第57回日本作業療法学会

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ポスター

内科疾患

[PG-3] ポスター:内科疾患 3

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PG-3-3] 好酸球性筋膜炎症状に対して筋膜・皮下組織の滑走性にアプローチしたことで上肢機能が改善した一例

伊藤 聖真, 高橋 啓司, 三浦 雄一郎, 福島 秀晃 (伏見岡本病院リハビリテーション科)

【はじめに】好酸球性筋膜炎の初発症状は手指,足趾を除く四肢の疼痛,こわばり,腫脹,全身倦怠感,発熱である.類似疾患の強皮症とは異なり,筋膜周囲のリンパ球,組織球,好酸球の浸潤によって,筋膜が肥厚して線維化が生じて関節可動域が制限される.また好酸球性筋膜炎に関するリハビリテーション(以下リハ)の症例報告は少なく,効果も不明である.今回好酸球性筋膜炎に対して筋膜・皮下組織へのリハアプローチを実施し,効果を検討したので報告する.
【症例紹介】50歳代の男性,主訴は肩や肘,手首が動かしにくい.すぐに疲れてしまう.Hopeは職場復帰である.現病歴はX年Y月の仕事後に手足の腫脹と動かしにくさを訴え,A病院に検査入院し,好酸球性筋膜炎と診断される.X年Y+1月にリハ目的で当院を受診.外来リハを開始する.当院での初期評価時における関節可動域検査(以下ROM-T):肩関節屈曲右150°左140°,前腕回内右70°左70°,回外右60°,左75°手関節掌屈右55°左65°,背屈右40°,左50°であった.徒手筋力テスト(以下MMT):上肢・手指5レベルと著明な低下は認めなかった.触診:体幹背側と両側上腕・前腕部に皮膚の伸張性低下と皮下組織の滑走性低下を認めた. 上肢機能評価では簡易上肢機能検査(以下STEF)とHand20,QuickDASHを用いて実施した. STEF:右95点,左94点だった.Hand20:41.5点で頭上に鞄を乗せる,力仕事,趣味活動で著明な低下を認める.QuickDASH:18.2点でDisabilityの動作項目は全て「2」,疼痛項目は「1」であった.
【作業療法】週3回の頻度で40分間の作業療法を実施した.作業療法前には両側上肢の皮膚の伸張性向上と筋膜・皮下組織の弛緩を目的にホットパックや渦流浴を10~15分行った.作業療法では,両側上肢の筋膜・皮下組織の伸張性を改善するために静的ストレッチングと滑走性を改善するために関節可動域訓練(以下ROMex)を実施した.
【結果】3ケ月間後,ROM-Tは肩関節屈曲右170°左170°,前腕回内右90°左90°,回外右90°左90°,手関節掌屈右70°,左70°,背屈右60°,左60°となった.触診では皮膚の伸張性と皮下組織の滑走性の向上を認めた.また,上肢機能評価でもSTEFで左右98点と高い得点となり,Hand20:31.5点ですべての項目と改善された.QuickDASH:18.2点と維持した.
【考察】好酸球性筋膜炎は四肢の疼痛やこわばり,腫脹が多く,同時に全身倦怠感,発熱を認める.また,疾患の特性上筋膜の炎症であり,筋力低下が生じることは考えにくい.そのため,関節可動域の改善を目的に温熱療法,ROMex・サンディング・ワイピングを実施した.関節可動域は静的ストレッチングとROMexを行い,筋と筋膜・皮下組織の滑走性が改善したことで関節可動域が向上したと考える. 上肢機能では筋と筋膜・皮下組織の滑走性の改善により関節可動域が向上したことで上肢機能の改善に繋がったと考える.上記の結果から好酸球性筋膜炎に対してのリハアプローチは筋膜・皮下組織の滑走性を改善させるROMexが有効であると示唆される.