[PB-2-2] 脳梗塞の既往のある急性大動脈解離術後の患者に,早期ADL練習が有効であった一経験
【はじめに】重複障害患者は元々の運動耐容能が低く,特に廃用症候群の影響を受けやすいため,早期リハビリテーション介入が重要と言われている.また心大血管開胸術後は,術後合併症予防のために積極的な離床が推奨されているが,OTの実践報告は散見される程度である.今回,脳梗塞の既往がある急性大動脈解離(以下AAD)術後の患者に対して,早期からADL練習を行ったことでセルフケア維持改善に繋がった事例を経験したため報告する.尚,本発表に際して本人の同意を得ている.
【症例紹介】70代男性.右利き.現病歴:X年Y月,AAD(Stanford A型)を発症,緊急で弓部置換術を実施.術後はICUにて人工呼吸器管理.4病日に抜管.5病日にCCUへ転棟.術後の早期離床目的で同日よりPTとOTを開始.安静度:状態に応じて離床可能.既往歴:脳梗塞による左不全片麻痺,高次脳機能障害あり.入院前:妻と子供と同居し在宅ADL•IADLは自立していた.
【初期評価:5~7病日】血圧140/68mmHg,心拍数94回,呼吸数19-20回,ネーザルハイフロー療法:酸素50L,55%にてSpO2:96%.Xp:左胸水貯留傾向.修正Borg Scale(以下修正BS):2,短時間の会話で息切れ出現.GCS:E4V5M6.四肢末端の冷感,胸肋部,背部痛なし.MMT:右上下肢4,左上下肢3,左片麻痺:BRS上肢,手指,下肢Ⅴ.FIM:37/126点(セルフケア:6/42点).HDS-R:16/30点.疎通は可能も,発語の流暢性低下と内容理解に時間を要していた.
【経過】初期(5~13病日):術後臥床が続き,起居は全介助であった.基本動作時の非麻痺側の参加も困難であったため,ヘッドアップでの上肢機能練習やスプーン操作練習を開始した.11病日にネーザルカニューレ(以下NC):4L/分へ移行し,動作時の息堪えやSpO2低下を認めたため,呼吸法を併用した基本動作方法を指導•練習した.同日,食事開始となるがスプーン操作や食器把持が不十分であったため,動作練習や食事場面での環境調整を行い,13病日に自助食器にて自立した.
中期(14病日~25病日):基本動作が軽介助となり,ポータブルトイレ(以下PWC)練習を開始した.呼吸法を併用したトイレ動作練習を行い,17病日にPWC使用が見守りとなったため,病棟内WCの練習へ移行した.段階的に離床が進んでいたが,24病日に左胸水貯留が悪化したため,NC:3L/分から4L/分へ増量し,左胸腔穿刺による胸水除去も実施された.端座位で息切れ増強するため,呼吸状態に合わせてヘッドアップや車椅子座位での上肢機能練習や歯磨き練習を継続した.
後期(26~34病日):左胸水貯留から無気肺へ移行し,NC:4L/分で安静時でもSpO2:80%台後半まで低下した.動作時の呼吸苦が増強し,日中臥床傾向となるが,OT時にはヘッドアップにて整容動作練習などを継続した.徐々に無気肺は改善したため,病棟内WC練習などの離床を再開し,35病日に回復期病院へ転院となった.
【最終評価:30病日】血圧120/55mmHg,心拍数77回,呼吸数20回,SpO2:98%(NC:2L/分),修正BS:1.動作時に適宜深呼吸を挟むことで,息切れは自制内.MMT:両上下肢4,FIM:76/126点(セルフケア:23/42点).基本動作は軽介助,PWCは見守り,食事は自助食器にて自立,準備に要介助も歯ブラシ操作は自立となった.
