[PH-2-5] Center for Epidemiologic Studies Depression Scaleのスマートフォン版と紙版のスコアの違い
【はじめに】
現在, 患者報告式アウトカム(PRO)の利用は世界中で拡大しており, メンタルヘルス分野でも広く利用されている. 様々なメンタルヘルスのためのPROが存在するが, 中でもCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)は抑うつ症状を測定するためのPROとして臨床研究,疫学研究,地域の一般住民の診断スクリーニングのいずれにおいても広く用いられている. また, 重要な点として, メンタルヘルス領域のインターネットを使用した研究の増加に伴いCES-Dは, 電子患者報告アウトカム(ePRO)として利用されることが増えてきている. CES-DをePROとして使用するにあたり, 様々なデバイスの利用が想定されるが, 中でもスマートフォンは他のPCやタブレットなどのデバイスと比較して, 明確な優位性(多くの人が常に持ち歩き, どこでも使用可能)を持っている. しかし, これまでのシステマティックレビューでは, CES-Dをスマートフォンで使用した場合の信頼性については調査されておらず, 十分な検討はなされていない. そこで, 本研究ではCES-Dの紙版とスマートフォン版の測定同等性を検証することを目的とした.
【対象・方法】
本研究は, CES-Dの紙版とスマートフォン版のフォーマット間の同等性を評価するために,無作為化クロスオーバーデザインを用いて実施された. 日本語を母国語とし, スマートフォンを持っている18歳以上の参加者100名を募集した. 紙版またはスマートフォン版のCES-Dに記入する順番(紙版が先か, スマートフォン版が先か)は無作為に決定された. 潜在的な想起効果や持ち越し効果を軽減するため2つのアンケートを記入する間隔は1週間とした. 統計解析では, 紙版とスマートフォン版の各尺度の同等性を確認するため, この種の同等性研究で最もよく用いられる統計指標の一つである二元配置ランダム効果モデルに基づくクラス内相関係数(ICCagreement)とその95%信頼区間を算出した. また, 本研究は倫理委員会によって承認され, 参加者全員が書面によるインフォームドコンセントを受けた.
【結果】参加資格を満たした100名のうち, 100名(平均年齢 = 19.86歳, SD = 1.08, 男性=23%)が紙版とスマートフォン版のアンケートに回答し, 完全なデータを提供した. 紙版先行群では, 50人がまず紙版のCES-Dに回答した. スマートフォン先行群では, 50人が最初にスマートフォン版のCES-Dに回答した. CES-Dの紙版とスマートフォン版のICCagreementは 0.76(95%CI 0.66-0.83)であった. また, CES-DスコアのCronbach's alphaは, スマートフォン版と紙版でそれぞれ0.82と0.81であった.
【考察】本研究では, スマートフォン版と紙版で評価したCES-Dの同等性を評価した. その結果, 良好な同等性を有することが示唆された. 加えて, 良好な部一貫性を有するだけでなく, 紙版CES-Dと同等の内部一貫性も有していることが示唆された. この結果は, スマートフォン版CES-Dが紙版CES-Dと同等の自己評価をもたらすことを示唆するものである. したがって, CES-Dはスマートフォン版での使用が適切であり, 臨床や研究の場において必要に応じて紙版とスマートフォン版を選択できるような応用が可能である. いくつかの先行研究ではCES-Dのパソコン版やタブレット版は紙版と同等の自己評価をもたらすことを示唆した. しかし,スマートフォンの潜在的な利点(簡単でどこにでもあるアクセス性)を考慮すると, 少なくともスマートフォン版のCES-Dは, パソコンやタブレットベースのCES-Dの有望な代替戦略となり得るだろう.
現在, 患者報告式アウトカム(PRO)の利用は世界中で拡大しており, メンタルヘルス分野でも広く利用されている. 様々なメンタルヘルスのためのPROが存在するが, 中でもCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)は抑うつ症状を測定するためのPROとして臨床研究,疫学研究,地域の一般住民の診断スクリーニングのいずれにおいても広く用いられている. また, 重要な点として, メンタルヘルス領域のインターネットを使用した研究の増加に伴いCES-Dは, 電子患者報告アウトカム(ePRO)として利用されることが増えてきている. CES-DをePROとして使用するにあたり, 様々なデバイスの利用が想定されるが, 中でもスマートフォンは他のPCやタブレットなどのデバイスと比較して, 明確な優位性(多くの人が常に持ち歩き, どこでも使用可能)を持っている. しかし, これまでのシステマティックレビューでは, CES-Dをスマートフォンで使用した場合の信頼性については調査されておらず, 十分な検討はなされていない. そこで, 本研究ではCES-Dの紙版とスマートフォン版の測定同等性を検証することを目的とした.
【対象・方法】
本研究は, CES-Dの紙版とスマートフォン版のフォーマット間の同等性を評価するために,無作為化クロスオーバーデザインを用いて実施された. 日本語を母国語とし, スマートフォンを持っている18歳以上の参加者100名を募集した. 紙版またはスマートフォン版のCES-Dに記入する順番(紙版が先か, スマートフォン版が先か)は無作為に決定された. 潜在的な想起効果や持ち越し効果を軽減するため2つのアンケートを記入する間隔は1週間とした. 統計解析では, 紙版とスマートフォン版の各尺度の同等性を確認するため, この種の同等性研究で最もよく用いられる統計指標の一つである二元配置ランダム効果モデルに基づくクラス内相関係数(ICCagreement)とその95%信頼区間を算出した. また, 本研究は倫理委員会によって承認され, 参加者全員が書面によるインフォームドコンセントを受けた.
【結果】参加資格を満たした100名のうち, 100名(平均年齢 = 19.86歳, SD = 1.08, 男性=23%)が紙版とスマートフォン版のアンケートに回答し, 完全なデータを提供した. 紙版先行群では, 50人がまず紙版のCES-Dに回答した. スマートフォン先行群では, 50人が最初にスマートフォン版のCES-Dに回答した. CES-Dの紙版とスマートフォン版のICCagreementは 0.76(95%CI 0.66-0.83)であった. また, CES-DスコアのCronbach's alphaは, スマートフォン版と紙版でそれぞれ0.82と0.81であった.
【考察】本研究では, スマートフォン版と紙版で評価したCES-Dの同等性を評価した. その結果, 良好な同等性を有することが示唆された. 加えて, 良好な部一貫性を有するだけでなく, 紙版CES-Dと同等の内部一貫性も有していることが示唆された. この結果は, スマートフォン版CES-Dが紙版CES-Dと同等の自己評価をもたらすことを示唆するものである. したがって, CES-Dはスマートフォン版での使用が適切であり, 臨床や研究の場において必要に応じて紙版とスマートフォン版を選択できるような応用が可能である. いくつかの先行研究ではCES-Dのパソコン版やタブレット版は紙版と同等の自己評価をもたらすことを示唆した. しかし,スマートフォンの潜在的な利点(簡単でどこにでもあるアクセス性)を考慮すると, 少なくともスマートフォン版のCES-Dは, パソコンやタブレットベースのCES-Dの有望な代替戦略となり得るだろう.