第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

呼吸器疾患

[PC-4] ポスター:呼吸器疾患 4

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PC-4-1] 当院高齢入院患者における口腔清掃自立度と退院後の肺炎発症歴の関連性

三宅 輝美1, 玉谷 高広1, 高田 杏1, 高森 信行2 (1.社会医療法人川島会 川島病院リハビリテーション室, 2.社会医療法人川島会 川島病院循環器内科)

【序論】
 肺炎は,日本人の死因第5位であり,その92%を65歳が占めていることから,高齢者における肺炎予防は非常に重要である.また,高齢者の特徴として,嚥下筋力の低下,口腔内の不衛生などから誤嚥性肺炎をきたすことが多く,口腔清掃能力が低下すると誤嚥性肺炎が増加すると報告されている.しかし,口腔清掃自立度と肺炎発症歴の関連性は明らかにされていない.
【目的】
 当院高齢入院患者における口腔清掃自立度と退院後の肺炎発症歴の関連性を検討する.
【対象と方法】
 対象は,2020年4月1日〜2021年12月31日の間,入院リハビリテーションを行った65歳以上の高齢患者67名とした.口腔清掃自立度評価(以下,BDR指標)を用い,BDR自立群,BDR非自立群に分類し,それぞれの肺炎発症歴を後方視的に診療記録より確認した.医師による診療記録で誤嚥性肺炎もしくは誤嚥性肺炎疑いと診断された場合を肺炎ありとした.BDR指標および患者背景として年齢,性別,高血圧症,高脂血症,糖尿病,喫煙歴,既往歴(心不全,肺炎,脳血管障害),透析の有無,転帰先との比較検討を行った.統計解析にはEZR Ver 1.61 を使用し,有意水準は 5%未満とした.なお本研究は,川島病院研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
 BDR自立群は38名,BDR非自立群は29名であった.カプランマイヤー曲線による退院後の肺炎発症歴を比較した結果,BDR非自立群で発症歴が有意に高値を示した(log-rank test, p<0.05).単変量解析にて,退院後肺炎発症歴のある患者では,肺炎の既往歴(p<0.01),脳血管障害の既往歴(p<0.05)が有意に高値を示した.また,肺炎発症歴を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,肺炎の既往歴が抽出された(P<0.01).
【考察】
 退院後に肺炎を発症する危険因子として,肺炎の既往歴が関連している可能性が示唆された.BDR自立の可否において,単変量解析では有意差を認めたが,多変量解析では有意差は認められなかった.この要因として,今回対象者数が少なかったことが影響している可能性が考えられる.しかし,退院後の肺炎発症に関与する可能性も示唆されていることから,入院中に自己にて口腔清掃を行えるよう支援していく必要性があると考えられる.また,自立に至らず退院する患者に関しては,歯科衛生士による訪問口腔ケアや家族,介護サービス内での支援を検討し,地域で包括的に介入を行なっていくことが重要であると考える.