.
【考察】
回復期リハビリテーション病棟入院時の年齢およびNIHSSが高い患者は,退院時にトイレ動作の自立が獲得し難いことが明らかとなった.先行研究で,FIMの点数がNIHSS得点の影響を強く受けることが報告されている.本研究も同様にNIHSSの点数が低いほどトイレ動作が自立になるという結果に至った.要因として,NIHSSは脳卒中重症度を評価するツールであり,身体機能,運動失調,高次脳機能までスクリーニングが可能である.よって,トイレ動作に必要とされる能力として,上肢,体幹,下肢の協調運動,立位バランス,高次脳機能など様々な能力が必要とし,NIHSSが高い患者ほど,総合的に能力が低く,自立が困難と考えられた.年齢に関しては,年齢が高いほど,脳卒中後の身体機能,高次脳機能の回復が困難になる事が多く,さらに筋力,栄養状態などの影響も受け,トイレ動作自立に至り難かったと考えられた.今回の結果から,年齢及びNIHSSが高いほど,充実したリハビリテーションと,環境設定,福祉用具の導入の検討が必要になる事が示唆された.