第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-12] ポスター:精神障害 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PH-12-8] Co-prodctionに基づく「訪問型作業療法におけるクリニカルラダー」の項目開発

清家 庸佑1, 松岡 太一2 (1.東京工科大学医療保健学部リハビリテーション学科, 2.福井記念病院リカバリー支援部)

【はじめに】地域包括ケアシステムの構築において,精神障害者の地域生活支援の拡充が求められる中で訪問看護を始めとするアウトリーチが重要視されている.精神科アウトリーチにおいて作業療法士は多職種連携の中で専門性を発揮しながら当事者の地域生活を支援することが必要である一方,その教育システムの整備は十分でない.近年,研究,教育,政策作りの場面においては,その決定に当事者参加を促す共同創造(Co-prodction)の重要性がいわれている.しかし,精神科アウトリーチにおいてサービスユーザーが求める支援のあり方や作業療法の専門性に基づいた教育システムは十分に構築されていない.
【目的】本研究では,作業療法士と精神科訪問看護ユーザーの共同設計に基づく「精神科訪問型作業療法に対応したクリニカルラダー」の項目を作成する.本ラダーの開発は,ユーザーの求める支援者教育に加え作業療法の専門性を有した支援者教育の発展に貢献できる.
【方法】本研究は2つの研究で構成された.研究1では,「精神科アウトリーチでの作業療法実践」および「クリニカルラダー」に関する文献をデータベース検索,ハンドサーチにより収集し,その内容から項目プールを作成した.研究2では,作業療法士,精神科訪問看護ユーザーを対象にDelphi法をにて内容妥当性の検証を行なった.作業療法士の選出基準は,①精神障害領域に10年以上従事する者,②現在地域生活支援の場に従事している者,③アウトリーチ支援の経験を有する者,④地域在住精神障害者への臨床研究を行ったことがある者,⑤Delphi法による質的研究に参加したことがある者の全ての条件を満たす者とした.ユーザーの選出基準は,①研究協力に同意した者,②精神科訪問看護を利用したことのある者,③読字による書面内容の理解が可能な者の全ての条件を満たす者とした.妥当性の判断基準はI-CVI 0.80以上,S-CVI/AV 0.90以上とした.修正が必要と判断した項目はインタビューにて妥当でないと判断した理由について聴取し,その内容をもとに修正を行い再調査を行なった.本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を受けるとともに,全対象者から同意を得た上で実施した.
【結果】研究1では,「精神科アウトリーチでの作業療法実践」に関する文献は31件,「クリニカルラダー」に関する文献は10件収集された.収集された文献を基に項目の抽出,整理を行った.その結果「社会的責任」「専門的知識」「実践技能」「マネジメント」「協業」の5領域57項目の項目プールが作成された.
 研究2では,研究1で作成された項目について,作業療法士(4名),精神科訪問看護ユーザー(6名)を対象に内容妥当性の検討を行なった.合計3回の検討で,修正9項目,削除1項目,追加1項目となり,最終的に5領域57項目の項目が適合基準を満たした(I-CVI全項目 0.80以上,S-CVI/Ave 0.98).
【考察】本研究は,項目抽出の段階において,精神科アウトリーチでの作業療法実践に関する文献や,他職種も含めた既存のクリニカルラダーの項目を広く整理することで,広域な視点を有した項目プールが作成されたと考える.項目の決定段階においては,サービスユーザーと共同創造することで,当事者の経験や価値観を基にしたニーズを項目に反映することが可能となった.また,十分な現場経験を有す作業療法士に調査を行うことで,作業療法の専門性に基づいた支援を多職種連携の中で実施するための教育項目が選出されたと考える.今後は本ラダーを臨地で実際に使用を行いながらその有用性を検討する.