第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

内科疾患

[PG-1] ポスター:内科疾患 1

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PG-1-3] 重度筋力低下を伴う多発性筋炎に対して急性期から作業療法を行った一症例

塚原 緑1, 辺土名 由美子1, 坂下 慶多1, 岡本 光生2 (1.大和市立病院リハビリテーション療法科, 2.大和市立病院脳神経内科)

【はじめに】多発性筋炎(PM)は自己免疫性の炎症性疾患で頸部・体幹・四肢近位筋を中心に筋力低下が進行し,嚥下障害を伴うものもある.先行研究ではPMの作業療法(OT)についての症例報告は少ない.今回,重度筋力低下をきたしPMと診断された患者に対し,薬物療法を行いながら急性期からOT介入を行い,筋力回復にあわせた動作の工夫,環境設定,用具導入,機能訓練など施行し,ADL向上につながった症例について報告する.なお本学会発表に際し,本人へ説明し同意を得ている.【症例紹介】60歳代,女性.現病歴:4か月前より下肢筋力低下を生じ伝い歩きとなった.2か月前より上肢挙上困難,階段昇降困難となり,1ヵ月前より起き上がり,トイレや食事動作困難,嚥下困難となった.他院での採血の結果,PMを指摘され当院紹介受診し緊急入院となった.【薬物療法】入院1日目CK5865U/Lと高値.入院中メチルプレドニゾロンパルス(mPSLパルス1000㎎/日×3日間)3クール施行(入院3~5日目,10~12日目,17~19日目).CK改善傾向も正常値まで至らず免疫グロブリン大量静注療法(400㎎/Kg×5日間)施行(入院22~26日目).その後CK正常化.各種抗体陰性であったが診断基準をみたしPMとして加療継続.PSL漸減しながら内服継続し,入院85日目CK130U/L,88日目に転院.【入院時状況】頸部・両側上下肢の抗重力挙上困難.うなだれるような座位姿勢で車いす移動・起居動作全介助.嚥下困難で経管栄養となった.握り型のナースコール操作困難で置き型に変更.【OT開始時状況】FIM総計45点.ベッドに臥床して過ごし,ADL全介助.粗大筋力:肩屈曲2/2,肘屈曲2/2,肘伸展2/2,手指屈曲4/4,下肢近位筋力2/2レベル.左大腿筋痛あり.【OT介入経過】ベッドサイド介入期:入院2日目より開始.mPSLパルス療法が開始され関節可動域訓練,肢位により困難となるためナースコール操作確認など実施.mPSLパルス療法2クール目終了後,リクライニング車いす全介助で短時間から離床開始.普通型車いす座位可能となると長時間で臀部痛あり,空気圧式クッション導入し離床時間延長を図った.活動拡大期:入院38日目.OT室で開始した.介助下でのリーチ動作練習,握りやつまみ練習,疲労に配慮したスマートフォン操作方法や肢位検討,経口摂取と食形態変更にあわせた箸操作練習,車いす自走能力向上にあわせてブレーキ延長レバーの工夫,筋力回復に合わせた抵抗運動などを行った.プログラム遂行において,弱い力でも操作できるようになど,筋への負担や疲労に配慮しながら実施した.ADLの介助量軽減はみられたが,排泄動作や歩行能力低下が残存しリハビリテーション目的に転院となった.なお訓練経過のなかでCK値に著明な上昇はなかった.【OT終了時状況】FIM総計79点.普通型車いすで来室.粗大筋力:肩屈曲3/2,肘屈曲4/4,肘伸展3/3,下肢近位筋力2/2レベル.座位での肩関節自動屈曲85°/60°.食事は箸を用いて自力摂取可能,日中ほとんど車いすで過ごしナースコールは握り型を使用,スマートフォン操作も自由に可能.【考察】PM患者への治療早期からの過負荷は症状を悪化させる可能性があるともいわれているが,適切な負荷量については明らかではない.本症例の場合,ADL全介助の時期から薬物治療と並行して介入し徐々に活動拡大を図った.ナースコール調整や車いすでの離床,ブレーキ操作の工夫,スマートフォン操作など,できない・負担がある動作に対し,やりやすくする工夫や環境調整など,負荷を軽減しながら,回復段階にあわせて活動性を高めていくことにOTが関わる意義があったと考えられた.