[PE-1-2] COVID-19に罹患したALS患者のコミュニケーション支援の経験.
【はじめに】 今回筋委縮性側索硬化症(ALS)療養中にCOVID-19に罹患し当院に入院加療した症例のコミュニケーション支援を経験した.COVID-19により状態が変わる一方でALSによる病状の進行も合わせて起こった症例に対してコミュニケーション手段の提案をするために何が必要となるかについて考える機会を得たので報告する.本報告について口頭での説明を行い,本人の同意を得た.
【症例紹介】 60代女性.X-2年ALS発症.X-1年NIPPV導入.食事以外は終日NIPPV着用.自宅で夫と二人暮らし.入院前ADLは全介助レベル.
【経過】 X年8月 意識レベル低下,酸素化不良で救急搬送され,COVID-19,誤嚥性肺炎疑いで当院のRICUに入院. 第38病日 COVID-19抗原陰性(RICU隔離期間中) .第48病日 一般病棟転棟(隔離解除) .第97病日 気管切開施行. 第119病日 施設へ転院.
【作業療法経過】 〔第一期〕隔離期間中
呼吸状態不安定で時々SpO2 80%台まで低下あり.意識レベルJCSⅡ-20.運動機能は安定性が低いが頸部,手指,足趾のわずかな運動は可能.コミュニケーションは頸部の動きでイエスかノーを表出していた. 作業療法ではナースコール調整を実施.ナースコールを押すことが困難であったため,センサータイプのスイッチにて活用できるよう調整した. 意識レベルの変動があるため看護師に覚醒している時間帯を確認し,介入時間を調整.また運動の随意性が低いため,センサーを使用する部位を複数マーキングし,リハビリ時間外は看護師で調整できるようにした.
〔第二期〕隔離解除・一般病棟へ転棟
意識レベルはJCSⅠ.呼吸状態は安定してきていたが呼吸困難感はあり,本人は気切施行を希望.手指の動きは徐々に改善していたが,スイッチの誤操作が増加.コミュニケーションでは看護師が作成した文字盤の使用を開始するも,実用性低くコミュニケーションの取りにくさがあった. 作業療法では気管切開後のコミュニケーション獲得とスイッチ調整目的に介入. スイッチはセンサータイプから接点式へ変更し,手指とスイッチを固定するためのスプリントを作成.コミュニケーションボードや透明文字盤の作成・練習を実施. 意思伝達装置の練習や選定,家族への説明,当院にて意思伝達装置の貸出制度の利用を開始.
〔第三期〕
痰量・呼吸困難感が増加し,コミュニケーションでは文字盤使用時にパニックになる場面が多くなる.また手指の浮腫・疼痛が出現し,ナースコールのスイッチが押せなくなった. 呼吸が切迫している状態であったため,要件を速やかに伝えられるようコミュニケーションボードの使用方法を病棟と統一し改善を図った.意思伝達装置の使用を希望されていたため,意思伝達装置の練習から選定,申請に関する手続きを実施. ナースコールはセンサータイプのスイッチへ変更・調整し疼痛なく押すことが可能になった.
【結果】ナースコールは特殊スイッチを活用し必要時に看護師を呼ぶことができており,コミュニケーションでは文字盤の使用がよりスムーズになった.また意思伝達装置を積極的に使用し訴えを表出していた.
【考察】ナースコールはALS患者にとって呼吸困難出現などの緊急時に助けを求める重要な手段である.COVID-19による呼吸機能低下や原疾患による筋力低下により運動機能,呼吸状態が変化しやすいと考えられるため,定期的な意識レベルや筋力の評価,スイッチの知識や工夫,また状態変化に対応できるよう文字盤や意思伝達装置のような様々なコミュニケーション方法が必要と考える.そしてリハビリ介入時だけでなく病棟での様子を共有し,看護師と連携しながら方法を検討することが大切である.
【症例紹介】 60代女性.X-2年ALS発症.X-1年NIPPV導入.食事以外は終日NIPPV着用.自宅で夫と二人暮らし.入院前ADLは全介助レベル.
【経過】 X年8月 意識レベル低下,酸素化不良で救急搬送され,COVID-19,誤嚥性肺炎疑いで当院のRICUに入院. 第38病日 COVID-19抗原陰性(RICU隔離期間中) .第48病日 一般病棟転棟(隔離解除) .第97病日 気管切開施行. 第119病日 施設へ転院.
【作業療法経過】 〔第一期〕隔離期間中
呼吸状態不安定で時々SpO2 80%台まで低下あり.意識レベルJCSⅡ-20.運動機能は安定性が低いが頸部,手指,足趾のわずかな運動は可能.コミュニケーションは頸部の動きでイエスかノーを表出していた. 作業療法ではナースコール調整を実施.ナースコールを押すことが困難であったため,センサータイプのスイッチにて活用できるよう調整した. 意識レベルの変動があるため看護師に覚醒している時間帯を確認し,介入時間を調整.また運動の随意性が低いため,センサーを使用する部位を複数マーキングし,リハビリ時間外は看護師で調整できるようにした.
〔第二期〕隔離解除・一般病棟へ転棟
意識レベルはJCSⅠ.呼吸状態は安定してきていたが呼吸困難感はあり,本人は気切施行を希望.手指の動きは徐々に改善していたが,スイッチの誤操作が増加.コミュニケーションでは看護師が作成した文字盤の使用を開始するも,実用性低くコミュニケーションの取りにくさがあった. 作業療法では気管切開後のコミュニケーション獲得とスイッチ調整目的に介入. スイッチはセンサータイプから接点式へ変更し,手指とスイッチを固定するためのスプリントを作成.コミュニケーションボードや透明文字盤の作成・練習を実施. 意思伝達装置の練習や選定,家族への説明,当院にて意思伝達装置の貸出制度の利用を開始.
〔第三期〕
痰量・呼吸困難感が増加し,コミュニケーションでは文字盤使用時にパニックになる場面が多くなる.また手指の浮腫・疼痛が出現し,ナースコールのスイッチが押せなくなった. 呼吸が切迫している状態であったため,要件を速やかに伝えられるようコミュニケーションボードの使用方法を病棟と統一し改善を図った.意思伝達装置の使用を希望されていたため,意思伝達装置の練習から選定,申請に関する手続きを実施. ナースコールはセンサータイプのスイッチへ変更・調整し疼痛なく押すことが可能になった.
【結果】ナースコールは特殊スイッチを活用し必要時に看護師を呼ぶことができており,コミュニケーションでは文字盤の使用がよりスムーズになった.また意思伝達装置を積極的に使用し訴えを表出していた.
【考察】ナースコールはALS患者にとって呼吸困難出現などの緊急時に助けを求める重要な手段である.COVID-19による呼吸機能低下や原疾患による筋力低下により運動機能,呼吸状態が変化しやすいと考えられるため,定期的な意識レベルや筋力の評価,スイッチの知識や工夫,また状態変化に対応できるよう文字盤や意思伝達装置のような様々なコミュニケーション方法が必要と考える.そしてリハビリ介入時だけでなく病棟での様子を共有し,看護師と連携しながら方法を検討することが大切である.