[PD-1-8] 手指拘縮症例に対するパラフィン療法と水治療法の効果比較
【はじめに】
パラフィン療法は,関節リウマチ,変形性関節症,手根管症候群などの手外科疾患を治療する際の物理的モダリティとして広く使用されている.パラフィン療法は手に表面的な熱を与え,痛みを和らげ,局所循環を改善し,関節炎患者の痛みと手指関節の可動域を改善することが明らかにされている(Ayling,2000,Dilek,2013 ).一方,水治療法は,古典的に用いられる治療のひとつであり,関節の硬直を減少させ,痛みを和らげ,閾値を上げることが知られている(Bardwich,1982).これら,パラフィン療法と水治療法が手指の拘縮に対する有効性を比較した臨床試験はない.本研究では,パラフィン療法と水治療法を比較検討することを目的とした.本研究におけるすべての症例には,書面及び口頭で同意を得て実施した.
【対象】
対象は,手指拘縮症例3症例とした.症例1:81歳男性,変形性関節症後右示指伸展拘縮.症例2:64歳男性,右小指PIP関節内骨折術後伸展拘縮.症例3:61歳女性,左小指基節骨骨折術後屈曲拘縮であった.
【方法】
ABデザインによるシングルケーススタディを実施した.作業療法の導入時点より開始したベースライン期(3回)では,水治療法(38度で10分間)後に,自動運動,ストレッチング(5分間)を実施した.引き続く介入期(3回)では,パラフィン療法(約55度のパラフィンワックスを3回繰り返し,固まったらビニール袋の中に入れ,タオルで覆い10分間保温)後に,自動運動,ストレッチング(5分間)を実施した.ハンドセラピィに従事している作業療法士1名(臨床経験4年)が,受傷指のMP関節,PIP関節,DIP関節の自動関節可動域を各セッション後に測定し,これを従属指標とした.
解析では,ベイズ推定を用いてベースライン期における関節可動域の状態値を推定し,これを介入期に補外することによって介入期の状態予測値を求めた.また,この状態予測値と介入期における状態値を60データにアップサンプリングした上で,ウィルコクソン符号付き順位検定を用いて比較した.
【結果】
3症例ともMP関節,PIP関節,DIP関節の全ての関節において,介入期における状態値よりも状態予測値の方が関節可動域は有意に大きかった(p<0.01).
【考察】
パラフィン療法は,強皮症に対する手指の拘縮改善の効果が報告されている(Sandqvist,2004).また,熱傷後の拘縮に対する超音波療法との比較においても有意に改善が認められている.これは,湿熱により皮膚が柔らかくなり改善が得られたためと報告されている(Riaz,2021).本研究の対象者は,関節性の手指拘縮と考えられたが,水治療法よりもパラフィン療法において関節可動域が有意に拡大した.これは,関節性の拘縮に対しても強皮症や熱傷後と同様に,水よりもパラフィンワックスの方がより湿熱が保たれているため効果が得られのではないかと考えられた.今後は,さらに長期間の経過を検討するとともに疾患や適応時期についても検討を深めていきたいと考えている.
【結語】
手指拘縮症例3例に対してパラフィン療法と水治療法の有効性をシングルケーススタディで検討したところ,3症例ともパラフィン療法の方が有意に関節可動域の改善を認めた.
パラフィン療法は,関節リウマチ,変形性関節症,手根管症候群などの手外科疾患を治療する際の物理的モダリティとして広く使用されている.パラフィン療法は手に表面的な熱を与え,痛みを和らげ,局所循環を改善し,関節炎患者の痛みと手指関節の可動域を改善することが明らかにされている(Ayling,2000,Dilek,2013 ).一方,水治療法は,古典的に用いられる治療のひとつであり,関節の硬直を減少させ,痛みを和らげ,閾値を上げることが知られている(Bardwich,1982).これら,パラフィン療法と水治療法が手指の拘縮に対する有効性を比較した臨床試験はない.本研究では,パラフィン療法と水治療法を比較検討することを目的とした.本研究におけるすべての症例には,書面及び口頭で同意を得て実施した.
【対象】
対象は,手指拘縮症例3症例とした.症例1:81歳男性,変形性関節症後右示指伸展拘縮.症例2:64歳男性,右小指PIP関節内骨折術後伸展拘縮.症例3:61歳女性,左小指基節骨骨折術後屈曲拘縮であった.
【方法】
ABデザインによるシングルケーススタディを実施した.作業療法の導入時点より開始したベースライン期(3回)では,水治療法(38度で10分間)後に,自動運動,ストレッチング(5分間)を実施した.引き続く介入期(3回)では,パラフィン療法(約55度のパラフィンワックスを3回繰り返し,固まったらビニール袋の中に入れ,タオルで覆い10分間保温)後に,自動運動,ストレッチング(5分間)を実施した.ハンドセラピィに従事している作業療法士1名(臨床経験4年)が,受傷指のMP関節,PIP関節,DIP関節の自動関節可動域を各セッション後に測定し,これを従属指標とした.
解析では,ベイズ推定を用いてベースライン期における関節可動域の状態値を推定し,これを介入期に補外することによって介入期の状態予測値を求めた.また,この状態予測値と介入期における状態値を60データにアップサンプリングした上で,ウィルコクソン符号付き順位検定を用いて比較した.
【結果】
3症例ともMP関節,PIP関節,DIP関節の全ての関節において,介入期における状態値よりも状態予測値の方が関節可動域は有意に大きかった(p<0.01).
【考察】
パラフィン療法は,強皮症に対する手指の拘縮改善の効果が報告されている(Sandqvist,2004).また,熱傷後の拘縮に対する超音波療法との比較においても有意に改善が認められている.これは,湿熱により皮膚が柔らかくなり改善が得られたためと報告されている(Riaz,2021).本研究の対象者は,関節性の手指拘縮と考えられたが,水治療法よりもパラフィン療法において関節可動域が有意に拡大した.これは,関節性の拘縮に対しても強皮症や熱傷後と同様に,水よりもパラフィンワックスの方がより湿熱が保たれているため効果が得られのではないかと考えられた.今後は,さらに長期間の経過を検討するとともに疾患や適応時期についても検討を深めていきたいと考えている.
【結語】
手指拘縮症例3例に対してパラフィン療法と水治療法の有効性をシングルケーススタディで検討したところ,3症例ともパラフィン療法の方が有意に関節可動域の改善を認めた.