[PH-10-6] メタ認知トレーニングに参加した長期入院統合失調症患者の生活の変化
【はじめに】メタ認知トレーニング(以下MCT)は,統合失調症に対しての有効性が示されているが,長期入院患者に対する実践や,生活や作業に対しての変化に言及している研究は少ない.
【目的】長期入院統合失調症患者がMCTに参加することでの体験の振り返りや,生活の変化を通してMCTの有効性を考察する.
【対象】当院に長期入院している統合失調症患者で,MCTに参加した2名を対象とした.MCTは対象者を含む8名の参加者と作業療法士2,3名で,各モジュール1時間を週一回,8モジュール×2クールを実施した.なお本発表は対象者にMCT開始前に説明を行い書面にて同意を得た.また,当院の倫理審査を受けている.
【方法】対象者に対し,MCT参加後に,質問紙を用いて作業療法士と共に振り返りを実施した.質問紙は①MCT 参加者満足度評価票1),②MCT への意見1)を用いた.①MCT参加者満足度評価票は1:そう思わない~5:まったくその通りだと思う,の5件法でMCT参加の振り返りについて回答を求めた.②MCTへの意見は,役に立つ点や自分にもあてはまる点,わかりにくかった点について自由記載で回答を求めた.加えて,③面談にて受けて良かった点,生活で変わった点,感じたことや思ったことの3点を自由記載にて聴取した.また,MCT実施前後のOTプログラムや病棟生活での変化を担当者に聴取した.
【結果】A氏,統合失調症,70歳代男性,現在入院期間21年,MCT参加率は16/16.
①MCT-J 参加者満足度評価票では,5点中平均4.3となった.②MCT-J への意見,③面談では,“自身の生活がよくなった気がする”と回答した.役に立つ点として“みんなで話したこと.皆でスライドを見たこと.”を挙げた.MCT中は,発言は少ないが,スライドに注意を向けており,意見を求められると場面に沿った発言をした.MCT参加前は,A氏は詰将棋や見学など他者とのかかわりの少ない作業を行っていた.集団での料理プログラムでは作業へのこだわりが強く,他者との協調には援助を要していた.MCT参加後,A氏は経験のあった革細工を再開し.作業療法士に相談しながら本人のオリジナルの作品作りを行った.料理プログラムでは,状況を見て,他者へのサポートを行うことが増えていた.
B氏,統合失調症,40歳代男性,現在入院期間4年,MCT参加率は14/16.
①MCT-J 参加者満足度評価票では,全てに1と回答した.②MCT-J への意見,③面談でも“意味がない”“なんの役にも立たなかった”と回答した.MCT中は,閉眼しうつむいていることが多く,意見を求められると“分からない”と発言していた.MCT参加前は,自己中心的な言動が多く,自身の慣れた創作作業を中心にOTに参加していた.MCT参加後は作業療法士と決められた枠組みの中で,新たにプラモデルを始めた.以前は確信的,妄想的な発言が多く聞かれたが,現実検討を促すような発言に対し,受け入れる機会が増加した.
【考察】A氏とB氏は対照的な振り返りをしていたが,今回のMCTをきっかけに,集団場面への適応的な参加や現実的な内省といった変化が見られた.他者の経験やスライドをモデルとして考え方の幅を広げ,自身の生活に汎化させたと考えられる.MCTは長期入院により,生活がパターン化している対象者にとって,他者と共に生活を振り返り,病的な体験を受容,共有することで,変化のきっかけとなったと考えられる.
【結論】長期入院統合失調症患者が集団での治療構造を持つMCTに参加することで,生活場面の変化や作業変容に繋がることが示唆された.
【参考文献】1)一般社団法人MCT-J Network http://mct-j.jpn.org/kaiin/kaiintop.html
【目的】長期入院統合失調症患者がMCTに参加することでの体験の振り返りや,生活の変化を通してMCTの有効性を考察する.
【対象】当院に長期入院している統合失調症患者で,MCTに参加した2名を対象とした.MCTは対象者を含む8名の参加者と作業療法士2,3名で,各モジュール1時間を週一回,8モジュール×2クールを実施した.なお本発表は対象者にMCT開始前に説明を行い書面にて同意を得た.また,当院の倫理審査を受けている.
【方法】対象者に対し,MCT参加後に,質問紙を用いて作業療法士と共に振り返りを実施した.質問紙は①MCT 参加者満足度評価票1),②MCT への意見1)を用いた.①MCT参加者満足度評価票は1:そう思わない~5:まったくその通りだと思う,の5件法でMCT参加の振り返りについて回答を求めた.②MCTへの意見は,役に立つ点や自分にもあてはまる点,わかりにくかった点について自由記載で回答を求めた.加えて,③面談にて受けて良かった点,生活で変わった点,感じたことや思ったことの3点を自由記載にて聴取した.また,MCT実施前後のOTプログラムや病棟生活での変化を担当者に聴取した.
【結果】A氏,統合失調症,70歳代男性,現在入院期間21年,MCT参加率は16/16.
①MCT-J 参加者満足度評価票では,5点中平均4.3となった.②MCT-J への意見,③面談では,“自身の生活がよくなった気がする”と回答した.役に立つ点として“みんなで話したこと.皆でスライドを見たこと.”を挙げた.MCT中は,発言は少ないが,スライドに注意を向けており,意見を求められると場面に沿った発言をした.MCT参加前は,A氏は詰将棋や見学など他者とのかかわりの少ない作業を行っていた.集団での料理プログラムでは作業へのこだわりが強く,他者との協調には援助を要していた.MCT参加後,A氏は経験のあった革細工を再開し.作業療法士に相談しながら本人のオリジナルの作品作りを行った.料理プログラムでは,状況を見て,他者へのサポートを行うことが増えていた.
B氏,統合失調症,40歳代男性,現在入院期間4年,MCT参加率は14/16.
①MCT-J 参加者満足度評価票では,全てに1と回答した.②MCT-J への意見,③面談でも“意味がない”“なんの役にも立たなかった”と回答した.MCT中は,閉眼しうつむいていることが多く,意見を求められると“分からない”と発言していた.MCT参加前は,自己中心的な言動が多く,自身の慣れた創作作業を中心にOTに参加していた.MCT参加後は作業療法士と決められた枠組みの中で,新たにプラモデルを始めた.以前は確信的,妄想的な発言が多く聞かれたが,現実検討を促すような発言に対し,受け入れる機会が増加した.
【考察】A氏とB氏は対照的な振り返りをしていたが,今回のMCTをきっかけに,集団場面への適応的な参加や現実的な内省といった変化が見られた.他者の経験やスライドをモデルとして考え方の幅を広げ,自身の生活に汎化させたと考えられる.MCTは長期入院により,生活がパターン化している対象者にとって,他者と共に生活を振り返り,病的な体験を受容,共有することで,変化のきっかけとなったと考えられる.
【結論】長期入院統合失調症患者が集団での治療構造を持つMCTに参加することで,生活場面の変化や作業変容に繋がることが示唆された.
【参考文献】1)一般社団法人MCT-J Network http://mct-j.jpn.org/kaiin/kaiintop.html