[PC-3-4] 多職種連携を通して「結婚式に参加する」希望を見出した事例
【はじめに】
非結核性抗酸菌症(NTM症)は咳や痰,労作時の呼吸困難などの症状によりADLが制限され,抑うつ症状の有病割合は8.8%と示唆されている.事例はNTM症の増悪によるADL低下と抑うつ感から作業機能障害(OD)を呈すが,多職種の心身ケアにより在宅復帰した後,娘の結婚式に参加するという希望を叶えた.
【倫理的配慮】本報告に際し事例には十分に説明を行い,書面上での同意を得た.
【事例紹介】
50歳代女性 keyperson;夫 家族;夫,娘2人 現病歴;x年にNTM症と診断されx+21年y月に左胸水貯留の増悪により救急病院で薬物療法が開始,酸素投与が必要となりADL低下と抑うつ感を認め加療目的にて同月に当院へ入院となる. Hope;娘の結婚式に参加したい.Need;ADL獲得,抑うつ感の軽減. 生活史;NTM症を患うも夫や職場の支援により勤め続けたが重症化に伴い退職する.母としての役割を担い家事全般は続けていたが,徐々に困難となり入退院を繰り返していた.
【作業療法評価】初期→最終(変化点のみ記載)
作業機能障害の種類と評価(CAOD);66→57/112点(作業不均衡12→11/28点,作業剥奪19→16/21点,作業疎外18→14/21点,作業周縁化17→16/42点)作業剥奪と作業疎外の項目が高値であり「こんな体じゃなにもできないから何しても意味がない」と悲観的な発言あり.
ADOC;初期(回答なし)最終①半年後の娘の結婚式に参加したい(実行度1/5,満足度1/5)②入浴(3/5,2/5)③食事の準備がしたい(1/5,1/5)④買い物に行きたい(1/5,1/5)⑤家族と過ごしたい(3/5,3/5)
日本語版CES-D;36→28/60点(抑うつ)修正Borg scale;5→3(労作時)FIM;91→111点
【経過・結果】8w
入院時は酸素4~5Lで排泄や更衣などの労作時SpO2低下を認め介助を要す.不眠や抑うつ感の訴え,CAODより作業剥奪と作業疎外を認めた.作業剥奪は身体的要因が強く,呼吸リハビリテーションやADL指導により酸素3Lで入浴以外のADLは自立した.だがCovid-19に罹患するのではという不安が強く出現し,多職種間で肯定的言葉と傾聴を徹底した.徐々に不安の軽減は可能となり「年越しは家族と過ごしたい」と希望が生まれた.作業疎外は意味を見出した「家族と過ごす」のため,生活動線の確認と外泊で家族と大切な時間を過ごすことで,「本当はもうダメかと思ったけど希望が持てました」と退院後の生活に対してリフレーミングが可能となった.退院後は訪問看護を利用,病状の悪化もありながらも長女の結婚式に参加することができた.
【考察】
事例は,呼吸苦やADL低下と抑うつ感による悲観的な状態によりODに陥っており,希望の喪失感があった.作業剥奪には呼吸リハビリテーションとADL指導による運動耐容能の改善と多職種によるメンタルケアを包括的に実施することで希望の表出が可能となったと考える.作業疎外には家屋訪問での実践が退院後の生活動作を明確化でき意味を見出した家族との交流時間を設けたことでQOL向上と家族共有が可能となり有用であった.Cromwellは,無力さは人の生活において大事なことを行うことの困難さとして経験され,精神的苦痛の原因となる.と述べ,Kielhofnerは,励ましは対象者の意志を支え,肯定的な考えと自信の感情を引き出すのに役立つ.と述べており,事例の身体・精神的苦痛をODの視点で分析・介入することで「結婚式に参加したい」という希望を最後まで支える一助になったと考える.
非結核性抗酸菌症(NTM症)は咳や痰,労作時の呼吸困難などの症状によりADLが制限され,抑うつ症状の有病割合は8.8%と示唆されている.事例はNTM症の増悪によるADL低下と抑うつ感から作業機能障害(OD)を呈すが,多職種の心身ケアにより在宅復帰した後,娘の結婚式に参加するという希望を叶えた.
【倫理的配慮】本報告に際し事例には十分に説明を行い,書面上での同意を得た.
【事例紹介】
50歳代女性 keyperson;夫 家族;夫,娘2人 現病歴;x年にNTM症と診断されx+21年y月に左胸水貯留の増悪により救急病院で薬物療法が開始,酸素投与が必要となりADL低下と抑うつ感を認め加療目的にて同月に当院へ入院となる. Hope;娘の結婚式に参加したい.Need;ADL獲得,抑うつ感の軽減. 生活史;NTM症を患うも夫や職場の支援により勤め続けたが重症化に伴い退職する.母としての役割を担い家事全般は続けていたが,徐々に困難となり入退院を繰り返していた.
【作業療法評価】初期→最終(変化点のみ記載)
作業機能障害の種類と評価(CAOD);66→57/112点(作業不均衡12→11/28点,作業剥奪19→16/21点,作業疎外18→14/21点,作業周縁化17→16/42点)作業剥奪と作業疎外の項目が高値であり「こんな体じゃなにもできないから何しても意味がない」と悲観的な発言あり.
ADOC;初期(回答なし)最終①半年後の娘の結婚式に参加したい(実行度1/5,満足度1/5)②入浴(3/5,2/5)③食事の準備がしたい(1/5,1/5)④買い物に行きたい(1/5,1/5)⑤家族と過ごしたい(3/5,3/5)
日本語版CES-D;36→28/60点(抑うつ)修正Borg scale;5→3(労作時)FIM;91→111点
【経過・結果】8w
入院時は酸素4~5Lで排泄や更衣などの労作時SpO2低下を認め介助を要す.不眠や抑うつ感の訴え,CAODより作業剥奪と作業疎外を認めた.作業剥奪は身体的要因が強く,呼吸リハビリテーションやADL指導により酸素3Lで入浴以外のADLは自立した.だがCovid-19に罹患するのではという不安が強く出現し,多職種間で肯定的言葉と傾聴を徹底した.徐々に不安の軽減は可能となり「年越しは家族と過ごしたい」と希望が生まれた.作業疎外は意味を見出した「家族と過ごす」のため,生活動線の確認と外泊で家族と大切な時間を過ごすことで,「本当はもうダメかと思ったけど希望が持てました」と退院後の生活に対してリフレーミングが可能となった.退院後は訪問看護を利用,病状の悪化もありながらも長女の結婚式に参加することができた.
【考察】
事例は,呼吸苦やADL低下と抑うつ感による悲観的な状態によりODに陥っており,希望の喪失感があった.作業剥奪には呼吸リハビリテーションとADL指導による運動耐容能の改善と多職種によるメンタルケアを包括的に実施することで希望の表出が可能となったと考える.作業疎外には家屋訪問での実践が退院後の生活動作を明確化でき意味を見出した家族との交流時間を設けたことでQOL向上と家族共有が可能となり有用であった.Cromwellは,無力さは人の生活において大事なことを行うことの困難さとして経験され,精神的苦痛の原因となる.と述べ,Kielhofnerは,励ましは対象者の意志を支え,肯定的な考えと自信の感情を引き出すのに役立つ.と述べており,事例の身体・精神的苦痛をODの視点で分析・介入することで「結婚式に参加したい」という希望を最後まで支える一助になったと考える.