[PB-2-4] 前頭葉機能が低下した高齢心不全症例の1例
【はじめに】高齢心不全患者は,複数の併存疾患に罹患している場合があり,身体的・精神的影響から,社会生活や趣味・楽しみが制限され,社会的に孤立しやすい.その為,原疾患のみでは無く,心理・社会的側面にも視野を広げ,患者・家族とともに個々に応じた治療方針を定める必要がある.今回,急性心筋梗塞後に心不全を続発した高齢男性を担当した.低心機能に加え,前頭葉機能が低下している本事例に対して,本人,家族への疾病管理教育と段階的な趣味再開が社会参加へ有用であった.発表に際し,事例より口頭にて承諾を得ている.
【事例紹介】80歳代,男性.診断名:ST上昇型下壁心筋梗塞,うっ血性心不全,心房細動(Af).現病歴:労作時の呼吸困難感と心窩部痛が出現し,当院を受診した.心臓カテーテル検査にて右回旋枝の完全閉塞を認め,同日,経皮的冠動脈インターベーションを施行した.うっ血性心不全(LVEF40%)を続発し,利尿剤と強心剤による治療が開始となった.入院前:ADL自立.妻と二人暮らし.近隣に娘在住.運動習慣:散歩8000歩/日.趣味:麻雀,グランドゴルフ.デマンド:趣味再開.
【入院期】目標:家族監視下で疾病管理を行い,心不全増悪無くADLが遂行できる.評価:●SPPB:11点●MMSE:27点●FAB:11点●6分間歩行試験(6MWT):310m,1.8METs.介入:心不全手帳を用いて,体重,血圧,自覚症状の記録と疾病管理教育を開始した.能動的な記載は可能であったが内容の解釈は困難であった.ADLでは,工程数の多い入浴で指導内容が不定着であった.そこで,アクションプランを作成し,症状出現時の対応とADLの方法について本人,娘へ指導した.40病日目に自宅退院となり,外来リハビリを継続した.
【外来期】目標:麻雀を経て,グランドゴルフを再開する.評価(開始時/最終時):●SPPB:11/12点●作業機能障害の種類と評価(CAOD):Ⅰ12/4点,Ⅱ14/6点,Ⅲ12/3点,Ⅳ13/6点●6MWT:360m,2.2METs/445m,3METs.介入:本人が心不全手帳へ記載した内容(脈拍はスマートウォッチを使用)を娘がフィードバックすることで心不全増悪無く経過している.一方,CAODにて趣味未再開による作業剥奪を認めた.面談では趣味を通して友人との交流を希望しており,屋内且つ座位で可能である麻雀(1.8METs程度)から再開することとした.グランドゴルフの活動時間は2時間程度(総歩行距離2.5㎞)であり,運動耐容能改善目的に散歩(4000歩/日=約2.5㎞)を再開した.また,散歩中は,検脈による休息の習慣化を目指し,本人,娘へ指導した.設定脈拍数は,Afの為,スマートウォッチで測定した脈拍と心電図モニター上の心拍数を照合し,脈拍=目標心拍数110bpm(Karvonen法K=0.5)-30bpm=80bpmとした.休息をしながらの歩行を獲得し,運動耐容能も改善した.模擬動作では,ボール拾いにて心拍数130bpm(心室性期外収縮),Bendopneaを認めた為,ボール拾いを友人へ依頼することで,退院後65日にグランドゴルフの再開に至った.
【考察】本事例は,Af及び心室性不整脈を有した低心機能且つ,前頭葉機能低下による不十分な疾病管理から,心不全再発リスクを認めていたが,趣味再開に至った.これは,アクションプランを活用し,家族主体の疾病管理が行えたことや,模擬動作にて抽出した高負荷動作を友人に委ねる等,人的環境の配慮が有用であったと考える.また,趣味再開の目的を把握することで,低負荷で可能な趣味から再開し,段階的に負荷量を漸増することができた.精神・心理的側面を考慮した環境因子への働きかけや作業活動の負荷量評価は作業療法士の重要な役割であり,社会的孤立予防の一助になったと考える.
【事例紹介】80歳代,男性.診断名:ST上昇型下壁心筋梗塞,うっ血性心不全,心房細動(Af).現病歴:労作時の呼吸困難感と心窩部痛が出現し,当院を受診した.心臓カテーテル検査にて右回旋枝の完全閉塞を認め,同日,経皮的冠動脈インターベーションを施行した.うっ血性心不全(LVEF40%)を続発し,利尿剤と強心剤による治療が開始となった.入院前:ADL自立.妻と二人暮らし.近隣に娘在住.運動習慣:散歩8000歩/日.趣味:麻雀,グランドゴルフ.デマンド:趣味再開.
【入院期】目標:家族監視下で疾病管理を行い,心不全増悪無くADLが遂行できる.評価:●SPPB:11点●MMSE:27点●FAB:11点●6分間歩行試験(6MWT):310m,1.8METs.介入:心不全手帳を用いて,体重,血圧,自覚症状の記録と疾病管理教育を開始した.能動的な記載は可能であったが内容の解釈は困難であった.ADLでは,工程数の多い入浴で指導内容が不定着であった.そこで,アクションプランを作成し,症状出現時の対応とADLの方法について本人,娘へ指導した.40病日目に自宅退院となり,外来リハビリを継続した.
【外来期】目標:麻雀を経て,グランドゴルフを再開する.評価(開始時/最終時):●SPPB:11/12点●作業機能障害の種類と評価(CAOD):Ⅰ12/4点,Ⅱ14/6点,Ⅲ12/3点,Ⅳ13/6点●6MWT:360m,2.2METs/445m,3METs.介入:本人が心不全手帳へ記載した内容(脈拍はスマートウォッチを使用)を娘がフィードバックすることで心不全増悪無く経過している.一方,CAODにて趣味未再開による作業剥奪を認めた.面談では趣味を通して友人との交流を希望しており,屋内且つ座位で可能である麻雀(1.8METs程度)から再開することとした.グランドゴルフの活動時間は2時間程度(総歩行距離2.5㎞)であり,運動耐容能改善目的に散歩(4000歩/日=約2.5㎞)を再開した.また,散歩中は,検脈による休息の習慣化を目指し,本人,娘へ指導した.設定脈拍数は,Afの為,スマートウォッチで測定した脈拍と心電図モニター上の心拍数を照合し,脈拍=目標心拍数110bpm(Karvonen法K=0.5)-30bpm=80bpmとした.休息をしながらの歩行を獲得し,運動耐容能も改善した.模擬動作では,ボール拾いにて心拍数130bpm(心室性期外収縮),Bendopneaを認めた為,ボール拾いを友人へ依頼することで,退院後65日にグランドゴルフの再開に至った.
【考察】本事例は,Af及び心室性不整脈を有した低心機能且つ,前頭葉機能低下による不十分な疾病管理から,心不全再発リスクを認めていたが,趣味再開に至った.これは,アクションプランを活用し,家族主体の疾病管理が行えたことや,模擬動作にて抽出した高負荷動作を友人に委ねる等,人的環境の配慮が有用であったと考える.また,趣味再開の目的を把握することで,低負荷で可能な趣味から再開し,段階的に負荷量を漸増することができた.精神・心理的側面を考慮した環境因子への働きかけや作業活動の負荷量評価は作業療法士の重要な役割であり,社会的孤立予防の一助になったと考える.