[PD-2-7] 複合組織損傷患者へのIADL,仕事,趣味再開に向けた作業療法の一例
【はじめに】
複合組織損傷は骨,筋腱,皮膚,血管,神経など2つ以上の組織の同時損傷であり,ハンドセラピィでは,修復軟部組織の再断裂や骨折部の転位に留意しながら関節拘縮の発生を予防し,ROM訓練や装具療法等を進める必要がある.今回,複合組織損傷により,IADL,仕事,趣味が行えなくなった症例に作業療法を行い,装具と自助具を併用し,獲得できたため,以下に報告する.なお本発表に際して,本人より同意を得ている.
【症例紹介】
A氏,30代男性,右利き,診断名は右手複合組織損傷(示指中節骨骨折,中指,環指基節骨開放骨折,手根骨脱臼と骨折,示指~小指伸筋腱断裂,正中神経損傷,前腕コンパートメント症候群).現病歴はX年Y月Z日に製袋機で作業中,ローラーに巻き込まれ,右前腕部を受傷.受傷翌日に緊急手術施行(手指骨折に対する観血的整復固定術,手根管開放術,屈筋群筋膜切離術,手根骨脱臼整復固定術).術後翌日より作業療法開始.主訴は右手の痺れ,デマンドは独居であり,早くIADL,仕事,趣味が行えることであった.
【作業療法評価と方針】
炎症は右前腕〜手指の熱感,浮腫,腫脹が著明,痺れはVAS示指5mm,中指30mmであった.ROMは示指DIP屈曲60°,中指DIP屈曲60°,小指MP屈曲80°,PIP屈曲60°,DIP屈曲70°,DASHはDisability/Symptom:87.5,Sports/music:100,Work:87.5,HAND20:80.5であった.方針として,修復軟部組織の再断裂や骨折部の転位を生じないようにROM訓練や装具療法を行っていくこととした.
【経過】
術後翌日より手指ROM訓練開始.受傷7日後に手指骨折に対する観血的整復固定術,手関節創外固定術を施行された.受傷2週間後に手根骨脱臼骨折に対する観血的整復固定術,皮膚欠損に対する分層植皮術.受傷1ヶ月後に創外固定除去と伸筋腱移行術施行,受傷6ヶ月後に伸筋腱癒着剥離術,受傷10ヶ月半後に右中指偽関節手術,腸骨移植術を施行.その後,骨癒合の状態に合わせてROM訓練や筋力訓練を進めた.
【結果】
受傷1年11か月後の最終評価でROM制限を認めたのは中指PIP屈曲60°,%TAMは示指86.9%,中指59.2%,小指96.9%.握力は右15㎏(健側比:37.5%).SWTは正中神経2.83~3.61,尺骨神経2.83~3.84,橈骨神経2.83~3.61,DASHはDisability/Symptom:17.5,Sports/music:31.3,Work:25,HAND20:26となった.投球動作の掌屈運動時にVAS70mmと手関節部痛があったため,ネオプレンゴムで作成した装具を装着することでVAS30mmと軽減した.右中指PIP関節の屈曲制限の残存に対して,指の自助具で包丁操作が安定,自転車のブレーキ,野球のバットの握り込みもグローブと併用することで可能となった.
【考察】
ROMの改善理由として,骨癒合や腱修復に沿ってROM訓練や装具療法を行ったことが考えられ,中指PIP関節屈曲制限は経過途中で偽関節となり,術後も疼痛やOAのリスクを伴い,矯正ができなかったことが要因と考えられる.しかし,この制限や手関節疼痛に対して装具と自助具を併用し,筋力や感覚機能の回復も伴うことでIADL,仕事,趣味が再開できる一助となったと考えられる.
複合組織損傷は骨,筋腱,皮膚,血管,神経など2つ以上の組織の同時損傷であり,ハンドセラピィでは,修復軟部組織の再断裂や骨折部の転位に留意しながら関節拘縮の発生を予防し,ROM訓練や装具療法等を進める必要がある.今回,複合組織損傷により,IADL,仕事,趣味が行えなくなった症例に作業療法を行い,装具と自助具を併用し,獲得できたため,以下に報告する.なお本発表に際して,本人より同意を得ている.
【症例紹介】
A氏,30代男性,右利き,診断名は右手複合組織損傷(示指中節骨骨折,中指,環指基節骨開放骨折,手根骨脱臼と骨折,示指~小指伸筋腱断裂,正中神経損傷,前腕コンパートメント症候群).現病歴はX年Y月Z日に製袋機で作業中,ローラーに巻き込まれ,右前腕部を受傷.受傷翌日に緊急手術施行(手指骨折に対する観血的整復固定術,手根管開放術,屈筋群筋膜切離術,手根骨脱臼整復固定術).術後翌日より作業療法開始.主訴は右手の痺れ,デマンドは独居であり,早くIADL,仕事,趣味が行えることであった.
【作業療法評価と方針】
炎症は右前腕〜手指の熱感,浮腫,腫脹が著明,痺れはVAS示指5mm,中指30mmであった.ROMは示指DIP屈曲60°,中指DIP屈曲60°,小指MP屈曲80°,PIP屈曲60°,DIP屈曲70°,DASHはDisability/Symptom:87.5,Sports/music:100,Work:87.5,HAND20:80.5であった.方針として,修復軟部組織の再断裂や骨折部の転位を生じないようにROM訓練や装具療法を行っていくこととした.
【経過】
術後翌日より手指ROM訓練開始.受傷7日後に手指骨折に対する観血的整復固定術,手関節創外固定術を施行された.受傷2週間後に手根骨脱臼骨折に対する観血的整復固定術,皮膚欠損に対する分層植皮術.受傷1ヶ月後に創外固定除去と伸筋腱移行術施行,受傷6ヶ月後に伸筋腱癒着剥離術,受傷10ヶ月半後に右中指偽関節手術,腸骨移植術を施行.その後,骨癒合の状態に合わせてROM訓練や筋力訓練を進めた.
【結果】
受傷1年11か月後の最終評価でROM制限を認めたのは中指PIP屈曲60°,%TAMは示指86.9%,中指59.2%,小指96.9%.握力は右15㎏(健側比:37.5%).SWTは正中神経2.83~3.61,尺骨神経2.83~3.84,橈骨神経2.83~3.61,DASHはDisability/Symptom:17.5,Sports/music:31.3,Work:25,HAND20:26となった.投球動作の掌屈運動時にVAS70mmと手関節部痛があったため,ネオプレンゴムで作成した装具を装着することでVAS30mmと軽減した.右中指PIP関節の屈曲制限の残存に対して,指の自助具で包丁操作が安定,自転車のブレーキ,野球のバットの握り込みもグローブと併用することで可能となった.
【考察】
ROMの改善理由として,骨癒合や腱修復に沿ってROM訓練や装具療法を行ったことが考えられ,中指PIP関節屈曲制限は経過途中で偽関節となり,術後も疼痛やOAのリスクを伴い,矯正ができなかったことが要因と考えられる.しかし,この制限や手関節疼痛に対して装具と自助具を併用し,筋力や感覚機能の回復も伴うことでIADL,仕事,趣味が再開できる一助となったと考えられる.