第57回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-3] ポスター:がん 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PF-3-3] 富田林訪問看護ステーションでの終末期がんリハビリテーション

橋本 博史, 野々村 剛, 楠本 好輝 (大阪府 済生会 富田林病院)

【はじめに】
終末期を迎えた利用者は,がんへの支援と人への支援が重要であるとされている.がんへの支援とは,疼痛や倦怠感等へリラクゼーションや動作・介助指導等をそれぞれの状態に合わせて行う.次に人への支援とは,利用者・家族の価値観や想い等に対し,QOLに結び付けて行う. 富田林訪問看護ステーション(以下,当訪看)でのリハビリは,がんへの支援が中心で,人への支援が少ない.ただ少ない中でも人への支援が行えた事例もあったので紹介し,今後どのような視点で人への支援を行っていけばよいか,考察を交え報告する.
【当訪看の終末期がん利用者の割合と現状】
利用割合は全体の13.7%,その中でリハビリが関わった割合は72%.介入初期の Performance status scale(以下,PS)3以上の割合は48.5%である.リハビリの実施内容は動作指導や疼痛緩和を目的とした安楽姿勢の模索,家族や医療者への介助指導等の,がんへの支援が中心となっており,人への支援が少ないのが現状である.
【人への支援が行えた事例】
事例①:PS4で四肢の浮腫があり浸出液著明.日常生活動作には重度介助を要し,介護時は身体の疼痛が出現し,苦痛な表情を見せていた.リハビリでは疼痛緩和や介護負担軽減を目的に関節可動域訓練や介助方法の指導を行っていると,幼稚園児の孫がベッドの周りを走ることがあった.家族の関係性は良好だったので,孫へスキンケアの方法を伝え,実施すると利用者から孫へ「ありがとう」と笑顔で話された.その後,孫は日常生活でもスキンケアを行うことがあり,新たな関係性を構築できた.
事例②:余命2週程度で自宅退院となり,家族が集まりやすいリビングへベッドを置くことになった.徐々に状態が悪化していく中で,リハビリではリラクゼーションや安楽姿勢の模索を行っていた.リハビリ終了後,家族に病前生活を聴取していると,利用者は庭に価値をおいていることがわかった.会話を行う事も困難となる中で,庭の見える部屋へ布団を移動させると笑顔が見られ,その数日後に他界された.家族は「最後に庭を見せてあげれて良かった」と話された.
【現状と課題から考える今後の支援】
当訪看を利用される利用者はPS3以上が48.5%を占め,数日でPS3へ移行する利用者も多い.そのような利用者は頻回に介護を必要とするが,介護・医療保険内のサービスのみで介護することは困難であり,家族の介護が必須である.また日に日に状態が変化するので,利用者・家族は不安の中,過ごさなければならず,リハビリは疼痛緩和や動作・介助方法の指導等の,がんへの支援を求められる事が多い.もちろん,がんへの支援は必要だが,価値や人生観を含めた人への支援も行わなければならない.上記2例のように,新たな家族関係の構築や利用者の価値に直接介入できるよう広い範囲の作業に目を向けなければならない. また在宅だけでなく,入院中から人への支援を行う事で作業療法を有意味なものとしていかなければならない.利用者が生きてきた生活に価値をおき,利用者がこれらに参加できるよう,人への支援に介入する視点をもつことが重要ではないかと考える.