第57回日本作業療法学会

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ポスター

内科疾患

[PG-3] ポスター:内科疾患 3

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PG-3-1] CROT-Rを用いた実践報告

野坂 康博1, 三浦 健太1, 坂本 勇太1, 藤本 一博2 (1.函館市医師会病院リハビリテーション課, 2.湘南OT交流会)

はじめに
 作業療法リーズニングは,「物語的リーズニング」「科学的リーズニング」「実際的リーズニング」「倫理的リーズニング」「相互交流的リーズニング」の5つが示されている.従来のレジュメは,1.はじめに 2.一般情報 3.他部門情報 4.評価 5.問題点 6.ゴール 7.治療プログラム 8.統合と解釈 9.治療経過 10.結果 11.考察 12.文献との構成であり,5つのリーズニングを表現することも可能であるが,その必要性や意義が明確ではなく,偏ったリーズニングになってしまうことがある.今回5つのリーズニングを踏まえたレジュメの様式CROT-R(Clinical Reasoning OT Tool-Resume)を用いて,動機づけに注目したことで現実的に生活を考えられるようになった事例を表現したため,CROT-Rの使用感の考察とともに報告する.本報告にあたり対象者から書面にて同意を得た.
CROT-Rまとめ CROT-Rの項目に沿って事例をまとめたその一部を紹介する.
「基本情報」:60歳代女性である.独居生活中,ふらつきを認め近医へ受診するが高血糖のため当院へ救急搬送となる.「物語リーズニング」:A氏は20代で結婚したが数年で離婚,息子が1人居るが音信不通で兄弟との連絡も取っていない.75歳まで何とか自宅で暮らしたいと語る.「科学的リーズニング」:糖尿病では病態に対する認識理解や動機づけ,運動療法で身体活動量を保つことが重要とされている.医師からは本人の疲労度自制内での歩行練習や生活動作練習が許可されている.担当リハスタッフ間では下肢筋力強化を図りながらADL自立度改善を図る方針が決まった.「実際的リーズニング」:立位や歩行練習とADL練習を主体に機能改善と合わせて下肢が膝折れしないよう動作指導を念入りに行った.しかし,病態認識力に不安が残る状態であった.「倫理的リーズニング」:必要に応じて病態に対する指導的な介入を行いつつも,A氏の語りにも配慮し前向きに現実を検討出来る様に配慮した.「相互交流的リーズニング」:立位や歩行練習,ADL練習の内容で合意が得られ,自宅での自立した生活を目標にOTが開始された.しかし,下肢の末梢神経障害の影響が強く入院前と同様の生活は難しいと判断しサービス導入など環境調整を選択肢に加えたことで目標に向かい続けることが可能であった.
結果
 機能改善は軽微であったが,下肢の動きを目視で代償することで入浴以外のADLが自立レベルとなった. COPMでは,「移動」の項目で重要度10,満足度1→6,遂行度1→9と向上を認め,他の項目でも2段階以上向上した.本レジュメを用い,各リーズニングをバランス良く統合したことで,A氏の希望が現実的な目標に変容可能になった.また,多職種との連携を行う際にも有効であり,目標に向けた介入がより明確となった.
考察
 認知機能に明らかな問題を有さなくとも,身体状況に合わせた生活を検討することが困難な事例を認める.日記の使用やその日のOT内容のポイントを簡潔にメモし復習してもらうことで現実的に生活を考えられるようになったと思われる.本様式は従来のレジュメ様式と比較すると,自由度が低いCROT-Rであるが,その項目は自然とOTの専門性を表現する形となっており,自己のOTで不足している項目を再度考察させる働きがあると感じた.当院OT部門全体で今後もCROT-Rを利用し研鑽に努めたい.