第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

がん

[PF-10] ポスター:がん 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PF-10-3] 乳がん術後患者の復職状況と復職に影響を与える因子の検討

門田 彩花1, 西村 信哉1, 三浦 裕幸1, 西村 顕正2, 津田 英一3 (1.弘前大学医学部附属病院 リハビリテーション部, 2.弘前大学大学院医学研究科消化器外科講座, 3.弘前大学大学院医学研究科リハビリテーション医学講座)

【緒言】
 乳がんは女性にとって最も罹患数が多いがんであり,30歳前後から罹患率が増加するため,就業と治療の両立が問題となる.さらに近年では女性が医療,福祉などの肉体労働とされる仕事に就く割合も増加している.乳がん治療には手術療法の他に,化学療法や放射線療法などの補助療法があり,その合併症や副作用のため身体機能低下やADL,IADLの制限に加え,復職が困難になる場合もある.しかし,乳がん術後患者における復職率や復職に影響する因子を検討した報告は少ない.本研究の目的は,当院の乳がん術後患者を対象として,復職に関する調査を行い,復職率と復職に影響を与える因子を明らかにすることである.なお,対象患者にはヘルシンキ宣言に基づき説明し同意を得た.
【対象・方法】
 対象は2020年3月から2023年2月までに乳がんの診断にて作業療法を実施し術後6か月間評価が可能であった23名23肢(全例女性,平均年齢54.4±10.3歳)である.手術内容は乳房全切除15例,乳房部分切除8例であり,全例で腋窩リンパ節郭清術が施行されていた.術後6か月時点での復職状況から復職群と非復職群の2群に分類し復職率を算出した.さらに就業内容から肉体労働者,非肉体労働者に分類し,各群での割合を算出した.
 また,評価項目として,術後化学療法の有無,仕事内容,肩関節可動域(屈曲・外転),肩外転筋力健患比,リンパ浮腫の有無,DASH-JSSH機能/症状スコア,仕事スコア,EORTC QLQC-30(総括的QOL,身体的活動性,役割活動性,社会的活動性,痺れ,悪心嘔吐,痛み,息切れ,不眠,食欲不振,便秘,下痢,経済状況)を復職群と非復職群とで比較した.
 統計解析にはMann-Whitney U test,Fisher’s exact testを使用し,危険率5%未満を有意とした.
【結果】
 術後6か月時点での復職群は19人,非復職群は4人であり復職率は82.6%であった.復職群での就業内容は肉体労働者21%,非肉体労働者79%であり,非復職群では肉体労働者75%,非肉体労働者25%であった.復職の有無と就業内容に関しては有意な関連は認められなかった(p=0.067).また,復職群と非復職群の間で各評価項目に有意差は認められなかった.
【考察】
 術後6か月時点での復職率は82.6%であった.また,復職群と非復職群では,身体機能やADL,QOLに有意な差は認められなかった.術後の復職には就業形態や職場環境などが関係すると報告されている.本研究の結果から,乳がん術後患者が復職を希望する場合には,身体機能やADL,QOL等の評価の他に,就業形態,時間,業務内容,職場の状況などを詳細に評価し,復職のための条件を考慮した作業療法を実施することが重要である.