第57回日本作業療法学会

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ポスター

神経難病

[PE-3] ポスター:神経難病 3

Fri. Nov 10, 2023 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PE-3-1] UPDRSを用いた若年性パーキンソン病患者に対するQOL改善への介入

小野 かおり, 高見 美貴, 横山 絵里子 (地方独立行政法人 秋田県立病院機構 秋田県立リハビリテーション・精神医療センター)

【はじめに】
パーキンソン病(以下,PD)は,運動症状と非運動症状を有する慢性進行性疾患であり,ADLはもとよりQOL低下を来す要因となる.今回,入院リハ治療を希望した若年性PD患者に作業療法評価を実施し,Movment Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(以下,MDS-UPDRS)を用いて運動症状,非運動症状とそれらに関連する本人の困りごとを聴取した.その結果,リハチーム全体の治療方針の設定や退院後の自己管理指導に役立てることができたので報告する.なお,報告に際し,本人の同意を得ている.
【症例紹介】
50歳代女性,A氏.X-5年に頚部や体幹のジストニア,小刻み歩行があったが,脳MRIで特に異常なく,非定型的なパーキンソン病が疑われた.X-4年に運動緩慢,小刻み歩行が悪化,固縮が出現し,パーキンソン病と診断された.X-3年にはwearing off現象,幻視が出現,さらにX-1年に首下がりや腰曲がりなどの姿勢異常,すくみ足や疲労,幻覚妄想が悪化した.薬物調整により幻覚は改善したが,X年に集中的なリハ治療を希望し,当院に入院となった.
【作業療法評価】
Hoehn-YahrⅢ.関節可動域制限はないが,首下がりや体幹の前傾,側弯あり.筋緊張は四肢の軽度固縮はあるが,上肢の振戦はなく動作能力に問題はなし.注意力,記憶力の問題は検査上認められず,知的に保たれていた.ADLは歩行器歩行で自立していたが,日中頻繁にオフになり,無動,すくみ足や小刻み歩行が顕著となった.MDS-UPDRSのパートⅠは21点で,A氏の主観的評価で「中等度障害」と評価した項目は,「歩行とバランス」「すくみ」であった.とくに上肢の支持なしでは首下がりや体幹前傾が強まること,歩き始めや狭所ではすくみ足が顕著となりやすく,易転倒等を訴えていた.パートⅡは19点で「抑うつ気分」「睡眠」「疲労」の項目でより強く問題と捉えていた.睡眠時間が短縮し,さらにADLやIADLでは一度に複数の事に手を付けてしまい収拾が付かなくなり,精神的に疲弊していた.
【介入の基本方針】
A氏から挙げられた困りごとのうち,薬物調整と並行しながらリハ介入によって解決可能と予測された①立位姿勢の改善,②歩行能力向上,③ADLとIADL動作の効率化についての課題解決を優先的に行う.具体的には①,②については,四肢・体幹のストレッチによるリラクゼーション,立位での体幹伸展運動を実施し,さらに歩行器の使用や大股歩行の意識付けを図る.③については疲労を極力抑えて効率よくこなせるように,作業の段取りをA氏と相談することとした.
【経過と結果】
薬物調整や規則正しい生活により,開始から約2週で徐々にオフの時間が減った.1ヶ月後には首下がりや体幹前傾が軽減し,大股歩行やよく利用する動線には物を置かずにスペースを確保することが定着した.2ヶ月目には退院後の生活指導として,その日に行うことの優先順位を視覚的に確認,調整するためのリストをA氏とともに作成した.その結果,自ら疲労の程度を管理する意識付けとなった.
【考察】
今回導入したMDS-UPDRSを用いた聴取は,PDの多彩な症状を捉え,かつ症状と生活上の困りごととの関連性を確認することに役立った.また,評価結果を可視化し本人やリハチームで課題を共有しアプローチすることができた.MDS-UPDRSはリハ効果の検討に用いられることが多いが,自己管理の促進に有用であった.