[PE-5-1] 人工呼吸器管理後, 更なる病態の進行を認めた筋ジストロフィー患者に本人の意向に沿って目標設定が行えた症例
【はじめに】入院後に呼吸状態が悪化し, 人工呼吸器管理となった筋ジストロフィー患者に対して, 早期からコミュニケーション手段の獲得を目指し, 意味のある作業を取り入れた結果, 本人の意向, 病態に沿った目標設定が行えたため報告する. 倫理的配慮として本発表について本人に説明し同意を得た.
【症例紹介】60歳代. 男性. 発熱し体動困難となり救急要請. 誤嚥性肺炎の診断で入院. 第4病日より意識レベル低下を認め呼吸不全が進行したため挿管, 人工呼吸器管理となる. 入院前生活は, 妻と2人暮らし. ADLは車椅子移動, 食事は自助具を使用し自立. 排泄(昇降便座), 入浴は妻, ヘルパー介助.
【作業療法評価: 第6病日】ADL全介助. JCSⅡ-10. 精神状態不穏傾向. 首振り, 頷きで意思表示可能. MMT(R/L)上下肢2〜3 / 2〜3. 趣味はラジオ, 音楽鑑賞, 野球観戦と家族から聴取.
【経過】(気管切開術: 第15病日, 胃瘻造設: 第42病日)
第1期 (第6〜16病日): 不穏傾向であり本人からの希望は聴取困難で文字盤を導入した時期
頷き,首振りでの反応はみられたが, 不穏傾向であったため本人から希望の聴取困難であった. また気管切開が決定し今後本人の意向を汲み取りやすくすることを目的に, コミュニケーション手段を早期にSTと相談し文字盤を作成した. 文字盤のサイズ調整や機能練習, 反復練習を実施したことで,操作性が向上し活用可能となった. 加えて, ジェスチャーでのコミュニケーションも獲得した.
第2期 (第17〜51病日): 精神状態が安定し本人から希望を聴取でき文字盤活用に繋がった時期
文字盤を使用することで具体的な意思疎通が図りやすくなった. 精神状態は安定傾向であり, 身体機能面の向上もみられ, 本人から自発的に車椅子に移りたいとの希望を聴取. リクライニング車椅子移乗を担当PTとNsの3人介助で実施. 移乗が行えたことを喜ばれており継続した. また本人にとって意味のある活動として趣味である音楽鑑賞を選択し, タブレットを使用. ライブ視聴中は笑顔で歌われる場面もみられた. 病棟にもその旨を情報共有し, 日中にも音楽鑑賞を継続した. 車椅子座位では筆談も併用したが読み手の推測を要した. 第34病日からは段階的に日中に人工呼吸器の離脱が可能となった.
第3期 (第52〜69病日): 病態の進行がみられたが, 文字盤, 筆談を併用し再度目標設定を行った時期
徐々に全身性に筋出力低下を認め, 人工呼吸器離脱困難となる. リハビリには取り組まれ負荷量を調整しつつ介入を継続. しかし覚醒レベルに変動がみられ文字盤操作にも影響したため, 状態に合わせて適宜アシストしながら意思疎通を図った. 筆談では単語レベルで書けることもあり併用した. その後本人から新たに車椅子に座ってテレビをみたいとの希望も聴取. 今後転院の方向となった段階で転院先にて長時間余暇を楽しめるよう本人と再度目標設定を行った. 手段としては臥位にてテレビやタブレットでの視聴が行えるよう, デバイスの固定方法など環境調整を試行し転院先にも情報提供を行った.
【結果: 第69病日】ADL中等度介助〜全介助. JCSⅠ-1〜Ⅱ-10と変動あり. 文字盤等使用し意思疎通可能. 精神状態安定. MMT(R/L)上下肢2〜3/2〜3.
