[PD-10-2] 頚椎疾患術後患者における術後早期の頚肩部の痛みの性質と退院時の変化
【背景】頚椎疾患の手術後に軸性疼痛や頚肩部の過剰筋緊張・疼痛などが出現することが報告されており,患者の日常生活動作にとって大きな障害になるとされている.入院中の経過とともにそれらの痛みが軽快する症例がいる一方で,退院時まで頚肩部に痛みが残存する症例を経験する.マクギル疼痛質問票(MPQ:McGill Pain Questionnaire)は主観的な痛みを客観的に評価するために開発され,20群に分類された78個の痛みを表す形容詞がそれぞれの群に数個ずつに分けて配置されている.痛みの感覚的表現,感情的表現,評価的表現,その他の痛みに関する表現と群分けされており全体の合計点で評価するものである.本研究の目的は頚椎疾患の手術後の患者にMPQを用いて術後の頚肩部の痛みの性質を明らかにし,どのような性質の痛みが退院時に残存するのかを検討することである.
【方法】対象は,2021年12月1日から2023年1月31日までの期間に当院整形外科に入院し頚椎疾患に対して外科的手術を施行し,術後と退院時にMPQの評価が可能であった14例(男性11例,女性3例,平均年齢69.2±12.3歳)とした.疾患の内訳は頚椎症性脊髄症が10例,頚椎椎間板ヘルニアが2例,頚椎症性筋萎縮症が1例,軸椎歯突起後方偽腫瘍が1例であり,術式の内訳は椎弓形成術が10例,人工椎間板置換術が2例,前方除圧固定術が1例,後方除圧固定術が1例である.また,全例で術後はフィラデルフィアカラーを装着している.統計学的解析として術後と退院時の痛みの性質をWilcoxonの符号付き順位検定を用い比較した.統計ソフトはSPSS21.0を用い,有意水準は5%とした.なお本研究は後方視的な診療録調査であり,「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守するとともに承認を受け実施した.
【結果】術後評価は手術後平均2.5±0.9日に,退院時評価は手術後平均12.9±2.8日に実施した.
術後と退院時のMPQの評価結果の比較では感覚的指標(p=0.027),その他の痛み指標(p=0.027),合計点(p=0.023),現在の痛みの強度(p=0.013)の項目で有意に減少し,術後の頚肩部の痛みは退院時には減少する傾向にあった.またMPQの20群の項目で術後に頚肩部に出現する痛みの性質として中央値が0.5点以上あった項目は“拍動する痛み”,“刺されるような痛み”,“押しつぶされるような痛み”,“表層の痛み”,“重い鈍い痛み”,“その他の痛みの感覚①”,“評価的性質”の7つの性質であり,中でも“拍動する痛み”,“重い鈍い痛み”の項目で点数が高く痛みの強度が強い傾向にあった.そのうち術後評価と退院時評価で有意に減少した痛みの性質は表層の痛み(p=0.024)のみであった.
【考察】頚椎疾患の術後から生じる痛みの性質として表層の痛みは軽減するが,拍動する痛みや重い鈍い痛みは強度が強い傾向にあり退院時まで残存する可能性があることが明らかとなった.術後の頚肩部の痛みに対してリハビリテーションプログラムを検討する際に痛みの性質を考慮する必要があるかもしれない.
【方法】対象は,2021年12月1日から2023年1月31日までの期間に当院整形外科に入院し頚椎疾患に対して外科的手術を施行し,術後と退院時にMPQの評価が可能であった14例(男性11例,女性3例,平均年齢69.2±12.3歳)とした.疾患の内訳は頚椎症性脊髄症が10例,頚椎椎間板ヘルニアが2例,頚椎症性筋萎縮症が1例,軸椎歯突起後方偽腫瘍が1例であり,術式の内訳は椎弓形成術が10例,人工椎間板置換術が2例,前方除圧固定術が1例,後方除圧固定術が1例である.また,全例で術後はフィラデルフィアカラーを装着している.統計学的解析として術後と退院時の痛みの性質をWilcoxonの符号付き順位検定を用い比較した.統計ソフトはSPSS21.0を用い,有意水準は5%とした.なお本研究は後方視的な診療録調査であり,「ヘルシンキ宣言」及び「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守するとともに承認を受け実施した.
【結果】術後評価は手術後平均2.5±0.9日に,退院時評価は手術後平均12.9±2.8日に実施した.
術後と退院時のMPQの評価結果の比較では感覚的指標(p=0.027),その他の痛み指標(p=0.027),合計点(p=0.023),現在の痛みの強度(p=0.013)の項目で有意に減少し,術後の頚肩部の痛みは退院時には減少する傾向にあった.またMPQの20群の項目で術後に頚肩部に出現する痛みの性質として中央値が0.5点以上あった項目は“拍動する痛み”,“刺されるような痛み”,“押しつぶされるような痛み”,“表層の痛み”,“重い鈍い痛み”,“その他の痛みの感覚①”,“評価的性質”の7つの性質であり,中でも“拍動する痛み”,“重い鈍い痛み”の項目で点数が高く痛みの強度が強い傾向にあった.そのうち術後評価と退院時評価で有意に減少した痛みの性質は表層の痛み(p=0.024)のみであった.
【考察】頚椎疾患の術後から生じる痛みの性質として表層の痛みは軽減するが,拍動する痛みや重い鈍い痛みは強度が強い傾向にあり退院時まで残存する可能性があることが明らかとなった.術後の頚肩部の痛みに対してリハビリテーションプログラムを検討する際に痛みの性質を考慮する必要があるかもしれない.