第57回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-7] ポスター:運動器疾患 7

Sat. Nov 11, 2023 10:10 AM - 11:10 AM ポスター会場 (展示棟)

[PD-7-6] 当院における手指伸筋腱断裂に対するICAM法を使用した実践経験

清永 健治1, 安食 孝士2 (1.医療法人社団友志会石橋総合病院リハビリテーション科, 2.医療法人社団友志会石橋総合病院整形外科)

【緒言】手指伸筋腱断裂術後のハンドセラピィでは,これまで石黒法やリバースクライナート法などが行われてきたが,スプリント等の使用が煩雑になりやすいという問題点があった1).これらに対し,2005年に米国で発表されたImmediate controlled active motion(以下,ICAM法)が近年普及しつつあり1),当院でも2019年から導入を開始した.今回,6例の症例に対しICAM法にて作業療法介入を行った結果良好な成績を得られたので報告する.
【対象】2019年4月から2022年12月までに当院で手指伸筋腱断裂に対し腱端々縫合術を施行した6例6指を対象とした.男性5名,女性1名,年齢は10代1名,20代1名,30代1名,50代1名,60代1名,70代1名.手術までの待機期間は平均2日であった.損傷部位は全例Zone5,損傷形態は全例鋭的損傷で,損傷指は示指2指,中指3指,環指1指であった.全員外来手術にて対応し,可及的早期に外来作業療法を開始した.発表にあたり全例に書面にて同意を得ており,当院倫理委員会の承認を得ている.
【方法】〇ICAM法について:本法はYokeパーツを用いて損傷指を伸筋腱減張位として健常指と連動させ縫合部の負荷を減少させながら自動運動を行なう方法である.術後プロトコルは越後らの報告1)に準じた.まず介入初日に日中用スプリントとして,手関節背屈20°の掌側カックアップスプリントと,損傷指MP関節を他指より15度程度伸展位にしたYokeを作成する.また夜間用スプリントとして手関節背屈20°の指尖まで覆う掌側カックアップスプリントを作製する.作業療法では自動伸展保持練習と減張位での単関節ごとの他動屈曲運動を術後4週まで行ない,術後5週から自動屈曲,伸展を開始.術後7週から損傷指の伸展不全を見ながら他動屈曲を開始する.自主練習では日中スプリント装着下で手指の自動屈曲,伸展運動を1時間に10~20回程度行う.ADLでは術後3週で日中のカックアップスプリント除去しYokeのみ,術後5週でYoke装着下で軽作業開始,自主練習時はYoke除去,術後7週でYokeを完全除去,術後8週で夜間スプリント除去,術後12週で制限なしで使用を許可する. 〇データ解析:6例の術後1,2,3か月時の%TAMと屈曲総和角度の平均値,また術後3か月時点での日本手外科学会の指伸筋腱機能評価,術後3か月時点でのHAND20スコア平均値を調査した.【結果】ICAM法による介入を行った結果,6例の%TAM平均値は術後1か月77.45%,2か月91.45%,3か月95.4%であり,屈曲総和角平均値においては術後1か月207.3°,2か月244°,3か月255°であった.日本手外科学会の指伸筋腱機能評価でも全例優を獲得し,術後3か月でのHAND20スコア平均値は3.41であった.再断裂例は無し.ADLは全例術後3か月で支障無く,仕事にも復帰できていた.
【考察】6例の指伸筋腱断裂患者に対しICAM法による介入を行った.結果術後早期より改善が得られ,最終的には%TAMは全例90%以上を獲得する事が出来,伸展角度を維持しながら屈曲角度を広げる事が出来た.伸筋腱断裂に対するハンドセラピイは従来の方法ではスプリントの煩雑さや十分な近位滑走が得られない点が指摘されていたが,ICAM法はこれらの点をカバーできており,また術後完全な固定期間なく進めていくことができる.症例のコンプライアンス,スプリント作成技術などの問題もあるが,ICAM法は術後早期からuseful hand獲得に向けた良い方法の一つではないかと強く感じた経験であった.
【参考文献】1) 越後歩ら:ICAM法(早期制限下自動運動法)を用いた手指伸筋腱縫合術後のセラピィ.日本ハンドセラピィ学会誌,第10巻,4号:131-136,2018.