【考察】本症例は誤嚥性肺炎後, 更に状態悪化し人工呼吸器管理となったことで, より精神的にもストレスが強い状態であったと考えられる. そのため早期からコミュニケーション手段を確立し, 意思を伝えやすくしたこと, 本人にとって意味のある活動を提供できたことで精神状態も安定した. その結果, 人工呼吸器管理や病態の進行がみられた際にも本人の意向に沿った目標設定が行えたと考えられる.
【症例紹介】60歳代. 男性. 発熱し体動困難となり救急要請. 誤嚥性肺炎の診断で入院. 第4病日より意識レベル低下を認め呼吸不全が進行したため挿管, 人工呼吸器管理となる. 入院前生活は, 妻と2人暮らし. ADLは車椅子移動, 食事は自助具を使用し自立. 排泄(昇降便座), 入浴は妻, ヘルパー介助.
【作業療法評価: 第6病日】ADL全介助. JCSⅡ-10. 精神状態不穏傾向. 首振り, 頷きで意思表示可能. MMT(R/L)上下肢2〜3 / 2〜3. 趣味はラジオ, 音楽鑑賞, 野球観戦と家族から聴取.
【経過】(気管切開術: 第15病日, 胃瘻造設: 第42病日)
第1期 (第6〜16病日): 不穏傾向であり本人からの希望は聴取困難で文字盤を導入した時期
頷き,首振りでの反応はみられたが, 不穏傾向であったため本人から希望の聴取困難であった. また気管切開が決定し今後本人の意向を汲み取りやすくすることを目的に, コミュニケーション手段を早期にSTと相談し文字盤を作成した. 文字盤のサイズ調整や機能練習, 反復練習を実施したことで,操作性が向上し活用可能となった. 加えて, ジェスチャーでのコミュニケーションも獲得した.
第2期 (第17〜51病日): 精神状態が安定し本人から希望を聴取でき文字盤活用に繋がった時期
文字盤を使用することで具体的な意思疎通が図りやすくなった. 精神状態は安定傾向であり, 身体機能面の向上もみられ, 本人から自発的に車椅子に移りたいとの希望を聴取. リクライニング車椅子移乗を担当PTとNsの3人介助で実施. 移乗が行えたことを喜ばれており継続した. また本人にとって意味のある活動として趣味である音楽鑑賞を選択し, タブレットを使用. ライブ視聴中は笑顔で歌われる場面もみられた. 病棟にもその旨を情報共有し, 日中にも音楽鑑賞を継続した. 車椅子座位では筆談も併用したが読み手の推測を要した. 第34病日からは段階的に日中に人工呼吸器の離脱が可能となった.
第3期 (第52〜69病日): 病態の進行がみられたが, 文字盤, 筆談を併用し再度目標設定を行った時期
徐々に全身性に筋出力低下を認め, 人工呼吸器離脱困難となる. リハビリには取り組まれ負荷量を調整しつつ介入を継続. しかし覚醒レベルに変動がみられ文字盤操作にも影響したため, 状態に合わせて適宜アシストしながら意思疎通を図った. 筆談では単語レベルで書けることもあり併用した. その後本人から新たに車椅子に座ってテレビをみたいとの希望も聴取. 今後転院の方向となった段階で転院先にて長時間余暇を楽しめるよう本人と再度目標設定を行った. 手段としては臥位にてテレビやタブレットでの視聴が行えるよう, デバイスの固定方法など環境調整を試行し転院先にも情報提供を行った.
【結果: 第69病日】ADL中等度介助〜全介助. JCSⅠ-1〜Ⅱ-10と変動あり. 文字盤等使用し意思疎通可能. 精神状態安定. MMT(R/L)上下肢2〜3/2〜3.
【考察】本症例は誤嚥性肺炎後, 更に状態悪化し人工呼吸器管理となったことで, より精神的にもストレスが強い状態であったと考えられる. そのため早期からコミュニケーション手段を確立し, 意思を伝えやすくしたこと, 本人にとって意味のある活動を提供できたことで精神状態も安定した. その結果, 人工呼吸器管理や病態の進行がみられた際にも本人の意向に沿った目標設定が行えたと考えられる.