第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-3] ポスター:運動器疾患 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PD-3-6] 作業を基盤とした介入により良好な足部機能の獲得とバレリーナへの復帰を果たした事例

森 優太 (医療法人社団紺整会船橋整形外科クリニック)

【序論】
今回,両足関節後方インピンジメント症候群を生じ,両側遊離体摘出術を施行された小学校高学年女児のバレリーナを担当した.ベッド上での関節可動域練習といった生体力学的アプローチではリハビリテーションに意欲や主体性を認めず機能改善に難渋していたが,作業を基盤とした介入により意欲や主体性が向上し,足関節の機能改善やバレリーナの復帰に繋がったため経過を報告する.なお,本報告に際し,書面にて事例および保護者の同意を得た.
【事例紹介】
10代前半女児.小学校高学年.既往歴は左第5中足骨骨折.
現病歴はY-4月に両側足部後方に疼痛を自覚.自己対処していたが疼痛が改善せず当院受診.Y月に両側遊離体摘出術を施行.主治医からの後療法指示は術後4週まで運動は禁止,関節可動域訓練は疼痛自制内で許可,荷重制限なしであった.術後翌日に退院し,外来リハビリテーションが開始され術後5週までは理学療法士による炎症管理,ベッド上で足部機能改善を目的とした関節可動域練習や筋力練習といった生体力学的アプローチが行われた.術後5週より作業療法が開始され担当が変更となった.
【作業療法と経過】
初回OT面接では事例より「寝ているだけじゃリハビリなんてつまらない,楽しくない」と発言があった.事例の性格は好きなことはとことんやる性格であり.興味のあることは幼少期から行っているバレエと学校の休み時間や体育で体を動かすこと.理学所見について,疼痛はNRS安静時0,動作時4,疼痛部位は術創部周囲に生じていた.またバレエで再度疼痛がでてしまうのではないかと不安があった.ROM(Rt/Lt)は足関節底屈35°/35°背屈15°/15°であった.破局的思考はPCSで4点,不安はSTAIでY-1が47点とY-2が49点.カナダ作業遂行測定(Canadian occupational measure scale:以下,COPM)においてバレエは重要度10遂行度0満足度5であった.評価結果を踏まえ事例に対しA氏にとって意味のある作業である「バレエ」の作業分析を行い,特に事例の強いデマンドである「ポワント」に着目した.ポワント動作の獲得には足関節底屈可動域および筋力,片脚立位バランス,体幹機能が必要と考え,各機能の改善に必要な要素を取り入れた介入を実施した.また担当OTはA氏の性格や特性を踏まえ「バレエ動作を教わる生徒」の役を演じ,A氏に「バレエの実動作を担当OTに教える」という先生的役割を与え協働的に介入を行った. 介入時,事例はリハビリを楽しみながら主体的に取り組む様子が見られた.
【結果】
術後14週の理学所見について,疼痛は安静時,動作時ともにNRS0であり,疼痛に対する不安は認めなかった.ROMは底屈85°/90°背屈25°/25°,破局的思考はPCS0点,不安はSTAIのY- 1が45点,Y- 2が45点,COPMにおいてバレエの重要度10遂行度10満足度10と改善を示した.
【考察】
外来整形外科作業療法において生体力学モデルを主とした介入が多く行われており作業を基盤とした介入は多く見られない.生体力学モデルを主としたアプローチだけでは,本事例の意欲や主体性が引き出せなかった一方,本事例の性格を活かして作業を基盤とした介介入を行ったところ,主体的にリハビリを行うきっかけに繋がり機能面,心理面,作業遂行及び満足度おいて改善を示した.このことから外来整形外科作業療法においても機能的側面だけに焦点を当てるだけでなく作業を基盤とした介入は有用となる可能性が示唆された.