[PD-9-5] 大腿骨近位部骨折術後患者における術後18日時点での排泄動作の自立度を入院時に予測する
【はじめに】
大腿骨近位部骨折術後患者における診断群分類包括評価(Diagnosis Procedure Combination, 以下,DPC)1・2の入院期間は短縮傾向であり,今後さらに短くなることが予測される.そのため,急性期病院では限られた期間で在宅復帰を目指すことが求められる.当院では大腿骨近位部骨折患者に対して術後18日間のクリニカルパス(以下,パス)を用いて,在宅復帰を目指している.しかし,在宅復帰の可否を早期に判断することができず,家族への情報提供や転院調整が遅れてパスの期間を超過する患者をしばしば経験する.在宅復帰を目指す上で排泄動作の自立獲得は重要な課題とされている.そこで入院初期に排泄動作の自立獲得を予測できる因子を明らかにすることで,家族への早期情報提供が可能となり,パス期間内での退院や転院調整が円滑にできるのではないかと考えた.
【目的】
入院時の情報から大腿骨近位部骨折患者が術後18日で排泄動作の自立が可能かを明らかにすること.【対象】
2021年8月から2022年8月に当院で大腿骨近位部骨折の手術を行った80歳以上の患者195例のうち,受傷前の排泄動作に介助を要する56例は除外した139例を対象とした.
【方法】
調査項目は先行研究を参考にして年齢,性別,BMI,骨折部位(頚部骨折または転子部骨折),術式(骨接合または人工骨頭置換術),脳血管障害の既往,受傷前住環境(自宅またはそれ以外),入院前Motor-Functional Independence Measure(以下,m-FIM),入院時Mini Mental State Examination-Japanese(以下,MMSE-J),入院前歩行能力(自立または監視から介助)とし,Spearmanの相関分析にて術後18日以内での排泄動作自立の可否との相関関係を調査した.さらに,相関関係を認めた調査項目を説明変数,術後18日以内での排泄動作自立の可否を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.排泄動作の自立は病棟トイレまたはポータブルトイレでの動作(尿便の破棄は除く)が自立し,失禁した際は自己でオムツやパッドの交換ができることとした.統計学的有意水準は5%とした.なお,本研究の調査は対象者または家族へ紙面にて同意を得ている.また,得られた個人情報を匿名化し,所属機関の倫理審査委員会の承認を受けた.
【結果】
排泄動作の自立に関連する因子は受傷前の住環境(相関係数:0.25),入院前m-FIM(0.41),入院時MMSE-J(0.47),歩行自立の有無(0.31)で相関を認めた.多重ロジスティック回帰分析では排泄動作の自立獲得48例(34.5%)の関連因子は入院前m-FIM(オッズ比:1.07),MMSE-J(1.15),歩行自立の有無(9.00)に有意差を認めた.判別的中率75.7%であった.
【考察】
先行研究においても大腿骨近位部骨折後の排泄動作の自立獲得の因子は調査されてきたが,目的変数は退院時の排泄動作の獲得とされているものが全てである.しかし,入院期間は合併症の出現による医学的な管理の延長や退院先の施設を含めた病床コントロールになどによっても変化する.今回は18日という定められた期間における排泄動作の自立を調査することで受傷前の身体機能や入院時の認知機能はアウトカムを決定づける指標としての妥当性が得られた.排泄動作の自立は高齢者の在宅復帰を援助する上で重要な日常生活動作とされており,当院でも家族が自宅退院を受け入れる条件として多くの症例で挙げられる.結果から,排泄動作が自立する時期を早期に判断することが可能となり,より早い家族指導と退院準備の開始および適切な入院期間での転帰先の調整が可能になると考える.
大腿骨近位部骨折術後患者における診断群分類包括評価(Diagnosis Procedure Combination, 以下,DPC)1・2の入院期間は短縮傾向であり,今後さらに短くなることが予測される.そのため,急性期病院では限られた期間で在宅復帰を目指すことが求められる.当院では大腿骨近位部骨折患者に対して術後18日間のクリニカルパス(以下,パス)を用いて,在宅復帰を目指している.しかし,在宅復帰の可否を早期に判断することができず,家族への情報提供や転院調整が遅れてパスの期間を超過する患者をしばしば経験する.在宅復帰を目指す上で排泄動作の自立獲得は重要な課題とされている.そこで入院初期に排泄動作の自立獲得を予測できる因子を明らかにすることで,家族への早期情報提供が可能となり,パス期間内での退院や転院調整が円滑にできるのではないかと考えた.
【目的】
入院時の情報から大腿骨近位部骨折患者が術後18日で排泄動作の自立が可能かを明らかにすること.【対象】
2021年8月から2022年8月に当院で大腿骨近位部骨折の手術を行った80歳以上の患者195例のうち,受傷前の排泄動作に介助を要する56例は除外した139例を対象とした.
【方法】
調査項目は先行研究を参考にして年齢,性別,BMI,骨折部位(頚部骨折または転子部骨折),術式(骨接合または人工骨頭置換術),脳血管障害の既往,受傷前住環境(自宅またはそれ以外),入院前Motor-Functional Independence Measure(以下,m-FIM),入院時Mini Mental State Examination-Japanese(以下,MMSE-J),入院前歩行能力(自立または監視から介助)とし,Spearmanの相関分析にて術後18日以内での排泄動作自立の可否との相関関係を調査した.さらに,相関関係を認めた調査項目を説明変数,術後18日以内での排泄動作自立の可否を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.排泄動作の自立は病棟トイレまたはポータブルトイレでの動作(尿便の破棄は除く)が自立し,失禁した際は自己でオムツやパッドの交換ができることとした.統計学的有意水準は5%とした.なお,本研究の調査は対象者または家族へ紙面にて同意を得ている.また,得られた個人情報を匿名化し,所属機関の倫理審査委員会の承認を受けた.
【結果】
排泄動作の自立に関連する因子は受傷前の住環境(相関係数:0.25),入院前m-FIM(0.41),入院時MMSE-J(0.47),歩行自立の有無(0.31)で相関を認めた.多重ロジスティック回帰分析では排泄動作の自立獲得48例(34.5%)の関連因子は入院前m-FIM(オッズ比:1.07),MMSE-J(1.15),歩行自立の有無(9.00)に有意差を認めた.判別的中率75.7%であった.
【考察】
先行研究においても大腿骨近位部骨折後の排泄動作の自立獲得の因子は調査されてきたが,目的変数は退院時の排泄動作の獲得とされているものが全てである.しかし,入院期間は合併症の出現による医学的な管理の延長や退院先の施設を含めた病床コントロールになどによっても変化する.今回は18日という定められた期間における排泄動作の自立を調査することで受傷前の身体機能や入院時の認知機能はアウトカムを決定づける指標としての妥当性が得られた.排泄動作の自立は高齢者の在宅復帰を援助する上で重要な日常生活動作とされており,当院でも家族が自宅退院を受け入れる条件として多くの症例で挙げられる.結果から,排泄動作が自立する時期を早期に判断することが可能となり,より早い家族指導と退院準備の開始および適切な入院期間での転帰先の調整が可能になると考える.