第57回日本作業療法学会

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ポスター

神経難病

[PE-8] ポスター:神経難病 8

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PE-8-2] 訪問リハビリ介入中に装具療法と観血的関節授動術を施行したフィッシャー症候群の経過

山口 莉歩, 大西 織帆, 渡邊 宏樹 (湘南藤沢徳洲会病院)

[はじめに]フィッシャー症候群(以下FS)は予後良好で数か月で自然軽快するともいわれている一方で,経過中に四肢の筋力低下を呈してギランバレー症候群への進展がみられたとあるが,リハビリ経過の報告は少ない.今回,発症後四肢の筋力が著明に低下し,長期の経過にて両側手指の関節可動域制限が残存しているFSの症例に対し,ナックルベンダーでの装具療法に加え,観血的関節授動術を施行し,関節可動域(以下ROM)と握力に改善を認めた経過を訪問リハビリで経験したため報告する.なお,本報告に際し,本人,所属長に説明し承諾を得た.
[症例紹介]60代前半女性.X年右上肢の脱力,右下肢の脱力,複視を認めたため入院.免疫グロブリンでの治療を開始した.X年+9ヶ月,ADLは全介助からロフストランド杖歩行自立となり回復期病院を退院,当院外来リハビリ開始.X+1年5ヶ月,訪問リハビリへ移行した.手指に関しては運動麻痺とROM制限があり自助具等の提案により日常生活動作(以下ADL)に改善はみられたが,手指のROM制限による支障は残っていた.X+1年9ヶ月,整形外来受診,ナックルベンダーの装着が開始された.3ヶ月後,医師より拘縮に対する関節授動術を提案され,左小指MP関節施行した.
[装具療法導入前]ADL:FIM124点.訪問介護週3回,訪問リハビリ週1回.主訴:指がもう少し動くようになりたい.機能:TAM母指~小指の順に,左110°/98°/181°/99°/101°右80°/167°/196°/109°/79°.ROM(以下すべてActive)左小指MP関節からDIP関節の順に,屈曲0°/114°/82°伸展45°/-50°/0°.手内在筋の筋萎縮を認め,握力は左3.5kg,右測定困難であった.
[経過]両側ナックルベンダー処方後より医師から20~30分/日の装着を指示されるが,当初は10分程で末梢冷感と血色不良を認めていた.両側装着することは生活動作が制限されることにもなり,生活の中で装着時間を割くことが難しい様子だったが,訪問リハビリ介入時には,関節可動域訓練と装着指導を行い,次第に隙間時間をみつけては装着する様子が見受けられ,本人にうまく定着した.装具療法開始より3ヶ月後,医師より手指関節授動術を提案され,左小指MP関節に対し側副靱帯,掌側板の剥離,背側関節包切除術を施行した.術後3週間MP関節屈曲90°で固定,術部以外は運動制限なし,日中や安全時のシーネオフも許可されていた.また,術後より頻回なリハビリが望ましいと医師より指示あり訪問リハビリ週1回から週2回に増回した.固定期間は右手指や左母指~環指の関節可動域訓練やモビライゼーション,ピンチ・グリップ訓練中心に介入した.疼痛・浮腫は軽度で徐々に軽減傾向,抜糸後は左小指の自動・他動運動を再開.術部周辺の痺れは残存していた.
[術後3ヶ月]ADL:FIM124点.小指対立位が可能になったことでお椀やコップ等,把持動作の安定性向上に繋がった.機能:TAM母指~小指の順に,左110°/110°/181°/130°/196°右80°/154°/183°/120°/109°.ROM左小指MP関節からDIP関節を順に,屈曲50°/114°/82°伸展0°/-50°/0°左示指から小指のMP関節屈曲では平均31.4%可動域拡大していた.握力は左4.0kg,右2.0kg 
[考察]ギランバレー症候群等の急性免疫性ニューロパチーの場合,急性期~回復期の過程では末梢神経の炎症変性が強く,運動負荷や手指ポジショニング等の管理については慎重に実施していく必要がある.本症例は長期的な無動や廃用性筋萎縮を呈したためROM制限が大きく残存していた.関節拘縮や手のアライメント不良の予防や改善に徒手療法に加え,装具療法や関節授動術の導入も有効ではあるが,導入時期に関しては経過とともに検討していく必要がある.