[PC-1-2] COVID-19病棟の閉鎖的な環境が高齢者に与えるストレスとせん妄の関係
【はじめに】当院は2021年1月19日より重点医療機関と指定され,COVID-19診療を行っている.その病棟は感染対策のため,閉鎖的で不自由な環境となっているのが現状である.今回,そのような閉鎖的な環境が高齢者にストレスを与え,せん妄発症に繋がると考え,環境整備やコミュニケーションに配慮して介入を行った.その内容を以下に報告する.なお,本報告に関する内容は倫理的配慮のもと対象者の同意を得て実施した.
【方法】対象は2021年2月7日から2022年12月29日までの期間でCOVID-19病棟へ入院し,リハビリを実施した259例とし,平均年齢と65歳以上の割合を算出した.感染対策として患者はサージカルマスクを装着し,隔離対応.セラピストは個人防護具(以下PPE)としてガウン,手袋,N95規格マスク,フェイスシールドを装着し,1患者1日1~3単位の範囲でリハビリを実施した.環境整備では,過度な刺激とならないよう,明るさや音に配慮して環境を調整した.またティッシュ,ゴミ箱,ナースコール,テレビ,カレンダーなど患者がよく使用する物品を目と手の届く位置に設定した.コミュニケーションでは,理解力が低下している患者には理解できる言葉で繰り返し状況の説明を行った.また,患者自身に問題を解決する糸口を見つけてもらうために,その問題についてどう考えているのかを確認した後,今できる範囲を明確に提示した.
【結果】対象259例の平均年齢は81.2±12.8歳,65歳以上の割合は91.5%(237例)であった.主治医や看護師は患者に対し,適宜状況の説明を行っているが,入院直後の高齢者は混乱し,現状の理解が困難な様子が散見された.また,病前と比較してADLの低下を認めた患者は,せん妄症状が多くみられた.リハビリ介入時に環境整備を適宜実施したことで,環境整備前と比較して全体的に危険行動の減少を認めた.更に,コミュニケーションに配慮して介入を行ったことで,「トイレに行けるようになりたい.」など,明確に目標を立てることが可能となり,円滑にリハビリ介入が行えた.
【考察】粟生田氏は,せん妄について「高齢による環境不適応,病気や治療への不安や心配事を抱えている患者に,入院時からの前駆症状がみられることが少なくない.」と述べている.当院のCOVID-19患者においても高齢者が多い結果から,閉鎖的な環境への適応は難しく,せん妄発症リスクは高いといえる.環境整備として,明るさ,音に配慮したことで緊張状態から開放され,必要時に近くに無いと困る生活物品を手の届く位置に設定したことでストレスの軽減が図れたと考える.更に,テレビやカレンダーを見える位置に設定したことで,適度な刺激の入力を促し,見当識の維持に繋がったと考える.また,医療スタッフは訪室を最小限にしている上,PPE着用により表情の読み取りが困難であった.これらのストレスが,恐怖体験や治療に伴う自己コントロール感の喪失を生じさせ,せん妄発症を誘発させると考えた.コミュニケーションでの配慮として,理解できる言葉で繰り返し状況の説明を行い,患者自身が問題解決までの過程を考えていく中で,状況の理解が向上し,治療に伴う自己コントロール感の喪失を予防できたと考える.
【結語】COVID-19患者への介入を通して,このような特異的な環境においても,患者のニーズに合わせた環境整備やコミュニケーションが求められ,患者の治療に携わる医療チームで包括的に関わっていくことが重要であると考える.今後は更に高いレベルでチーム全体の連携を密に取り,患者に寄り添った医療を提供していきたい.
【方法】対象は2021年2月7日から2022年12月29日までの期間でCOVID-19病棟へ入院し,リハビリを実施した259例とし,平均年齢と65歳以上の割合を算出した.感染対策として患者はサージカルマスクを装着し,隔離対応.セラピストは個人防護具(以下PPE)としてガウン,手袋,N95規格マスク,フェイスシールドを装着し,1患者1日1~3単位の範囲でリハビリを実施した.環境整備では,過度な刺激とならないよう,明るさや音に配慮して環境を調整した.またティッシュ,ゴミ箱,ナースコール,テレビ,カレンダーなど患者がよく使用する物品を目と手の届く位置に設定した.コミュニケーションでは,理解力が低下している患者には理解できる言葉で繰り返し状況の説明を行った.また,患者自身に問題を解決する糸口を見つけてもらうために,その問題についてどう考えているのかを確認した後,今できる範囲を明確に提示した.
【結果】対象259例の平均年齢は81.2±12.8歳,65歳以上の割合は91.5%(237例)であった.主治医や看護師は患者に対し,適宜状況の説明を行っているが,入院直後の高齢者は混乱し,現状の理解が困難な様子が散見された.また,病前と比較してADLの低下を認めた患者は,せん妄症状が多くみられた.リハビリ介入時に環境整備を適宜実施したことで,環境整備前と比較して全体的に危険行動の減少を認めた.更に,コミュニケーションに配慮して介入を行ったことで,「トイレに行けるようになりたい.」など,明確に目標を立てることが可能となり,円滑にリハビリ介入が行えた.
【考察】粟生田氏は,せん妄について「高齢による環境不適応,病気や治療への不安や心配事を抱えている患者に,入院時からの前駆症状がみられることが少なくない.」と述べている.当院のCOVID-19患者においても高齢者が多い結果から,閉鎖的な環境への適応は難しく,せん妄発症リスクは高いといえる.環境整備として,明るさ,音に配慮したことで緊張状態から開放され,必要時に近くに無いと困る生活物品を手の届く位置に設定したことでストレスの軽減が図れたと考える.更に,テレビやカレンダーを見える位置に設定したことで,適度な刺激の入力を促し,見当識の維持に繋がったと考える.また,医療スタッフは訪室を最小限にしている上,PPE着用により表情の読み取りが困難であった.これらのストレスが,恐怖体験や治療に伴う自己コントロール感の喪失を生じさせ,せん妄発症を誘発させると考えた.コミュニケーションでの配慮として,理解できる言葉で繰り返し状況の説明を行い,患者自身が問題解決までの過程を考えていく中で,状況の理解が向上し,治療に伴う自己コントロール感の喪失を予防できたと考える.
【結語】COVID-19患者への介入を通して,このような特異的な環境においても,患者のニーズに合わせた環境整備やコミュニケーションが求められ,患者の治療に携わる医療チームで包括的に関わっていくことが重要であると考える.今後は更に高いレベルでチーム全体の連携を密に取り,患者に寄り添った医療を提供していきたい.