[PD-6-3] 橈骨遠位端骨折術後患者に対するADOC-Hを用いた作業療法と身体機能訓練を併用した実践の長期的有用性の検討
【緒言】橈骨遠位端骨折(以下,DRF)術後患者は,日常生活上での手の使用困難感が遷延化する傾向にあり,術後早期から患者固有の活動・参加に焦点を当てた介入の必要性が高まってきている(Edwards et al, 2010).我々は,DRF術後患者に対して身体機能訓練と併用して日常生活における手の使用行動に焦点を当てた意思決定支援ソフト(以下,ADOC-H)を用いた作業療法を実施してきた.本研究では,本実践の長期的な有用性を検討することを目的とし,後方視的ケースコントロール研究にて比較検討を行った.
【対象】G-powerを用いてサンプルサイズを検討した結果28例と推定された.対象は,2020年8月から2021年9月までに当院においてDRFと診断され,掌側ロッキングプレート固定術を受けた患者28例とした.そのうち,術後に身体機能訓練と併用してADOC-Hを用いた作業療法を行った成人患者14例をADOC-H群,術後に身体機能訓練のみを行った成人患者14例を対照群に後方視的に割り付けた.なお,本研究は鹿児島大学の倫理審査委員会の承認(220020)を受けており,対象者には研究趣旨の説明を行い,書面にて同意を得ている.
【介入】両群とも術後翌日から愛護的な身体機能訓練を開始した.ADOC-H群は術後7日目にADOC-Hを用いて患者と療法士が協議しながら個別性の高い目標を5つほど設定した.目標設定後は,作業遂行時の実際の環境やリスク面を最大限考慮しながらリハ室でその作業の練習を行った(例:お気に入りの服を持参してもらい,リハ室で着る練習を行う).このとき作業遂行を制限する要因として身体機能制限が示唆された場合は身体機能訓練を行った.リハ室で練習した作業は,その都度自宅でも実践してもらうこととした.対照群は身体機能訓練と日常生活指導(例:骨折部に負荷がかからない手の使い方)のみ行った.両群ともに介入頻度は同等であり,術後1週間程度の入院期間中は週6日(1回60分)の入院リハを行った.自宅退院後は週2日(1回20分)の外来リハを行った.
【データ収集・解析】
術後6日目,リハ終了時(術後8週前後),術後6ヵ月目に各測定指標の評価を実施した.測定項目は,%ROM(手関節・前腕ROM健側比),NRS(運動時疼痛),PCS(破局的思考),HADS(不安抑うつ),DASH(上肢の患者立脚型機能評価),握力とした.データ分析は,反復測定二元配置分散および交互作用を認めた項目に対してBonferroni法による多重比較検定を行った(有意水準5%未満).
【結果】HADS(p <.01),DASHの機能障害/症状(p <.05),仕事(p <.01)に交互作用を認めた.多重比較検定の結果,術後6日目・リハ終了時間で両群とも全ての項目で有意な改善を認めた(p <.05).リハ終了時・術後6ヵ月目間では両群とも有意差を認めた項目はなかったが,両群とも全ての項目を維持することができていた.群間比較では,術後6日目・リハ終了時間では全ての項目においてADOC-H群の方が有意に良好であった(p <.05).リハ終了時・術後6ヵ月目間ではHADSのみADOC-H群に有意差を認めた(p <.05).
【考察】本研究の結果,ADOC-H群の方が介入前後で不安感や手の使用困難感が有意に改善し,その良好な状態がフォローアップ期間(終了後から術後6ヵ月目)でも維持できていたことから本実践の有用性が示唆された.術後早期からADOC-Hを用いて個別性の高い目標を設定し,その目標に基づいて療法士と患者が協働しながら手の使用を再開したことで,術後の不安や手の使用困難感が改善した可能性がある.さらに,日常生活で手の使用を再開していく中で習得したスキルは他の作業活動にも応用でき,リハ終了後も良好な状態を維持できたと考える.
【対象】G-powerを用いてサンプルサイズを検討した結果28例と推定された.対象は,2020年8月から2021年9月までに当院においてDRFと診断され,掌側ロッキングプレート固定術を受けた患者28例とした.そのうち,術後に身体機能訓練と併用してADOC-Hを用いた作業療法を行った成人患者14例をADOC-H群,術後に身体機能訓練のみを行った成人患者14例を対照群に後方視的に割り付けた.なお,本研究は鹿児島大学の倫理審査委員会の承認(220020)を受けており,対象者には研究趣旨の説明を行い,書面にて同意を得ている.
【介入】両群とも術後翌日から愛護的な身体機能訓練を開始した.ADOC-H群は術後7日目にADOC-Hを用いて患者と療法士が協議しながら個別性の高い目標を5つほど設定した.目標設定後は,作業遂行時の実際の環境やリスク面を最大限考慮しながらリハ室でその作業の練習を行った(例:お気に入りの服を持参してもらい,リハ室で着る練習を行う).このとき作業遂行を制限する要因として身体機能制限が示唆された場合は身体機能訓練を行った.リハ室で練習した作業は,その都度自宅でも実践してもらうこととした.対照群は身体機能訓練と日常生活指導(例:骨折部に負荷がかからない手の使い方)のみ行った.両群ともに介入頻度は同等であり,術後1週間程度の入院期間中は週6日(1回60分)の入院リハを行った.自宅退院後は週2日(1回20分)の外来リハを行った.
【データ収集・解析】
術後6日目,リハ終了時(術後8週前後),術後6ヵ月目に各測定指標の評価を実施した.測定項目は,%ROM(手関節・前腕ROM健側比),NRS(運動時疼痛),PCS(破局的思考),HADS(不安抑うつ),DASH(上肢の患者立脚型機能評価),握力とした.データ分析は,反復測定二元配置分散および交互作用を認めた項目に対してBonferroni法による多重比較検定を行った(有意水準5%未満).
【結果】HADS(p <.01),DASHの機能障害/症状(p <.05),仕事(p <.01)に交互作用を認めた.多重比較検定の結果,術後6日目・リハ終了時間で両群とも全ての項目で有意な改善を認めた(p <.05).リハ終了時・術後6ヵ月目間では両群とも有意差を認めた項目はなかったが,両群とも全ての項目を維持することができていた.群間比較では,術後6日目・リハ終了時間では全ての項目においてADOC-H群の方が有意に良好であった(p <.05).リハ終了時・術後6ヵ月目間ではHADSのみADOC-H群に有意差を認めた(p <.05).
【考察】本研究の結果,ADOC-H群の方が介入前後で不安感や手の使用困難感が有意に改善し,その良好な状態がフォローアップ期間(終了後から術後6ヵ月目)でも維持できていたことから本実践の有用性が示唆された.術後早期からADOC-Hを用いて個別性の高い目標を設定し,その目標に基づいて療法士と患者が協働しながら手の使用を再開したことで,術後の不安や手の使用困難感が改善した可能性がある.さらに,日常生活で手の使用を再開していく中で習得したスキルは他の作業活動にも応用でき,リハ終了後も良好な状態を維持できたと考える.