[PE-1-4] iPhone®操作獲得による筋萎縮性側索硬化症患者の社会参加支援
【はじめに】今回,筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)病状進行に伴いiPhone®の自力操作が困難となったA氏から「以前のようにiPhone®を使って家族と連絡を取りたい.」「ネットショッピングをしたい.動画を楽しみたい.」という希望が聞かれ,スイッチ操作の工夫でその実現に至った.結果,A氏の生活の質(以下QOL)が向上したためここに報告する.尚,本人と家族に同意を得,当院倫理委員会の承認を得た.
【事例紹介】A氏,50歳代男性,キーパーソンの妻と2人暮らし.遠方に娘と息子が住んでいる.X年にALSと診断.X+4年からA院と当院にて交互に治療とリハビリ目的で入退院を繰り返していた.基本動作やADLは全介助.
【作業療法評価】初回評価時,主訴は「以前のようにiPhone®を使って家族と連絡を取りたい.」「ネットショッピングをしたい.動画を楽しみたい.」であった.表出は構音障害あるが言語での会話可能.筋力はMMT上肢1~2,手指屈曲2,伸展1.握力0kg.上肢筋力低下が著明でiPhone®の自力操作が困難であったが,手指屈曲でのナースコール操作は可能であった.機能的自立度評価表62点.日中ケア時以外はベッド上背臥位でテレビを観て過ごしていた.その際,「頭が痛い.」「体勢が辛い.」と表情が険しく悲観的な言動が多かった.
【作業療法実施計画】本人の主訴を元に簡便なスイッチ入力でのiPhone®操作の導入を検討した.スイッチは,手指屈曲でのナースコール操作が可能であったことから,軽い力で押すことが出来るフィルムスイッチを選択した.また,物品を揃える際に故障や紛失リスクを考え,自力で購入出来るよう配慮した.
【介入経過と結果】《1週目:導入》当院の物品(接続アダプタ,有線接続スイッチボックス,フィルムスイッチ)と本人のiPhone®を接続して実際に操作を試した.スイッチ操作は右母指屈曲で可能.iPhone®のコントロール方法として,ポイントスキャン機能を使用したところ操作可能であった.A氏からこの方法で操作したい意向が聞かれたため練習を開始した.《2~3週目:調整~練習》iPhone®の調整はA氏が使いやすいようにiPhone®のスイッチコントロールの設定を作業療法士が行った.また,A氏と相談し,よく使うアプリケーションソフトウェアを1画面にまとめた.環境調整として,フィルムスイッチを握っていることが困難なため右手掌に固定するためのバンドも作製した.また,A氏がiPhone®を操作しやすいようにオーバーテーブルにiPhone®スタンドを固定した.《4週目:実用》調整と練習を繰り返しA氏はiPhone®の実用的な自力操作を獲得した.家族と頻繁に連絡が取れるようになり近況がリアルタイムで知れるようになった.ネットショッピングで欲しいものを購入し,離れて暮らす家族に贈り物が出来た.また,映画や音楽鑑賞が好きな時間に出来るようになった.A氏は「出来た,すごい.」と興奮し喜ばれた.さらに,悲観的な発言が減り笑顔が増えた.
【考察】今回,A氏の主訴であるiPhone®の操作方法の検討,実用を経てA氏の望む生活を再獲得出来た.症状進行に伴い心身機能が日々奪われていくA氏にとって,iPhone®の使用は生活の幅を広げQOLを上げるためのかけがいのない作業である.今まで諦めていた家族との連絡,買い物,一人暮らしの息子へのプレゼント,動画視聴,音楽鑑賞としたかった活動が自由に可能になったことは,A氏の尊厳と父親としての役割を再認識することに役立ったと考える.そのためには症状変化に伴う心身機能の評価,多岐に渡るスイッチ機器の選定とiPhone®の設定が必須であり,的確な介入の必要性が大いにあると考える.
【事例紹介】A氏,50歳代男性,キーパーソンの妻と2人暮らし.遠方に娘と息子が住んでいる.X年にALSと診断.X+4年からA院と当院にて交互に治療とリハビリ目的で入退院を繰り返していた.基本動作やADLは全介助.
【作業療法評価】初回評価時,主訴は「以前のようにiPhone®を使って家族と連絡を取りたい.」「ネットショッピングをしたい.動画を楽しみたい.」であった.表出は構音障害あるが言語での会話可能.筋力はMMT上肢1~2,手指屈曲2,伸展1.握力0kg.上肢筋力低下が著明でiPhone®の自力操作が困難であったが,手指屈曲でのナースコール操作は可能であった.機能的自立度評価表62点.日中ケア時以外はベッド上背臥位でテレビを観て過ごしていた.その際,「頭が痛い.」「体勢が辛い.」と表情が険しく悲観的な言動が多かった.
【作業療法実施計画】本人の主訴を元に簡便なスイッチ入力でのiPhone®操作の導入を検討した.スイッチは,手指屈曲でのナースコール操作が可能であったことから,軽い力で押すことが出来るフィルムスイッチを選択した.また,物品を揃える際に故障や紛失リスクを考え,自力で購入出来るよう配慮した.
【介入経過と結果】《1週目:導入》当院の物品(接続アダプタ,有線接続スイッチボックス,フィルムスイッチ)と本人のiPhone®を接続して実際に操作を試した.スイッチ操作は右母指屈曲で可能.iPhone®のコントロール方法として,ポイントスキャン機能を使用したところ操作可能であった.A氏からこの方法で操作したい意向が聞かれたため練習を開始した.《2~3週目:調整~練習》iPhone®の調整はA氏が使いやすいようにiPhone®のスイッチコントロールの設定を作業療法士が行った.また,A氏と相談し,よく使うアプリケーションソフトウェアを1画面にまとめた.環境調整として,フィルムスイッチを握っていることが困難なため右手掌に固定するためのバンドも作製した.また,A氏がiPhone®を操作しやすいようにオーバーテーブルにiPhone®スタンドを固定した.《4週目:実用》調整と練習を繰り返しA氏はiPhone®の実用的な自力操作を獲得した.家族と頻繁に連絡が取れるようになり近況がリアルタイムで知れるようになった.ネットショッピングで欲しいものを購入し,離れて暮らす家族に贈り物が出来た.また,映画や音楽鑑賞が好きな時間に出来るようになった.A氏は「出来た,すごい.」と興奮し喜ばれた.さらに,悲観的な発言が減り笑顔が増えた.
【考察】今回,A氏の主訴であるiPhone®の操作方法の検討,実用を経てA氏の望む生活を再獲得出来た.症状進行に伴い心身機能が日々奪われていくA氏にとって,iPhone®の使用は生活の幅を広げQOLを上げるためのかけがいのない作業である.今まで諦めていた家族との連絡,買い物,一人暮らしの息子へのプレゼント,動画視聴,音楽鑑賞としたかった活動が自由に可能になったことは,A氏の尊厳と父親としての役割を再認識することに役立ったと考える.そのためには症状変化に伴う心身機能の評価,多岐に渡るスイッチ機器の選定とiPhone®の設定が必須であり,的確な介入の必要性が大いにあると考える.