[PE-3-3] パーキンソン病患者における身体活動ガイドライン遵守とヘルスリテラシーの関連
【序論】
パーキンソン病(PD)の非薬物的治療は,主に有酸素運動の要素を取り入れた身体活動(PA)の促進を支援することであり,この習慣は予後にも影響する(Tsukita et al., 2022).習慣的なPAを促進するためには,患者自身の自己管理が重要視され,適切な教育情報の提供が必要とされている(Kessler et al., 2017).しかしながら自己管理のもと,最適なPA基準を満たすためには,患者自身の健康情報に対するアクセスや理解,評価,活用といったヘルスリテラシー(HL)のプロセスにおけるどの能力が重要視されるべきかについて,個別のHLドメイン指標を用いた検討が必要である.
【目的】
PD患者のPAレベルとHL各ドメインとの横断的な関連を明らかにすることである.
【方法】
本研究のデータは,本講座が運営するPD患者専用のウェブプラットフォーム内からオンライン調査にて収集した.MDS診断基準よってPDと診断された 20歳以上の参加者を対象に,2022年2月から12月までの期間に入会登録した方を調査として実施され,141名が回答した.そのうち,主要データに欠損値のない114名(年齢65.9±11.6歳,女性59.6%)を分析対象とした.PAはInternational Physical Activity Questionnaire(IPAQ)で評価し,“中等度のPAを週150分以上and/or高強度PAを週75分以上”に満たない対象を“low-PA”と定義した(Bull et al., 2020).ヘルスリテラシーは,Functional, Communicative, and Critical Health Literacy(FCCHL)スケールで評価した(Ishikawa et al., 2008).この指標から機能的HL,伝達的HL,批判的HLに該当する質問項目の平均点を尺度得点とし,1(全くなかった)から4(よくあった)までの4件法で回答された.統計学的解析は,まずPAをlow-PA群とPA基準を満たしている(high-PA)群の2値に分類した人口統計学的特性を評価するために,両群間の比較をカイ二乗検定とt検定を用いて行なった.その後,PAの2値を従属変数とし,各HL下位項目をそれぞれ独立変数としたロジスティック回帰分析を行なった.共変量は,年齢,性別,PD罹患期間,教育歴とした.統計解析は,SPSS ver.27.0を用い,有意水準は5%とした.本研究は,福岡大学医学部倫理審査委員会(U21-10-005)の承認を得て実施した.
【結果】
対象の人口統計学的特性について,low-PA群(60名)はhigh-PA群(54名)と比して,教育歴が有意に低かった(p=0.045).ロジスティック回帰分析では,批判的HLが共変量なしのモデル(オッズ比 = 2.12; 95%信頼区間 = 1.06-4.22; p = 0.03),共変量調整後のモデル(オッズ比 = 2.46; 95%信頼区間 = 1.16-5.19; p = 0.02)ともにPAレベルとの関連を示した.
【結論】
本研究におけるPD患者のPAは,ガイドライン推奨基準の遵守率は半数にも満たなかった.HLにおいては,主に“知り得た情報を自身に適合できるか”といった側面を捉える批判的HLがPAガイドラインの遵守と関連することが明らかとなった.研究の限界として,オンライン調査であり,教育プラットフォーム登録者といった集団特性であること,HLが人種間で差異(Nakayama et al., 2015)があることが実証されているため,選択バイアスを含めた慎重な解釈が必要である.
パーキンソン病(PD)の非薬物的治療は,主に有酸素運動の要素を取り入れた身体活動(PA)の促進を支援することであり,この習慣は予後にも影響する(Tsukita et al., 2022).習慣的なPAを促進するためには,患者自身の自己管理が重要視され,適切な教育情報の提供が必要とされている(Kessler et al., 2017).しかしながら自己管理のもと,最適なPA基準を満たすためには,患者自身の健康情報に対するアクセスや理解,評価,活用といったヘルスリテラシー(HL)のプロセスにおけるどの能力が重要視されるべきかについて,個別のHLドメイン指標を用いた検討が必要である.
【目的】
PD患者のPAレベルとHL各ドメインとの横断的な関連を明らかにすることである.
【方法】
本研究のデータは,本講座が運営するPD患者専用のウェブプラットフォーム内からオンライン調査にて収集した.MDS診断基準よってPDと診断された 20歳以上の参加者を対象に,2022年2月から12月までの期間に入会登録した方を調査として実施され,141名が回答した.そのうち,主要データに欠損値のない114名(年齢65.9±11.6歳,女性59.6%)を分析対象とした.PAはInternational Physical Activity Questionnaire(IPAQ)で評価し,“中等度のPAを週150分以上and/or高強度PAを週75分以上”に満たない対象を“low-PA”と定義した(Bull et al., 2020).ヘルスリテラシーは,Functional, Communicative, and Critical Health Literacy(FCCHL)スケールで評価した(Ishikawa et al., 2008).この指標から機能的HL,伝達的HL,批判的HLに該当する質問項目の平均点を尺度得点とし,1(全くなかった)から4(よくあった)までの4件法で回答された.統計学的解析は,まずPAをlow-PA群とPA基準を満たしている(high-PA)群の2値に分類した人口統計学的特性を評価するために,両群間の比較をカイ二乗検定とt検定を用いて行なった.その後,PAの2値を従属変数とし,各HL下位項目をそれぞれ独立変数としたロジスティック回帰分析を行なった.共変量は,年齢,性別,PD罹患期間,教育歴とした.統計解析は,SPSS ver.27.0を用い,有意水準は5%とした.本研究は,福岡大学医学部倫理審査委員会(U21-10-005)の承認を得て実施した.
【結果】
対象の人口統計学的特性について,low-PA群(60名)はhigh-PA群(54名)と比して,教育歴が有意に低かった(p=0.045).ロジスティック回帰分析では,批判的HLが共変量なしのモデル(オッズ比 = 2.12; 95%信頼区間 = 1.06-4.22; p = 0.03),共変量調整後のモデル(オッズ比 = 2.46; 95%信頼区間 = 1.16-5.19; p = 0.02)ともにPAレベルとの関連を示した.
【結論】
本研究におけるPD患者のPAは,ガイドライン推奨基準の遵守率は半数にも満たなかった.HLにおいては,主に“知り得た情報を自身に適合できるか”といった側面を捉える批判的HLがPAガイドラインの遵守と関連することが明らかとなった.研究の限界として,オンライン調査であり,教育プラットフォーム登録者といった集団特性であること,HLが人種間で差異(Nakayama et al., 2015)があることが実証されているため,選択バイアスを含めた慎重な解釈が必要である.