第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-12] ポスター:精神障害 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PH-12-6] 脳卒中後うつ病者のリハビリテーションの捉え方について

三川 年正, 田邉 浩文 (湘南医療大学保健医療学部)

はじめに
 脳卒中後のうつ病(Post Stroke Depression以下PSD)は脳卒中罹患者のおおよそ30%前後にみられる疾患であるが,PSDの好発時期は身体機能の回復が臨める時期と重なっている.リハビリテーションのスタッフに対する調査では,PSDに対して精神症状へのアプローチは積極的には行っていないが,様々な対応の工夫はしていると報告している.リハビリテーションのスタッフは抑うつの状態の脳卒中の罹患者のリハビリテーションに対する意識を把握する必要があるのではないかと考えた.そこで今回,脳卒中罹患後に抑うつ状態を経験された方を対象に,リハビリテーションをどのように捉えていたのかを明らかにする事を目的に調査を実施した.
方法
 研究対象者は脳血管障害罹患者でうつ,抑うつもしくはそれに使い状態の経験がある方とした.調査は「脳血管障害を発症し,抑うつ状態の時のリハビリテーションに対しての捉え方」について,電話を用いた半構造化インタビューにて質的なデータを収集した.データ解析にはBerelsonの内容分析を使用し機能的に分析した.
 なお,本研究は湘南医療大学倫理委員会にて承認を受けた後に実施した.(2019年4月16日承認,承認番号医大研倫第19-002号)また,本研究に開示すべき利益相反関連事項は存在しない.
結果
 同意した対象者は26名であり,合計調査時間は238分20秒(3時間58分20秒)であった.設問に関係ある言葉を168単語抽出し,類似した単語から28の記録単位を抽出した.その28の記録単位から7の小カテゴリ,さらに3の大カテゴリが抽出された.以下,大カテゴリを【 】,小カテゴリを[ ]で表記する.
1)【自分自身に対して】68(40.4%)
 [目標や比較対象] 26(15.4%),[自分の身体] 24(14.3%), [自分の気持ちの持ち方] 18(10.7%).
2)【リハビリテーションのスタッフに対して】57(33.9%)
[スタッフの言動・態度] 35(20.9%),[スタッフとの関係性] 22(13.1%).
3)【リハビリテーションについて】
 [リハビリテーション自体が気分の変容] 30(17.9%),[リハビリテーションの制度] 13(7.7%).
考察
 今回の調査において,最も多い大カテゴリは【自分自身について】であり,これは脳卒中後の抑うつ状態においても,リハビリテーションは能動的に行うものと捉えているのではないだろうか.次に多い大カテゴリは【リハビリテーションのスタッフに対して】であったが,リハビリテーションのスタッフに救われたとの記録単位はあるものの,スタッフの行動や言動が抑うつを増したとの記録単位もみられており,我々スタッフは対象者に対する行動や言動には常に配慮する必要があると考える.また,【リハビリテーションについて】では,対象者はリハビリテーションの回復の程度が乏しい場合,それが気分の落ち込みにつながるとのことであった.
 リハビリテーションのスタッフは対象者がリハビリテーションに対して継続的に取り組めるよう,自分自身の影響を考慮しながら,それに加えて対象者の意欲を維持する為に,具体的な目標を設定し,現在の状況を伝達していく事が必要と考える.