第57回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-11] ポスター:運動器疾患 11

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PD-11-3] 橈骨遠位端骨折術後の男女別DASH項目の比較

後藤 進一郎, 清水 雅裕, 寺澤 享洋, 川合 智子, 金子 悠香 (刈谷豊田総合病院リハビリテーション科)

【はじめに】上肢障害評価表(Disability of the Arm, Shoulder, and Hand :以下DASH)は国際的に広く使用される患者立脚型機能評価質問表である.上肢骨折の患者に頻繁に使用される.機能障害23項目・症状7項目で構成され,1:全く困難なし~5:できなかった,の5段階で評価される.評価の合計値は100点換算(重症度スコア)され,数値の減少が状態の改善を意味する.DASHの合計値の報告は多いが,その内訳の比較は少ない.
【目的】DASHの下位項目の経時的変化を,男性(以下Ⅰ群),女性(以下Ⅱ群)で検討した.
【対象と方法】橈骨遠位端骨折術後患者96例96手を対象とした.Ⅰ群27手,Ⅱ群69手である.
運動機能は,掌屈・背屈・橈屈・尺屈・回内・回外・握力を健側比で算出した.
DASHは重症度スコア(%)と,下位項目の平均値を算出し難易度の高い上位5項目を抽出した.またⅠ群とⅡ群の上位5項目が「機能障害23項目」,「症状7項目」のどちらに該当するか調査した.
統計学的処理は,運動機能とDASH重症度スコアの初回評価,最終評価の各群の比較でMann–Whitney U testを用いた.倫理配慮は,研究で得られたデータに匿名化処理を行い個人情報を削除して集められた.
【結果】平均年齢(Ⅰ群/Ⅱ群)は50/68歳,術後からリハ開始までの期間15/15日,リハ実施期間81/80日,AO分類A6・B6・C15/A14・B18・C37だった.
掌屈(健側比%)(Ⅰ群初回評価:Ⅱ群初回評価/最終評価:最終評価)は33:27/75:72,背屈42:36/78:77,橈屈42:27/81:77,尺屈51:49/88:79,回内73:61/90:101,回外49:64/89:99,握力28:27/60:58だった.
DASHの重症度スコア(%)(Ⅰ群初回評価:Ⅱ群初回評価/最終評価:最終評価)は50:58/14:17だった.下位項目で困難とされる上位5項目(平均値)(Ⅰ群初回評価:Ⅱ群初回評価/最終評価:最終評価)は,「手に衝撃のかかるレクリェーション(以下レク)」4.1・「腕を動かすレク」3.8・「5kg以上の荷物の運搬」3.5・「こわばり感」3.5・「背中を洗う」3.5:「手に衝撃のかかるレク」4.5・「腕を動かすレク」4.2・「頭上の電球交換」4.1・「瓶のふたを開ける」3.9・「5㎏以上の荷物の運搬」3.8/「手に衝撃のかかるレク」2.3・「腕を動かすレク」2.2・「自信喪失,使いづらさ」1.9・「こわばり感」1.9・「5kgの荷物の運搬」1.8:「手に衝撃のかかるレク」2.3・「頭上の電球交換」2.1・「腕を動かすレク」2.1・「5㎏の荷物の運搬」2.0・「瓶のふたを開ける」2.0だった.DASHの上位5項目の項目数は,機能障害4,症状1:機能障害5,症状0/機能障害3,症状2:機能障害5,症状0だった.
各群の年齢には有意差を認めたが,術後からリハ開始までの期間,リハ実施期間,AO分類,運動機能(掌屈・背屈・橈屈・尺屈・回内・回外・握力の各健側比),DASH重症度スコアに有意な差はなかった.
【考察】野島(2022)らは,65歳未満と65歳以上でDASH上位5項目中3項目が共通したと述べている.本研究は男女で比較したが,初回と最終評価で3項目が共通した.男性では,DASHの「症状」に対する項目が初回評価で1項目から最終評価で2項目に増加した.男性は平均年齢が50歳と若く,すぐに仕事で手を使う必要があるが,思い通りに手の使用ができないことが「症状」の訴えを増加させる一因だと推察した.一方女性は,平均年齢が68歳で家での生活を主としている患者が多い.生活の変化が少なことから初回と最終評価でDASHの下位項目は同一だったと捉えた.下位項目は平均値から難易度の高い項目を抽出したが,これらは患者のニーズと合致するとは限らない.今後は患者が重要とする項目を聴取し,時期別に必要とされる項目を検討したい.