第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

がん

[PF-9] ポスター:がん 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PF-9-1] がん患者の自宅復帰に伴う心身の不調に対する実態調査

光成 知香枝1, 緒方 博子1, 平井 佳晃1, 久野 真矢2 (1.公立みつぎ総合病院リハビリ部, 2.県立広島大学保健福祉学部作業療法学科)

【序論】
がん対策基本法一部改訂(2016年)において,がん患者の状況に応じて緩和ケアが診療時から適切に提供されるようにすることとされ,当院緩和ケア病棟においても当事者と相談しながら自宅復帰を支援するケースは少なくない.しかし,自宅退院が現実になる過程において心身の不調を呈する患者を経験することがある.
【目的】
本研究はがん患者の自宅退院に伴う心身の不調に関する実態を明らかにすることを目的として,カルテに記載された情報を原資料として後方視的に調査した.なお,本研究は当院研究倫理委員会の承認を得て実施した(公み病 第812号).
【方法】
調査対象は2019年4月から2022年12月までの間に当院緩和ケア病棟から自宅退院した患者とし,年齢,性別,診断名,在院日数,ADL,家族構成,要介護認定,心身の不調の内容と退院決定から心身の不調を呈するまでの日数などを電子カルテの情報を遡り調査し,集計した.
【結果】
226名(平均年齢77.6歳(SD=11.4),男性123名・女性103名)のうち自宅退院した患者は40名(平均年齢79.9歳(SD=11.4),男性24名・女性16名),心身の不調を呈したのは5名(12.5%)であった.不調を訴えた患者の属性は平均年齢67.6歳(SD=11.3),男性3名・女性2名,原発巣は大腸(20%)・膵臓(20%)・その他(60%),退院時ADLは独歩もしくは歩行器歩行(100%)・セルフケア自立(100%),家族構成は独居(60%)・夫婦(20%)・夫婦と子(20%),独居の場合キーパーソンは別居の妹や子であった.退院にあたり5名全員が要介護認定を受けていた.不調の内容は,不安感5名,痛みの増強3名,不眠2名,しびれ1名,運動麻痺1名,呼吸苦1名,嘔吐1名,便秘1名,怒り1名,いらいら感1名であった.これらは退院決定から0日で呈し(40%)その他は11日以内で呈していた.また,家族も不安感5名,いらいら感2名などの心身の不調を呈していた.更に,12名(30%)に患者本人には訴えはなく家族のみに不安感12名,不眠1名といった心身の不調が認められた.
【考察】
自宅退院したがん患者の12.5%に自宅退院決定後に心身不調を認め,不調の内容は身体症状,心理・精神症状など多岐にわたっており,その家族も不安感を中心とした不調を呈していた.更に,患者本人には訴えはなく30%の家族のみに不安感を中心とした不調を呈していたことも明らかになった.これらの結果は患者の自宅退院を進めていくにあたり当事者を患者とその家族として捉えサポートしていく必要があることを示唆している.また,家族の心身の不調は不安感が最も多いため,入院中のサポートに加え退院後の生活が具体化できるように退院前カンファレンスを実施する等,細かく準備していく必要があると考える.作業療法士は当時者と個別の関わりを持つ機会も多い.当事者の経験や想いなどを傾聴し,心身の不調を訴える背景を理解する必要があると考える.