【考察】本症例は脳梗塞の既往があり,今回AAD術後の臥床継続により顕著な身体機能とADL低下が生じていた.早期からADLに着目した介入を実施したことで,セルフケアの改善に繋がったと考えられる.また術後合併症により,再度活動性が低下したが,その間も心肺機能に応じてADL練習を継続したことが,転院時のセルフケア能力維持に寄与したと考える.このことから,特に重複障害を有する心大血管開胸術後の症例に対し,早期からADLに着目したOTが有効ではないかと言える.
【症例紹介】70代男性.右利き.現病歴:X年Y月,AAD(Stanford A型)を発症,緊急で弓部置換術を実施.術後はICUにて人工呼吸器管理.4病日に抜管.5病日にCCUへ転棟.術後の早期離床目的で同日よりPTとOTを開始.安静度:状態に応じて離床可能.既往歴:脳梗塞による左不全片麻痺,高次脳機能障害あり.入院前:妻と子供と同居し在宅ADL•IADLは自立していた.
【初期評価:5~7病日】血圧140/68mmHg,心拍数94回,呼吸数19-20回,ネーザルハイフロー療法:酸素50L,55%にてSpO2:96%.Xp:左胸水貯留傾向.修正Borg Scale(以下修正BS):2,短時間の会話で息切れ出現.GCS:E4V5M6.四肢末端の冷感,胸肋部,背部痛なし.MMT:右上下肢4,左上下肢3,左片麻痺:BRS上肢,手指,下肢Ⅴ.FIM:37/126点(セルフケア:6/42点).HDS-R:16/30点.疎通は可能も,発語の流暢性低下と内容理解に時間を要していた.
【経過】初期(5~13病日):術後臥床が続き,起居は全介助であった.基本動作時の非麻痺側の参加も困難であったため,ヘッドアップでの上肢機能練習やスプーン操作練習を開始した.11病日にネーザルカニューレ(以下NC):4L/分へ移行し,動作時の息堪えやSpO2低下を認めたため,呼吸法を併用した基本動作方法を指導•練習した.同日,食事開始となるがスプーン操作や食器把持が不十分であったため,動作練習や食事場面での環境調整を行い,13病日に自助食器にて自立した.
中期(14病日~25病日):基本動作が軽介助となり,ポータブルトイレ(以下PWC)練習を開始した.呼吸法を併用したトイレ動作練習を行い,17病日にPWC使用が見守りとなったため,病棟内WCの練習へ移行した.段階的に離床が進んでいたが,24病日に左胸水貯留が悪化したため,NC:3L/分から4L/分へ増量し,左胸腔穿刺による胸水除去も実施された.端座位で息切れ増強するため,呼吸状態に合わせてヘッドアップや車椅子座位での上肢機能練習や歯磨き練習を継続した.
後期(26~34病日):左胸水貯留から無気肺へ移行し,NC:4L/分で安静時でもSpO2:80%台後半まで低下した.動作時の呼吸苦が増強し,日中臥床傾向となるが,OT時にはヘッドアップにて整容動作練習などを継続した.徐々に無気肺は改善したため,病棟内WC練習などの離床を再開し,35病日に回復期病院へ転院となった.
【最終評価:30病日】血圧120/55mmHg,心拍数77回,呼吸数20回,SpO2:98%(NC:2L/分),修正BS:1.動作時に適宜深呼吸を挟むことで,息切れは自制内.MMT:両上下肢4,FIM:76/126点(セルフケア:23/42点).基本動作は軽介助,PWCは見守り,食事は自助食器にて自立,準備に要介助も歯ブラシ操作は自立となった.
【考察】本症例は脳梗塞の既往があり,今回AAD術後の臥床継続により顕著な身体機能とADL低下が生じていた.早期からADLに着目した介入を実施したことで,セルフケアの改善に繋がったと考えられる.また術後合併症により,再度活動性が低下したが,その間も心肺機能に応じてADL練習を継続したことが,転院時のセルフケア能力維持に寄与したと考える.このことから,特に重複障害を有する心大血管開胸術後の症例に対し,早期からADLに着目したOTが有効ではないかと言える.