[PE-4-1] パーキンソン病患者の日常生活動作の困難と作業療法介入方略
【背景・目的】
近年,パーキンソン病患者(PD)への作業療法介入は大きく転換点を迎えている.これまでの基本動作重視の介入視点に,PDの認知運動特性に立脚した戦略を加えた介入が提唱されてきている.本邦の作業療法介入の現状とこの新たな戦略がどの様に用いられているかを知ることは,対象者の日常生活動作能力の向上に資するために作業療法の質的転換を図るうえで重要である.
今回の報告の目的はアンケートとインタビュー調査によって作業療法士がPDの症状・障害へ行う介入の方略を予備的に示すことである.
【方法】アンケート調査,対象者はこれまでにPDを担当したことがある作業療法士(16名)で,Google formにより以下の設問を行った.PDのHoehn&Yahr の重症度分類(修正版),PDの日本版modified Rankin Scale(mRS),「PDが日常生活において困難と訴える事柄」,「その困難を改善,緩和する工夫(OTが助言・提供した方法or当事者自ら行った方法)」,「その工夫が困難を改善・緩和した理由についてOTの推論・考え,気づいたことや疑問」.
次に,アンケートに回答した内容をさらに深めるために可能な者に,「運動症状と対応方法」,「非運動症状と対応方法」,「具体的対応を選択するに至ったOTの臨床推論(試行錯誤の過程)」に関して個別にインタビューを作業療法士5名で行った.本研究は大阪府立大学研究倫理審査委員会の承認を受け実施した.
【結果】
「PDが日常生活において困難と訴える事柄」のエピソード数は,日常生活動作:10,基本動作:20,手段的日常生活関連活動:7であった.「その困難を改善,緩和する工夫(OTが助言・提供した方法or当事者自ら行った方法)」のエピソード数は,動作指導:18,自助具:5,環境調整:10,介助法:2であった.「その工夫が困難を改善・緩和した理由についてOTの推論・考え,気づいたことや疑問」のエピソード数は自助具導入:6,環境調整:7,介助法:1,認知手法:9,生活リズム:1,動作指導:3であった.
そのほかに,夜間での幻覚があり不眠のエピソードがあったが作業療法士の推論は特になかった.
次にインタビュー調査のエピソード数は,運動症状にかかわるもの38,その対応方法17,非運動症状にかかわるもの31,その対応法11,OTRの推論にかかわるもの23,認知運動特性にかかわるもの8であった.
【考察】
作業療法士が着目する動作は基本動作,日常生活動作,手段的日常生活活動であった.動作改善にかかわるエピソードでは,動作指導,環境調整,自助具提供,介助法指導の順であった.「動作改善にかかわる手立て」は認知的手法よりもそれ以外の環境調整,自助具導入,動作指導,介助法,生活リズム等の従前の対応が多かった.
インタビュー調査から作業療法介入は,運動症状が非運動症状よりもエピソードが多い.非運動症状では,運動症状と比較して対応方法のエピソードが極端に少ない.「具体的対応を選択するに至ったOTの臨床推論」は,系統立てた推論に基づいたエピソードは少なかったことが分かった.
今回の分析はすべての重症度を含めて分析したので,今後は重症度別の作業療法のかかわりについて継続して検討していきたい.
近年,パーキンソン病患者(PD)への作業療法介入は大きく転換点を迎えている.これまでの基本動作重視の介入視点に,PDの認知運動特性に立脚した戦略を加えた介入が提唱されてきている.本邦の作業療法介入の現状とこの新たな戦略がどの様に用いられているかを知ることは,対象者の日常生活動作能力の向上に資するために作業療法の質的転換を図るうえで重要である.
今回の報告の目的はアンケートとインタビュー調査によって作業療法士がPDの症状・障害へ行う介入の方略を予備的に示すことである.
【方法】アンケート調査,対象者はこれまでにPDを担当したことがある作業療法士(16名)で,Google formにより以下の設問を行った.PDのHoehn&Yahr の重症度分類(修正版),PDの日本版modified Rankin Scale(mRS),「PDが日常生活において困難と訴える事柄」,「その困難を改善,緩和する工夫(OTが助言・提供した方法or当事者自ら行った方法)」,「その工夫が困難を改善・緩和した理由についてOTの推論・考え,気づいたことや疑問」.
次に,アンケートに回答した内容をさらに深めるために可能な者に,「運動症状と対応方法」,「非運動症状と対応方法」,「具体的対応を選択するに至ったOTの臨床推論(試行錯誤の過程)」に関して個別にインタビューを作業療法士5名で行った.本研究は大阪府立大学研究倫理審査委員会の承認を受け実施した.
【結果】
「PDが日常生活において困難と訴える事柄」のエピソード数は,日常生活動作:10,基本動作:20,手段的日常生活関連活動:7であった.「その困難を改善,緩和する工夫(OTが助言・提供した方法or当事者自ら行った方法)」のエピソード数は,動作指導:18,自助具:5,環境調整:10,介助法:2であった.「その工夫が困難を改善・緩和した理由についてOTの推論・考え,気づいたことや疑問」のエピソード数は自助具導入:6,環境調整:7,介助法:1,認知手法:9,生活リズム:1,動作指導:3であった.
そのほかに,夜間での幻覚があり不眠のエピソードがあったが作業療法士の推論は特になかった.
次にインタビュー調査のエピソード数は,運動症状にかかわるもの38,その対応方法17,非運動症状にかかわるもの31,その対応法11,OTRの推論にかかわるもの23,認知運動特性にかかわるもの8であった.
【考察】
作業療法士が着目する動作は基本動作,日常生活動作,手段的日常生活活動であった.動作改善にかかわるエピソードでは,動作指導,環境調整,自助具提供,介助法指導の順であった.「動作改善にかかわる手立て」は認知的手法よりもそれ以外の環境調整,自助具導入,動作指導,介助法,生活リズム等の従前の対応が多かった.
インタビュー調査から作業療法介入は,運動症状が非運動症状よりもエピソードが多い.非運動症状では,運動症状と比較して対応方法のエピソードが極端に少ない.「具体的対応を選択するに至ったOTの臨床推論」は,系統立てた推論に基づいたエピソードは少なかったことが分かった.
今回の分析はすべての重症度を含めて分析したので,今後は重症度別の作業療法のかかわりについて継続して検討していきたい.