第57回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-2] ポスター:がん 2

Fri. Nov 10, 2023 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PF-2-4] 終末期がん患者に対する作業療法において,作業療法士が他職種と協業する際のクリニカルリーズニング

池知 良昭1,2, 石橋 裕2, 石橋 仁美3 (1.香川県立白鳥病院リハビリテーション科, 2.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科作業療法科学域, 3.東京工科大学医療保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【緒言】
 終末期がん患者は,患者の希望(hope)・要望(demand)を受け止め,それらが叶えられるようにチームで考えることが必要(辻:2021)であり,終末期がん患者の作業療法(Occupational Therapy:OT)においても,他職種との協業は大切である.
 終末期がん患者に対するOTにて,池知らは作業療法士(Occupational Therapists Registered:OTR)が果たすべき役割を明確にし,OTRが自らの介入を振り返る手段として,終末期がん患者に対するOTRの実践自己評価尺度(Self-Rating Scale of Occupational Therapists for Terminal Cancer patients:SROT-TC)を開発した.SROT-TCは20項目5因子で構成され,1因子として「他職種との協業」が抽出された.
本研究の目的は,終末期がん患者に関わるOTRが,他職種と協業する際のOTRのクリニカルリーズニングを明らかにすることである.OTRの臨床上における考えや判断が明らかになることで,具体的介入方法に対する示唆が得られる.本研究は所属大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号22074).
【方法】
 対象者は第1筆者から始まるスノーボールサンプリングにて,終末期がん患者に関わるOTRを抽出した.ZOOMにて半構造化面接を行った.同意の上,録画し,遂語録を作成した.対象者に基本情報(OT経験年数,がんのOT経験年数,緩和ケアチームの一員か否か,緩和ケア病棟でのOT経験の有無),SROT-TC第Ⅳ因子「他職種との協業」の下位項目から「他職種とチームとしてうまく協働するためにOTRとして考えていることを教えてください」と尋ねた.分析はテキストマイニング手法を採用し,KHcoder Ver.3を用いた.全体像の把握のため,頻出語を抽出した.その後,コード間の結びつきを把握するため共起ネットワークにて分析した.遂語録での文章表現を確認するため,随時KWICコンコーダンスを参考にした.妥当性を確保するため,第1,2筆者にて分析後,KHcoderを用いた質的研究の指導経験のある第3筆者が確認し,3者の納得が得られるまで検証した.
【結果】
 対象者は6名(OT経験年数13.3±4.6年,がんのOT経験9.2±6.5年,緩和ケアチームの一員3名,緩和ケア病棟でのOT経験者5名)であった.平均面接時間は20.0±5.6分であった.頻出語では「OT」「PT」「看護師」「カンファレンス」が多かった.共起ネットワークは,6カテゴリーに分類され,「各職種の専門性を知るように意識する」「OTの目的や実施内容をカンファレンスで言う」「医師や看護師に,より具体的なリハビリ場面のイメージを促し,OT処方に繋げる」「他職種に分からないことが有ったら尋ね,PTとの違いを分かりやすい言葉で伝える」「ワーカーと病棟や回診でお互いのアプローチを知る」「患者の個性に応じた役割を担う」が抽出された.
【考察】
 終末期がん患者に関わるOTRは,他職種の専門性を知ると共に,OTの専門性を自ら他職種に伝える,特に理学療法との役割の差異を他職種がイメージできるよう分かりやすい言葉で伝え,OT処方へ繋げていることが示唆された.また患者の個性に応じ,各職種がケアの範囲の過不足を調整し,必要に応じた患者への関わりをするTransdisciplinary Team Modelの視点も同時に併せ持っていることが明らかとなった.