[PD-2-8] 上肢熱傷後に治療に難渋した一症例
【緒言】
熱傷後は拘縮が生じやすく,機能改善を目的にしてリハビリを進める必要がある.今回,上肢熱傷後に治療に難渋した症例を経験したため,考察をふまえて報告する.なお,症例には発表に関して了承を得ている.
【症例紹介】
80歳代女性,右利き.診断名は,前腕~手背~手指は2度熱傷.現病歴はやかんに入った熱湯を移動させている際に転倒し受傷.創部管理,手術目的にて入院となった.
【初期作業療法評価】
Lund&Browderの法則で,熱傷範囲1.5%であった.リハビリは受傷後翌日より処方されたが,バルギードレッシングにて固定されており,手指運動は困難状態であった.疼痛は指間部に生じており,NRSにて2/10であった.入院中ADLはFIMにて83点であり,非利き手を使用して生活を送っていた.
【経過① 保存療法期 受傷後~11週】
受傷後5日目よりリハビリ開始をした.受傷後7日目にバルギードレッシング終了し,手指運動開始となった.固定の影響により,MP関節伸展拘縮が危惧されたため,屈曲除去用スプリントを作製した.受傷後12日で自宅退院となり,外来リハビリ開始となったが,手指拘縮進行をみとめた.熱傷深度の進行により,部分的に3度熱傷となり手術目的で再入院となった.入院前%TAMは母指31.7%,示指39.2%,中指48.0%,環指40.8%,小指26.4%であった.入院前FIMは95点であり,何とか自立して生活を送っていた.
【経過② 術後入院期 術後~4週】
3度熱傷範囲は,右母指~手背~前腕にかけて進行していた.植皮術は下腹部より採皮し,手背に全層植皮,母指~前腕に分層植皮を行った.術後1週間のバルギードレッシング終了後より手指運動を再開.手指拘縮に対してグローブ型スプリントとウェブスペーサーを作製した.可動域訓練と同時進行で箸動作などのADL訓練も行った.退院前の%TAMは母指65.0%,示指43.2%,中指48.8%,環指44.0%,小指36.0%であった.退院前FIMは101点であり,手の使用も可能となってきた.
【経過③ 術後外来期 術後4週~5カ月】
退院後には,ヘルパー・訪問看護・訪問リハビリの利用も開始となった.リハビリ通院頻度は月2回の診察時のみとなり,訪問リハビリスタッフと連携を取り進めた.手の使用頻度は増えてきたが,スプリントの管理は難しく,ADL訓練中心のリハビリとなった.
【最終作業療法評価 術後6カ月】
最終%TAMでは,母指51.7%,示指57.6%,中指51.2%,環指56%,小指48%まで獲得した.ADLはFIMで95点であり,生活は自立しているが,料理や洗濯などのIADLに関してはヘルパーの利用が必要であった.訪問看護・訪問リハビリも継続したまま,当院の診療は終了となった.
【考察】
本症例の結果から,%TAMでは良好な改善は得られなかったが,ADLでは自立した生活を送ることができた.また,ヘルパー,訪問看護,訪問リハビリを利用することで地域との連携に繋げることができた.熱傷のリハビリは専門的な治療が必要であるが,高齢患者にとっては,可動域の良い手がuseful handではなく,制限があっても使える手がuseful handになりえるため,作業療法士としてQOLを向上させるための取り組みも重要であると考えられた.
熱傷後は拘縮が生じやすく,機能改善を目的にしてリハビリを進める必要がある.今回,上肢熱傷後に治療に難渋した症例を経験したため,考察をふまえて報告する.なお,症例には発表に関して了承を得ている.
【症例紹介】
80歳代女性,右利き.診断名は,前腕~手背~手指は2度熱傷.現病歴はやかんに入った熱湯を移動させている際に転倒し受傷.創部管理,手術目的にて入院となった.
【初期作業療法評価】
Lund&Browderの法則で,熱傷範囲1.5%であった.リハビリは受傷後翌日より処方されたが,バルギードレッシングにて固定されており,手指運動は困難状態であった.疼痛は指間部に生じており,NRSにて2/10であった.入院中ADLはFIMにて83点であり,非利き手を使用して生活を送っていた.
【経過① 保存療法期 受傷後~11週】
受傷後5日目よりリハビリ開始をした.受傷後7日目にバルギードレッシング終了し,手指運動開始となった.固定の影響により,MP関節伸展拘縮が危惧されたため,屈曲除去用スプリントを作製した.受傷後12日で自宅退院となり,外来リハビリ開始となったが,手指拘縮進行をみとめた.熱傷深度の進行により,部分的に3度熱傷となり手術目的で再入院となった.入院前%TAMは母指31.7%,示指39.2%,中指48.0%,環指40.8%,小指26.4%であった.入院前FIMは95点であり,何とか自立して生活を送っていた.
【経過② 術後入院期 術後~4週】
3度熱傷範囲は,右母指~手背~前腕にかけて進行していた.植皮術は下腹部より採皮し,手背に全層植皮,母指~前腕に分層植皮を行った.術後1週間のバルギードレッシング終了後より手指運動を再開.手指拘縮に対してグローブ型スプリントとウェブスペーサーを作製した.可動域訓練と同時進行で箸動作などのADL訓練も行った.退院前の%TAMは母指65.0%,示指43.2%,中指48.8%,環指44.0%,小指36.0%であった.退院前FIMは101点であり,手の使用も可能となってきた.
【経過③ 術後外来期 術後4週~5カ月】
退院後には,ヘルパー・訪問看護・訪問リハビリの利用も開始となった.リハビリ通院頻度は月2回の診察時のみとなり,訪問リハビリスタッフと連携を取り進めた.手の使用頻度は増えてきたが,スプリントの管理は難しく,ADL訓練中心のリハビリとなった.
【最終作業療法評価 術後6カ月】
最終%TAMでは,母指51.7%,示指57.6%,中指51.2%,環指56%,小指48%まで獲得した.ADLはFIMで95点であり,生活は自立しているが,料理や洗濯などのIADLに関してはヘルパーの利用が必要であった.訪問看護・訪問リハビリも継続したまま,当院の診療は終了となった.
【考察】
本症例の結果から,%TAMでは良好な改善は得られなかったが,ADLでは自立した生活を送ることができた.また,ヘルパー,訪問看護,訪問リハビリを利用することで地域との連携に繋げることができた.熱傷のリハビリは専門的な治療が必要であるが,高齢患者にとっては,可動域の良い手がuseful handではなく,制限があっても使える手がuseful handになりえるため,作業療法士としてQOLを向上させるための取り組みも重要であると考えられた.