第57回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-9] ポスター:がん 9

2023年11月11日(土) 12:10 〜 13:10 ポスター会場 (展示棟)

[PF-9-2] 乳がん関連続発性上肢リンパ浮腫における肥満患者の特徴

加藤 るみ子1, 田尻 寿子1, 田尻 和英1, 安永 能周2, 伏屋 洋志1 (1.静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科, 2.静岡県立静岡がんセンター再建・形成外科)

【序論】乳がん関連続発性上肢リンパ浮腫(以下,上肢リンパ浮腫)は乳がん治療後の後遺症の一つである.リンパ浮腫は一度発症すると根治が困難なため,リンパ浮腫のリスク因子を早期に抽出し,発症リスクを軽減していく取り組みが不可欠である.肥満はリンパ浮腫のリスク因子であり,体重管理指導が重要である.その際は,患者背景を考慮して行う必要があるが,肥満を伴うリンパ浮腫患者の特徴について調査した報告は少ない.
【目的】上肢リンパ浮腫患者における肥満患者の特徴を調査すること
【対象】2021年1月~12月に当院を受診した上肢リンパ浮腫患者
【方法】対象期間内のBody Mass Index (kg/m2, (以下,BMI))が分かる患者を後方視的に診療録から抽出し,BMI25kg/m2未満の患者(以下,非肥満群)とBMI25 kg/m2以上の患者(以下,肥満群)に分類した.調査項目は,①基本情報(年齢,利き手),②がんの治療歴(術後経過年数,術側,リンパ節郭清,化学療法,放射線療法,ホルモン療法),③リンパ浮腫の状態(リンパ浮腫罹患年数,重症度(International Society of Lymphology病期分類(以下,ISL病期)),蜂窩織炎既往),④生活背景(家事,就労,運動習慣,直近6カ月の体重変化量(kg,(以下,体重変化量))とし,群間で比較した.生活背景は当院作業療法士が作成した質問紙の回答から抽出した.
【統計学的手法】2群間の調査項目の差について,連続変数にはStudentのt検定を用いて,2値変数にはカイ二乗検定(Fisherの直接法)を用いて,順序変数にはMann-WhitneyのU検定を用いて,それぞれ検定した.有意水準は5%未満とした.
【倫理的配慮】本研究にあたり人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に則り,当院の倫理審査委員会の承認を得た.
【結果】対象は48例で,非肥満群34例,肥満群14例であった.年齢は非肥満群61.1±9.7歳,肥満群57.6±9.4歳(p=0.26),BMIは非肥満群21.3±2.7kg/m2,肥満群28.1±2.2kg/m2p<0.001),がんの治療歴に有意差はなかった.リンパ浮腫罹患年数は非肥満群6.3±5.8年,肥満群4.0±2.3年(p=0.17)であった.ISL病期は,両群で2期前期(非肥満群32例(94.1%),肥満群13例(92.9%)(p=0.11))が多かった.蜂窩織炎の既往があった患者は非肥満群5例(14.7%),肥満群4例(28.6%) (p=0.93)であった.調査項目のうち,運動習慣(あり:非肥満群22例(64.7%),肥満群4例(28.6%)(p=0.024))と体重変化量(非肥満群(32例)-1.1±2.0kg,肥満群(12例)2.3±2.3kg(p<0.001))の2項目に有意差を認めた.
【考察】上肢リンパ浮腫患者のうち,肥満患者は体重が増加傾向にある患者が多く,経過とともにリンパ浮腫が重症化するリスクが高くなることが推測された.そのため,医療者はリンパ浮腫の治療早期から肥満患者を抽出し,リンパ浮腫指導の一つとして体重管理指導を継続的に行う必要があると考える.また,肥満患者は運動習慣がない患者が多く,体重管理の障壁になっていることが推測された.運動指導の際は,肥満やリンパ浮腫により身体機能が低下している可能性があるため,リハビリテーション職種による専門的な介入が必要と考える.