[PD-11-7] 橈骨遠位端骨折の対象者の選定方法と作業療法内容の傾向
【はじめに】
近年,橈骨遠位端骨折は作業療法を処方されることも多く,作業療法士が携わることの多い疾患である.Trzeciakら(2019)は,橈骨遠位端骨折患者の作業療法効果についてシステマティックレビューを行った結果,対象者の選定が限局していることを指摘し合併性が除外されていることを述べている.橈骨遠位端骨折の合併性は,手関節変形症や複合性局所性疼痛症候群(以下,CRPS)など様々存在する.橈骨遠位端骨折術後のCRPSは35%程度発生すると報告されており,併発率について述べられていることが多いが,その作業療法について述べている論文は少ない.従って本研究の目的は,橈骨遠位端骨折の合併症も含んだ作業療法の研究報告に焦点をあて,対象者の選定傾向と介入内容の傾向を調査し,今後の課題を検討することとした.
【方法】
文献検索は,PubMed,ProQuest,MEDLINE,OT seeker,Chocrane Libraryを用いた.検索式は「"Distal Radius Fracture"[Text Word] OR "Radius Fracture"[Text Word] OR "Wrist Injuries"[Text Word] OR "Wrist Fractures"[Text Word] OR "Colles Fracture"[Text Word] OR "Smith Fracture"[Text Word]」と「”Occupational Therapy” [Text Word] and “Hand Therapy”」として検索を行った.(最終検索日:2022年3月20日).適合基準は,20歳以上の成人を対象とした,橈骨遠位端骨折の作業療法関連の前向きな介入研究や症例報告(査読付きの論文)とし,除外基準は評価の内的妥当性などを調査した論文,理学療法・言語療法を併用している論文と設定した.そして,適合論文の中から対象者の選定基準や除外基準と作業療法介入内容の抽出を行い,介入内容は作業療法プロセスモデル(以下,OTIPM)の介入相(Intervention Phase)の4つのモデルで分析した.
【結果】
適合論文は4/511編だった.対象者の選定方法は,年齢を基準とするものが1編,浮腫を基準とするものが2編だった.除外基準は,重度の神経麻痺や軟部組織損傷を挙げた論文が1編,精神疾患が1編,リンパ浮腫が1編あった.4編のうち除外基準が明確に設定されていない論文は2編だった.
開始時期は外固定時期から開始する論文1編,ギプス除去後から開始する論文1編,他は記載がなかった.作業療法の介入内容のOTIPMで使用されていたモデルは,回復モデル4編,学習モデル2編であり,モデルを複数併用使用している論文は2編(回復モデルと学習モデルの併用)だった.
【考察】
本研究の結果から,適合論文が4編であり橈骨遠位端骨折の合併性も含めた作業療法の研究が少ないことが明らかとなった.今後は合併性なども含めた作業療法の研究を行う必要があると考える.
また,作業療法の介入傾向は,OTIPMの身体機能に着目した“回復モデル”を用いることが多い結果となった.一方でNielsenら(2013)は,DRFの患者は初期評価で抽出された課題のうち,関節可動域は改善したが,COPMで抽出されたセルフケアの2割弱が1年後も残存していたと報告しており,作業の習得について長期的な介入の示唆を述べている.本研究の結果から回復モデルが多かったが,身体機能に着目した“回復モデル”のみならず,作業の習得に向けた“学習モデル”を併用するなど,介入プログラムの検討が必要であると考えられる.
近年,橈骨遠位端骨折は作業療法を処方されることも多く,作業療法士が携わることの多い疾患である.Trzeciakら(2019)は,橈骨遠位端骨折患者の作業療法効果についてシステマティックレビューを行った結果,対象者の選定が限局していることを指摘し合併性が除外されていることを述べている.橈骨遠位端骨折の合併性は,手関節変形症や複合性局所性疼痛症候群(以下,CRPS)など様々存在する.橈骨遠位端骨折術後のCRPSは35%程度発生すると報告されており,併発率について述べられていることが多いが,その作業療法について述べている論文は少ない.従って本研究の目的は,橈骨遠位端骨折の合併症も含んだ作業療法の研究報告に焦点をあて,対象者の選定傾向と介入内容の傾向を調査し,今後の課題を検討することとした.
【方法】
文献検索は,PubMed,ProQuest,MEDLINE,OT seeker,Chocrane Libraryを用いた.検索式は「"Distal Radius Fracture"[Text Word] OR "Radius Fracture"[Text Word] OR "Wrist Injuries"[Text Word] OR "Wrist Fractures"[Text Word] OR "Colles Fracture"[Text Word] OR "Smith Fracture"[Text Word]」と「”Occupational Therapy” [Text Word] and “Hand Therapy”」として検索を行った.(最終検索日:2022年3月20日).適合基準は,20歳以上の成人を対象とした,橈骨遠位端骨折の作業療法関連の前向きな介入研究や症例報告(査読付きの論文)とし,除外基準は評価の内的妥当性などを調査した論文,理学療法・言語療法を併用している論文と設定した.そして,適合論文の中から対象者の選定基準や除外基準と作業療法介入内容の抽出を行い,介入内容は作業療法プロセスモデル(以下,OTIPM)の介入相(Intervention Phase)の4つのモデルで分析した.
【結果】
適合論文は4/511編だった.対象者の選定方法は,年齢を基準とするものが1編,浮腫を基準とするものが2編だった.除外基準は,重度の神経麻痺や軟部組織損傷を挙げた論文が1編,精神疾患が1編,リンパ浮腫が1編あった.4編のうち除外基準が明確に設定されていない論文は2編だった.
開始時期は外固定時期から開始する論文1編,ギプス除去後から開始する論文1編,他は記載がなかった.作業療法の介入内容のOTIPMで使用されていたモデルは,回復モデル4編,学習モデル2編であり,モデルを複数併用使用している論文は2編(回復モデルと学習モデルの併用)だった.
【考察】
本研究の結果から,適合論文が4編であり橈骨遠位端骨折の合併性も含めた作業療法の研究が少ないことが明らかとなった.今後は合併性なども含めた作業療法の研究を行う必要があると考える.
また,作業療法の介入傾向は,OTIPMの身体機能に着目した“回復モデル”を用いることが多い結果となった.一方でNielsenら(2013)は,DRFの患者は初期評価で抽出された課題のうち,関節可動域は改善したが,COPMで抽出されたセルフケアの2割弱が1年後も残存していたと報告しており,作業の習得について長期的な介入の示唆を述べている.本研究の結果から回復モデルが多かったが,身体機能に着目した“回復モデル”のみならず,作業の習得に向けた“学習モデル”を併用するなど,介入プログラムの検討が必要であると考えられる.