[PD-2-3] 上肢外傷例に対し課題指向型訓練を併用する事でDASH,COPMの改善を認めた経験
【はじめに】近年手外科疾患に対する作業を基盤とした実践(Occupation-Based Practice:以下,OBP)が注目され,Task-Oriented Training(以下,TOT)もその1つである.本邦では上肢外傷例に対しTOTを実践した報告は少ない.今回,右手背部皮膚欠損を呈した症例に対して外来リハビリテーション(以下,外来リハ)にてTOTを実践し,機能障害は残存したがDisability of the Arm,Shoulder and hand(以下,DASH), Canadian Occupational Performance Measure(以下,COPM)にて改善を認めた為,以下に報告する.尚症例には口頭,書面にて同意を得ている.
【症例紹介】50歳代,男性.利き手は右手.病前は自宅にて独居で生活.ADL,IADL共に自立し,仕事は建築業(介入中は休職).現病歴はタイルを切断中にサンダーがはねて受傷.同日に橈骨動脈穿通枝皮弁にて皮弁術施行となる.
【初期評価】外来リハ開始時(術後23日目)時点. 外固定は終日除去.肘~手指にかけて広範囲な拘縮を認め,手指はTip Palm Distance(以下,TPD)は示指5.0cm,中指4.0cm,環指4.0cm,小指3.0cmと自他動運動共にRange of Motion(以下,ROM)の制限を認めた.対立動作は指腹,側腹つまみは全指で可能も,指尖つまみは母指-示指のみ一部可能.ピンチ力低下あり. 感覚障害は母指〜手関節橈側部に異常感覚を認め,疼痛は前腕,手関節,手指可動時にあり.右上肢の日常生活での使用状況は一部物品を把持するといった補助的に使用可能も,ペットボトルの開閉は困難であり,両下肢にて代償していた. DASHの機能障害/症状は60,COPMは「右手を使用してペットボトルを開閉する」において満足度,遂行度共に3/10であった.
【経過】外来リハの頻度は週5日.術後23〜31日:機能改善を中心に介入した時期.創部の治癒状況が不十分の為,ストレスに注意しながら介入した.肘〜手関節に対してはストレッチや持続的伸張,ROM訓練を実施し,創部の治癒状況に応じて手指の屈曲制限に対してはROMや腱滑走訓練と共に装具療法を併用した.術後32〜66日:機能改善に対する介入と併用して右上肢でのペットボトル開閉の獲得に向けてTOTを実施した時期.本症例のペットボトル開閉を阻害する問題点として肘関節伸展制限に伴うリーチ範囲の狭小化,手関節機能低下,ピンチ力低下,疼痛(手関節周囲)を挙げ,上記問題点に対し優先的に機能訓練を実施した.機能に応じて実動作訓練としてペットボトル蓋の開閉課題を開始し,難易度調整として症例の代償動作や手指の筋出力,疼痛に応じて物品の設置位置(低い位置→高い位置)や,ペットボトルの蓋の硬さ(柔く→硬く)の難易度調整を行った.
【結果】術後63〜66日時点. 肘~手指にかけてROMの拡大を認め,TPDは示指3.3cm,中指〜小指は0cmとなった.母指〜橈側部の異常感覚は継続も,疼痛軽減あり.右上肢の日常生活への参加拡大を認め,右上肢でのペットボトルの開閉も可能となった. DASHは機能障害/症状は30.8で,COPMは満足度,遂行度共に6/10へと共に改善し,術後69日より復職の予定となった.
【考察】今回手背部皮膚欠損例に対し,機能訓練と併用してTOTを併用し,機能障害は残存も,DASH,COPMの改善を認め,手背部外傷例に対するTOTの有効性が示唆された.外傷例では複数の関節にわたり拘縮が残存する可能性が高く,外来リハでは限られた介入時間で機能改善が求められてくる.今回,課題指向型に介入する事で,作業を遂行する上での問題点が明確となり優先順位を付け,より効率的に機能訓練へ介入が可能となった事が効率的に活動,参加レベルでの指標において改善が図れたのではないかと考える.
【症例紹介】50歳代,男性.利き手は右手.病前は自宅にて独居で生活.ADL,IADL共に自立し,仕事は建築業(介入中は休職).現病歴はタイルを切断中にサンダーがはねて受傷.同日に橈骨動脈穿通枝皮弁にて皮弁術施行となる.
【初期評価】外来リハ開始時(術後23日目)時点. 外固定は終日除去.肘~手指にかけて広範囲な拘縮を認め,手指はTip Palm Distance(以下,TPD)は示指5.0cm,中指4.0cm,環指4.0cm,小指3.0cmと自他動運動共にRange of Motion(以下,ROM)の制限を認めた.対立動作は指腹,側腹つまみは全指で可能も,指尖つまみは母指-示指のみ一部可能.ピンチ力低下あり. 感覚障害は母指〜手関節橈側部に異常感覚を認め,疼痛は前腕,手関節,手指可動時にあり.右上肢の日常生活での使用状況は一部物品を把持するといった補助的に使用可能も,ペットボトルの開閉は困難であり,両下肢にて代償していた. DASHの機能障害/症状は60,COPMは「右手を使用してペットボトルを開閉する」において満足度,遂行度共に3/10であった.
【経過】外来リハの頻度は週5日.術後23〜31日:機能改善を中心に介入した時期.創部の治癒状況が不十分の為,ストレスに注意しながら介入した.肘〜手関節に対してはストレッチや持続的伸張,ROM訓練を実施し,創部の治癒状況に応じて手指の屈曲制限に対してはROMや腱滑走訓練と共に装具療法を併用した.術後32〜66日:機能改善に対する介入と併用して右上肢でのペットボトル開閉の獲得に向けてTOTを実施した時期.本症例のペットボトル開閉を阻害する問題点として肘関節伸展制限に伴うリーチ範囲の狭小化,手関節機能低下,ピンチ力低下,疼痛(手関節周囲)を挙げ,上記問題点に対し優先的に機能訓練を実施した.機能に応じて実動作訓練としてペットボトル蓋の開閉課題を開始し,難易度調整として症例の代償動作や手指の筋出力,疼痛に応じて物品の設置位置(低い位置→高い位置)や,ペットボトルの蓋の硬さ(柔く→硬く)の難易度調整を行った.
【結果】術後63〜66日時点. 肘~手指にかけてROMの拡大を認め,TPDは示指3.3cm,中指〜小指は0cmとなった.母指〜橈側部の異常感覚は継続も,疼痛軽減あり.右上肢の日常生活への参加拡大を認め,右上肢でのペットボトルの開閉も可能となった. DASHは機能障害/症状は30.8で,COPMは満足度,遂行度共に6/10へと共に改善し,術後69日より復職の予定となった.
【考察】今回手背部皮膚欠損例に対し,機能訓練と併用してTOTを併用し,機能障害は残存も,DASH,COPMの改善を認め,手背部外傷例に対するTOTの有効性が示唆された.外傷例では複数の関節にわたり拘縮が残存する可能性が高く,外来リハでは限られた介入時間で機能改善が求められてくる.今回,課題指向型に介入する事で,作業を遂行する上での問題点が明確となり優先順位を付け,より効率的に機能訓練へ介入が可能となった事が効率的に活動,参加レベルでの指標において改善が図れたのではないかと考える.