[PD-1-6] 大腿骨近位部骨折のFIM効率に与える因子の影響度について
【はじめに】
大腿骨近位部骨折の新規患者数は,2030年に29万件,2040年には32万件に達すると推計されており,受傷者数は増加していく傾向にある.受傷後の予後に関しては,1 年,5 年生存率はいずれも低値を示しており,転帰先による死亡率や QOL については自宅退院が良値であるとこれまで報告されている.今回,自宅退院に関連するとされているFIMからFIM効率を算出し,リハビリテーション(リハ)経過に与える因子の影響度を検討した.なお,本報告に関して,COI関係にある企業等はなく,当院の倫理委員会の同意を得ている.
【対象】
2020年4月から2022年12月に当院に入院し,手術(骨接合術・人工骨頭置換術)とリハビリテーションを受けた大腿骨近位部骨折患者91症例(87.1歳±8.15)を対象とした.除外基準は再手術例,他施設で手術を受けた症例,状態の変化に伴い他院へ転院した例とした.
【方法】
対象者のFIM効率に対し,年齢,性別,長谷川式認知症スケール(HDS-R),術式,術前待機期間,入院時FIM,入院前歩行,入院前介護度,入院前生活場所の影響度について重回帰分析を用いて解析した.
【結果】
HDS-R,手術待機期間に有意差を認め(p<0.05),HDS-Rのt=2.013,手術待機期間のt=‐2.148であった.手術待機期間が短く,認知機能が維持されているとFIM効率が上がる結果となった.それ以外の項目は有意差を認めなかった.
【考察】
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン改訂第2版では,「できる限りの早期の手術を推奨する(GradeB)」であり,早期に手術を行うと合併症が少なく,生存率が高く,入院期間が短いとされている.早期手術を行うと歩行能力の改善も良好とされている.本検討においても術前待機期間が短くなると,認知機能の維持や寝たきり,病識欠如等も予防でき,褥瘡や尿路感染症,DVTなどのリスクも低くなり,術後リハに影響を及ぼすと考えた.術後リハがスムーズに実施できることでFIMの改善が行え,在院日数も短縮傾向になることでFIM効率が改善したと考えた.これまでの報告において早期手術は良い影響をおよぼすため,48時間以内の手術が良いとされているが,日本整形外科学会骨粗鬆症委員会の調査によると入院から手術までの待機期間の平均日数は4.2日とされている.術前待機期間が3日以上あった要因として,手術室の確保困難50.2%,合併症24.5%,麻酔科医の確保困難24.2%,抗血小板薬22.4%,執刀医の確保困難19.2%と報告されており(萩野浩,2017),当院においても施設設備や人員などの課題を抱えている.これらの課題を解決していくことも重要であるが,作業療法の介入として待機期間が長くなる症例に対し認知機能の低下を予防するため,術前リハにおいて認知機能訓練の導入をする必要性があると考られた.
【まとめ】
FIM効率に与える因子の影響度について検討した.早期手術,認知機能が維持されていることでリハの経過が良好であり,FIM効率に影響した.術前待機期間が長くなる症例に対しては,術前リハにおいて認知機能訓練を実施する必要性があった.
大腿骨近位部骨折の新規患者数は,2030年に29万件,2040年には32万件に達すると推計されており,受傷者数は増加していく傾向にある.受傷後の予後に関しては,1 年,5 年生存率はいずれも低値を示しており,転帰先による死亡率や QOL については自宅退院が良値であるとこれまで報告されている.今回,自宅退院に関連するとされているFIMからFIM効率を算出し,リハビリテーション(リハ)経過に与える因子の影響度を検討した.なお,本報告に関して,COI関係にある企業等はなく,当院の倫理委員会の同意を得ている.
【対象】
2020年4月から2022年12月に当院に入院し,手術(骨接合術・人工骨頭置換術)とリハビリテーションを受けた大腿骨近位部骨折患者91症例(87.1歳±8.15)を対象とした.除外基準は再手術例,他施設で手術を受けた症例,状態の変化に伴い他院へ転院した例とした.
【方法】
対象者のFIM効率に対し,年齢,性別,長谷川式認知症スケール(HDS-R),術式,術前待機期間,入院時FIM,入院前歩行,入院前介護度,入院前生活場所の影響度について重回帰分析を用いて解析した.
【結果】
HDS-R,手術待機期間に有意差を認め(p<0.05),HDS-Rのt=2.013,手術待機期間のt=‐2.148であった.手術待機期間が短く,認知機能が維持されているとFIM効率が上がる結果となった.それ以外の項目は有意差を認めなかった.
【考察】
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン改訂第2版では,「できる限りの早期の手術を推奨する(GradeB)」であり,早期に手術を行うと合併症が少なく,生存率が高く,入院期間が短いとされている.早期手術を行うと歩行能力の改善も良好とされている.本検討においても術前待機期間が短くなると,認知機能の維持や寝たきり,病識欠如等も予防でき,褥瘡や尿路感染症,DVTなどのリスクも低くなり,術後リハに影響を及ぼすと考えた.術後リハがスムーズに実施できることでFIMの改善が行え,在院日数も短縮傾向になることでFIM効率が改善したと考えた.これまでの報告において早期手術は良い影響をおよぼすため,48時間以内の手術が良いとされているが,日本整形外科学会骨粗鬆症委員会の調査によると入院から手術までの待機期間の平均日数は4.2日とされている.術前待機期間が3日以上あった要因として,手術室の確保困難50.2%,合併症24.5%,麻酔科医の確保困難24.2%,抗血小板薬22.4%,執刀医の確保困難19.2%と報告されており(萩野浩,2017),当院においても施設設備や人員などの課題を抱えている.これらの課題を解決していくことも重要であるが,作業療法の介入として待機期間が長くなる症例に対し認知機能の低下を予防するため,術前リハにおいて認知機能訓練の導入をする必要性があると考られた.
【まとめ】
FIM効率に与える因子の影響度について検討した.早期手術,認知機能が維持されていることでリハの経過が良好であり,FIM効率に影響した.術前待機期間が長くなる症例に対しては,術前リハにおいて認知機能訓練を実施する必要性があった.