第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

神経難病

[PE-3] ポスター:神経難病 3

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PE-3-4] パーキンソン病の運動症状と抑うつ症状に対する反復経頭蓋磁気刺激治療とリハビリテーションの併用効果

田中 大地1, 今辻 和也1, 松﨑 英章1, 髙橋 真紀2 (1.医療法人相生会 福岡みらい病院リハビリテーション科, 2.医療法人相生会 福岡みらい病院リハビリテーション部)

【はじめに,目的】
当院では,パーキンソン病(Parkinson‘s disease:PD)の非侵襲的治療として反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation:rTMS)治療を行っている.補足運動野(supplementary motor area:SMA)に対する低頻度のrTMS治療はPDの運動症状の改善に有効であり,リハビリテーション(リハ)を組み合わせることで相加効果が期待される.一方,PDの抑うつ症状に対してもrTMS治療の改善効果がメタ解析によって示されており,運動症状と合わせて抑うつ症状についても改善が得られる可能性がある.
今回,右SMAに対するrTMSとリハの併用による運動症状と抑うつ症状の各改善効果を検討した.
【方法】
年齢は18歳~90歳で,PD発症から6ヶ月以上が経過しHoehn-Yahr重症度分類(H-Y)がII~IV度の患者を対象とした.また磁気刺激法の安全性に関するガイドラインの禁忌事項に該当しないことを条件とした.
右SMAに対して,1Hzの低頻度rTMSを1セッション20分間施行し,その直後に理学療法を1時間,その他の時間で作業療法を1時間行った.これを入院中に週5日,計15セッション実施した.運動症状の評価はUnified Parkinson's Disease Rating Scale PartⅢ(UPDRSⅢ),抑うつ症状の評価は日本語版Beck Depression Inventory Second Edition(BDI-Ⅱ)を治療前後に実施した.本研究の対象者におけるBDI-Ⅱの中央値(15/16点)を基準に中等度抑うつ群,軽度抑うつ群で分類した.なお,治療期間中は服薬内容の変更は行っていない.治療前後の比較はWilcoxon符号付順位和検定を用いて分析した.有意水準は5%とした.
【同意と説明】
対象者には治療と研究内容について説明し同意を得た.本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.
【結果】
対象者はPD患者15名で中等度抑うつ群が8名,軽度抑うつ群が7名であった.UPDRSIIIは中等度抑うつ群が27.1±12.1点→18.6±13.1点(8.5点改善),軽度抑うつ群が31.9±5.5点→21.3±6.2点(10.6点改善),BDI-Ⅱは中等度抑うつ群が20.8±4.2点→13.8±8.4点(7.0点改善),軽度抑うつ群が10.3±1.4点→6.0±3.9点(4.3点改善)であった.両群ともに運動症状,抑うつ症状に有意な改善を認めた.
【考察】
今回,右SMA に対する低頻度rTMS治療とリハを併用した結果,両群ともに運動症状と抑うつ症状に改善が得られた.運動症状は軽度抑うつ群,抑うつ症状は中等度抑うつ群で改善が得られやすい可能性が示された.先行研究において,抑うつ症状には右背外側前頭前野に対する低頻度rTMS治療が有効であると報告されているが,rTMS治療は刺激部位への直接作用に加えて神経連絡を介した遠隔効果も期待されていることから,右SMAに対する刺激においても抑うつ症状の改善に有効である可能性が示唆された.