第57回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-12] ポスター:がん 12

Sat. Nov 11, 2023 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PF-12-1] 脳腫瘍患者の健康関連QOLおよびADLに影響を与える因子の検討

渡邉 貴博1,2, 能登 真一3, 田畑 智1, 五十嵐 文枝1, 木村 慎二1 (1.新潟大学医歯学総合病院総合リハビリテーションセンター, 2.新潟医療福祉大学院医療福祉学専攻, 3.新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 作業療法学科)

【はじめに】
脳腫瘍(以下,BT)患者に対するリハビリテーション(以下,リハ)は,ADLの改善に有効であるが,健康関連QOL(以下,HRQOL)の向上に関する有効性は十分に検討されていない.BTには様々な分類があり,生命予後が異なる.また,悪性度の高い膠芽腫患者のリハ後のHRQOLは,他のBT分類患者よりも低い傾向にある.しかし,BT分類を含め,リハ介入によるHRQOLとADLに影響を与える因子について検討した報告は見当たらない.
【目的】
リハ前後のHRQOLとADLを比較すること.そして,リハ介入によるHRQOLとADLに影響を与える因子を検討すること.
【方法】
対象は,BTの治療目的に入院し,リハを実施した20歳以上の者とした.除外基準は,認知機能低下,高次脳機能障害および全身状態の不良により,HRQOLの質問に回答が困難な者とした.年齢,性別,再発の有無,入院期間,BT分類はカルテより調査した.HRQOLの評価にはEQ-5D-5L,ADLの評価にはFIMをそれぞれ用いて,リハ開始時と終了時に評価した.EQ-5D-5Lは,移動の程度,身の回りの管理,普段の生活,痛み/不快感,不安/ふさぎ込みの5項目5水準で回答し,換算表を用いてQOLスコア(1.00を完全な健康状態〜-0.025)を算出した.BT分類は膠芽腫,WHO grade II/III,中枢神経系原発悪性リンパ腫,転移性BT,WHO grade Iの5群に大別した.統計解析は,リハ開始時と終了時のQOLスコアとFIM合計得点を,対応のあるt検定で比較した.さらに,QOLスコアとFIM合計得点のリハ前後の差(QOLスコアgainとFIM gain)を,それぞれ従属変数とした重回帰分析を行った.なお,独立変数は性別,年齢,再発の有無,入院期間,BT分類,QOLスコア(リハ開始時),FIM合計得点(リハ開始時)とした.解析ソフトはEZRを使用し,有意水準は5%未満とした.本研究は当該施設の倫理審査委員会の承認を得ており,紙面上で本人に説明し同意を得た.
【結果】
対象は,76名(男45名,女31名),平均年齢は60.0±11.7歳であった.BT分類は,膠芽腫群24名,WHO grade II/III群15名,中枢神経系原発悪性リンパ腫群9名,転移性BT群9名,WHO grade I群19名であった.QOLスコアはリハ開始時0.618 ± 0.219,終了時0.705 ± 0.195(p < 0.001),FIM合計得点はリハ開始時93.0 ± 22.2点,終了時115.5 ± 12.2点(p < 0.001)で,いずれも終了時が有意に高値であった.重回帰分析の結果,QOLスコアgainに影響を与える因子はリハ開始時QOLスコア(β = -0.638,p < 0.001)のみであった.また,FIM gainに影響を与える因子はリハ開始時FIM合計得点(β = -0.821,p < 0.001)と,再発(β = -0.183,p = 0.003)であった.一方,BT分類はQOLスコアgainとFIM gainに影響を与える因子ではなかった.
【考察】
本研究結果から,QOLスコアとFIM合計得点は,リハ後に向上した.さらに,QOLスコアgainとFIM gainは,BT分類の影響を受けないことが明らかになった.以上のことから,BT患者に対するリハは,BT分類の違いを問わずHRQOLとADLの改善に寄与する可能性がある.一方で,再発がADLに影響を与える因子である可能性があり,今後は再発の有無での詳細な検討が必要である.さらに,BT分類ごとのHRQOLの特徴を検討する.