第57回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-7] ポスター:運動器疾患 7

Sat. Nov 11, 2023 10:10 AM - 11:10 AM ポスター会場 (展示棟)

[PD-7-5] 一体化背側アウトリガースプリントを作図し,3Dプリンターにて作成した経験

射場 靖弘1, 尾崎 まり2, 萩野 浩3 (1.鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション科, 3.鳥取大学医学部保健学科)

【はじめに】
 3Dプリンターは,3Dファイルをスライサーソフトで3Dプリンター実行ファイルに変換し,用途に応じたフィラメントを使用することで,無限の造形を可能にする機器である.既存の3Dファイルが存在しない場合は,3Dモデリングツールを利用し作成することができる.今回,3Dモデリングツールで一体化背側アウトリガースプリントの作図を行い,3Dプリンターで出力後,作成し症例に使用する経験を得たのでここに報告する.なお,症例には事前に症例報告の同意を得ている.
【症例】
症例1 70代男性.診断名は右中指・環指・小指伸筋腱断裂.右中指・環指・小指伸筋腱再建術を実施した.術後7日後に計測後,一体化背側アウトリガースプリントのモデリング,3Dプリンターで出力した(計測10分,モデリング40分,3Dプリンター出力6時間).術後8日後に一体化背側アウトリガースプリントを作成した(作成所要時間40分).術後5週目まで日中装着し,5週以降は夜間スプリントとして継続した.術後3か月後MP関節自動可動域は,術前より改善し,夜間スプリント終了となった.
症例2 70代女性.診断名は左環指・小指伸筋腱断裂.環指,小指伸筋腱再建術を実施した.術後10日後に一体化背側アウトリガースプリントを作成した(作成所要時間40分).術後1か月まで日中装着し,1か月以降は夜間スプリントとして使用した.術後3か月後,MP関節自動可動域は術前より改善し,夜間スプリント終了となった.
症例3 70代男性.診断名は橈骨神経麻痺.手関節背屈・手指伸展が困難となった.診断1週間後,一体化背側アウトリガースプリントを作成し(作成所要時間40分),日中装着とした.日中装着後1か月にて手関節背屈,手指伸展自動運動が可能となり,日中装着を終了した.
症例4 60代女性.診断名は橈骨神経麻痺.手関節背屈・手指伸展が困難となった.診断6週間後,一体化背側アウトリガースプリントを作成し(作成所要時間40分程度),夜間装着とした.診断3か月後,手関節背屈,手指伸展が重力に抗して可能となった.
【結果】
 3Dプリンターで出力した一体化背側アウトリガースプリントは4症例にいずれにも適応し,従来スプリントと同様の耐久性を確認できた.一体化背側アウトリガースプリントのモデリングには計測も含め50分を要し,40分で作成可能であった.従来スプリントは90分程度作成に時間を要するが,一度モデリングして,3Dファイルを作成すれば,3Dプリンターで出力した一体化背側アウトリガースプリントは40分で作成が可能であった.
【考察】
 従来の背側アウトリガースプリント作成には,アウトリガーの作成,取り付けなどの工程があり,時間を要していたが,3Dモデリングツールと3Dプリンターを使用することで作成時間を短縮することが可能となった.一度3Dモデリングツールで作成した3Dファイルは,スライサーソフトにて縮尺することができ,対象者に合わせた一体化背側アウトリガースプリントを出力することも可能である.