[PE-6-2] 重度嚥下障害を呈した封入体筋炎患者の摂食意欲に対する作業療法的介入
【はじめに】封入体筋炎(Sporadic Inclusion Body Myositis;sIBM)は主に50歳以上で発症する慢性進行性の筋疾患であり,左右非対称の筋力低下と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられ,歩行障害,手指つまみ困難や摂食嚥下障害などを伴う進行性の指定難病である.今回,症状が進行し,歩行困難や重度摂食嚥下障害を呈したsIBM症例の摂食意欲に対して応えた作業療法を展開した.その結果,能力の改善が得られたため,sIBMのリハ介入に関する文献的考察を加えて報告する.なお,本報告に際し,患者の同意を得た.
【症例紹介】80歳代男性.数年前より歩行障害が出現し,自身で立てなくなっていた.1年程前より嚥下障害もみられ,1ヶ月前より症状が増悪し,食事や水分が摂れなくなり,X年Y月Z日に当院救急外来を受診.脳神経内科で精査のため検査入院となり,同日リハ開始となった.病前は6人暮らしで,ベッド上で過ごすことが多く,妻の介助でトイレを使用した生活をしていたが,要支援1で介護保険などは特に利用していなかった.
【リハ経過】初期評価ではコミュニケーションの表出は構音障害,開鼻声を認めるが,発話明瞭度2.理解は軽度難聴を認めるも指示理解可能.ROMは手指にIntrinsic plus位に変形し,IP関節に伸展拘縮を認め,指尖手掌距離(tip palm distance;TPD)は4センチで物品把持困難で,握力は0キロ.MMTは肩・肘・手背屈は3,手掌屈や手指屈筋2,下肢は3レベル.HDS−R21点と記憶面の低下あり.起居動作は最大介助,端座位保持可能,ベッド上いざり困難で車椅子移乗も最大介助レベルでFIMは45点.嚥下機能は痰貯留,口腔乾燥あり.舌萎縮なく,運動可能で,空嚥下可能だが喉頭挙上不良な状態であった.本人の希望は「できる限り口から食べられるようにしたい」であった.リハはOT及びSTで介入となった.
訓練前期(身体機能改善のため離床強化期,約1ヶ月)は,病状進行に廃用の要素が加わっていると考え,overworkweaknessに留意しつつ積極的な離床を開始した.日中の自主練習や書字,塗り絵などで離床を進めた.手指拘縮の拘縮の改善も得られ,整容動作が準備で可能,移乗動作は中等度介助,車椅子自走も可能となった.
訓練後期(嚥下訓練の強化期,約1ヶ月)は,嚥下関連筋の訓練頻度増加のためSTの間接訓練に加え,OTでも間接訓練や直接訓練を開始した.本人の意欲も高く,口腔ケアや口腔顔面運動など自主練習も継続して実施し,嚥下機能の改善がみられた.
【結果】TPDは1センチ,FIMは51点と機能・ADLともに一部改善がみられた.嚥下内視鏡検査の兵藤スコアは初期10点(重度障害)から最終5点(中等度障害)に改善し,中間とろみやゼリー摂取などお楽しみでの食事が可能となった.
【考察】sIBMの治療は確立されておらず,早期からのリハは有効とされているが機能予後の改善効果に関しては明らかになっていない.一方慢性期は炎症の悪化を伴わず,筋力回復に有効との可能性が述べられている.慢性期は病状進行以外にも少なからず廃用や低栄養に関連する要因も潜在していると予測されるため,本人の意向を調査した上でoverworkweaknessに留意した積極的な高頻度のリハが症状の改善に有効である可能性が伺えた.
【症例紹介】80歳代男性.数年前より歩行障害が出現し,自身で立てなくなっていた.1年程前より嚥下障害もみられ,1ヶ月前より症状が増悪し,食事や水分が摂れなくなり,X年Y月Z日に当院救急外来を受診.脳神経内科で精査のため検査入院となり,同日リハ開始となった.病前は6人暮らしで,ベッド上で過ごすことが多く,妻の介助でトイレを使用した生活をしていたが,要支援1で介護保険などは特に利用していなかった.
【リハ経過】初期評価ではコミュニケーションの表出は構音障害,開鼻声を認めるが,発話明瞭度2.理解は軽度難聴を認めるも指示理解可能.ROMは手指にIntrinsic plus位に変形し,IP関節に伸展拘縮を認め,指尖手掌距離(tip palm distance;TPD)は4センチで物品把持困難で,握力は0キロ.MMTは肩・肘・手背屈は3,手掌屈や手指屈筋2,下肢は3レベル.HDS−R21点と記憶面の低下あり.起居動作は最大介助,端座位保持可能,ベッド上いざり困難で車椅子移乗も最大介助レベルでFIMは45点.嚥下機能は痰貯留,口腔乾燥あり.舌萎縮なく,運動可能で,空嚥下可能だが喉頭挙上不良な状態であった.本人の希望は「できる限り口から食べられるようにしたい」であった.リハはOT及びSTで介入となった.
訓練前期(身体機能改善のため離床強化期,約1ヶ月)は,病状進行に廃用の要素が加わっていると考え,overworkweaknessに留意しつつ積極的な離床を開始した.日中の自主練習や書字,塗り絵などで離床を進めた.手指拘縮の拘縮の改善も得られ,整容動作が準備で可能,移乗動作は中等度介助,車椅子自走も可能となった.
訓練後期(嚥下訓練の強化期,約1ヶ月)は,嚥下関連筋の訓練頻度増加のためSTの間接訓練に加え,OTでも間接訓練や直接訓練を開始した.本人の意欲も高く,口腔ケアや口腔顔面運動など自主練習も継続して実施し,嚥下機能の改善がみられた.
【結果】TPDは1センチ,FIMは51点と機能・ADLともに一部改善がみられた.嚥下内視鏡検査の兵藤スコアは初期10点(重度障害)から最終5点(中等度障害)に改善し,中間とろみやゼリー摂取などお楽しみでの食事が可能となった.
【考察】sIBMの治療は確立されておらず,早期からのリハは有効とされているが機能予後の改善効果に関しては明らかになっていない.一方慢性期は炎症の悪化を伴わず,筋力回復に有効との可能性が述べられている.慢性期は病状進行以外にも少なからず廃用や低栄養に関連する要因も潜在していると予測されるため,本人の意向を調査した上でoverworkweaknessに留意した積極的な高頻度のリハが症状の改善に有効である可能性が伺えた.