[PF-5-3] がん経験者と協働して設定するライフゴールにはどのような要素を含めるべきか?
1.序論
厚生労働省は,がん対策推進基本計画(第3期)のなかで,人ががんになっても自分らしく生きる社会の実現を掲げている.このためには,がん経験者とリハビリテーション専門家が協働してQOLを反映するライフゴールを設定することを重要視する意見がある(Lindman et al., 2019ほか).しかし,当該分野では有効なライフゴールに関する知見は十分に得られていない.本研究の目的は,がん経験者とリハビリテーション専門家が協働的に設定するライフゴールに含まれるべき要素を特定することとした.
2.方法
デザインはスコーピングレビュー(Tricco et al., 2018)とした.使用したデータベースはMEDLINE,Academic Search Premier,CINAHLで,検索用語はcancer, goal-setting, rehabilitation, lifeなどを組み合わせた.論文の包含基準は対象者が18歳以上の成人であること,設定した目標の有効性を示す量的あるいは質的データが報告されていることなどとした.がん経験者が終末期である論文は除外した.採用論文を同定した後に,そのなかでライフゴールに関する(1)領域,(2)特性,(3)設定方法が出現している割合を演繹的に確認した.(1)領域は,Pinquartら(2008)が用いた身体,心理,社会,功績,余暇というライフゴールの分類に倣った.(2)特性は,Schutら(1996)とBovend’Eerdtら(2009)のSMART(specific, measurable, achievable or accomplish, relevant, timed)基準に従って分類した.(3)設定方法はLenzenら(2017)の目標設定の段階(a:準備,b:目標設定,c:フォローアップ)とその構成要素に基づいて分類した.なお,(2)目標特性,(3)目標設定方法のために定めた演繹的な枠組みに当てはまらない要素が確認された場合は,「その他」として列挙し,その内容の類似性に従って帰納的に整理した.
3.結果
データベースでの検索により161編の論文がヒットし,スクリーニングの段階では77編が除外され,適格性の段階では60編が除外された.最終的に,24編の論文が採用された.採用論文の(1)領域は,多い順に身体(100.0%),心理(83.3%),社会(70.8%),余暇(62.5%),功績(45.8%)だった.また,採用論文の87.5%は2種類以上の領域を含んでいた.(2)特性は,多い順にrelevant (91.7%), accomplish (79.2%), achievable (62.5%), specific (62.5%), measurable (50.0%), timed (20.8%)だった.「その他」には,複数の目標を設定すること(37.5%)が列挙された.(3)設定方法は,全ての論文で「a:準備」と「b:目標設定」の段階が適用されていた.また87.5%の研究は「c:フォローアップ」の段階を適用していた.「その他」には,「目標の視覚化」(79.2%)と「繰り返し修正すること」(58.3%)が列挙された.
4.考察
採用論文のなかで有効性が確認できたライフゴールに関する領域,特性,設定方法が分析されたため,出現頻度が高いものは,設定に値する有効な目標であると考えられる.がん経験者と協働的に設定するライフゴールとして,以下の要素が重要であると考えられた―数多くの領域に対応する,適切なSMART基準を含む,複数設定する,フォローアップを含む,視覚化する,繰り返し修正する―.本研究には,使用したデータベースが限られている,特定したライフゴールの要素が有効な程度が不明確であるという限界がある.しかし,得られた知見は新規の目標設定介入あるいは目標の質を定量化する尺度の開発に役立つと考えられる.
厚生労働省は,がん対策推進基本計画(第3期)のなかで,人ががんになっても自分らしく生きる社会の実現を掲げている.このためには,がん経験者とリハビリテーション専門家が協働してQOLを反映するライフゴールを設定することを重要視する意見がある(Lindman et al., 2019ほか).しかし,当該分野では有効なライフゴールに関する知見は十分に得られていない.本研究の目的は,がん経験者とリハビリテーション専門家が協働的に設定するライフゴールに含まれるべき要素を特定することとした.
2.方法
デザインはスコーピングレビュー(Tricco et al., 2018)とした.使用したデータベースはMEDLINE,Academic Search Premier,CINAHLで,検索用語はcancer, goal-setting, rehabilitation, lifeなどを組み合わせた.論文の包含基準は対象者が18歳以上の成人であること,設定した目標の有効性を示す量的あるいは質的データが報告されていることなどとした.がん経験者が終末期である論文は除外した.採用論文を同定した後に,そのなかでライフゴールに関する(1)領域,(2)特性,(3)設定方法が出現している割合を演繹的に確認した.(1)領域は,Pinquartら(2008)が用いた身体,心理,社会,功績,余暇というライフゴールの分類に倣った.(2)特性は,Schutら(1996)とBovend’Eerdtら(2009)のSMART(specific, measurable, achievable or accomplish, relevant, timed)基準に従って分類した.(3)設定方法はLenzenら(2017)の目標設定の段階(a:準備,b:目標設定,c:フォローアップ)とその構成要素に基づいて分類した.なお,(2)目標特性,(3)目標設定方法のために定めた演繹的な枠組みに当てはまらない要素が確認された場合は,「その他」として列挙し,その内容の類似性に従って帰納的に整理した.
3.結果
データベースでの検索により161編の論文がヒットし,スクリーニングの段階では77編が除外され,適格性の段階では60編が除外された.最終的に,24編の論文が採用された.採用論文の(1)領域は,多い順に身体(100.0%),心理(83.3%),社会(70.8%),余暇(62.5%),功績(45.8%)だった.また,採用論文の87.5%は2種類以上の領域を含んでいた.(2)特性は,多い順にrelevant (91.7%), accomplish (79.2%), achievable (62.5%), specific (62.5%), measurable (50.0%), timed (20.8%)だった.「その他」には,複数の目標を設定すること(37.5%)が列挙された.(3)設定方法は,全ての論文で「a:準備」と「b:目標設定」の段階が適用されていた.また87.5%の研究は「c:フォローアップ」の段階を適用していた.「その他」には,「目標の視覚化」(79.2%)と「繰り返し修正すること」(58.3%)が列挙された.
4.考察
採用論文のなかで有効性が確認できたライフゴールに関する領域,特性,設定方法が分析されたため,出現頻度が高いものは,設定に値する有効な目標であると考えられる.がん経験者と協働的に設定するライフゴールとして,以下の要素が重要であると考えられた―数多くの領域に対応する,適切なSMART基準を含む,複数設定する,フォローアップを含む,視覚化する,繰り返し修正する―.本研究には,使用したデータベースが限られている,特定したライフゴールの要素が有効な程度が不明確であるという限界がある.しかし,得られた知見は新規の目標設定介入あるいは目標の質を定量化する尺度の開発に役立つと考えられる.