第57回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

精神障害

[PH-3] ポスター:精神障害 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PH-3-4] 自殺企図のため搬送された10代患者へチーム介入を行った一例

岸 雪枝1, 吉村 知穂2, 上村 容子3, 松永 寿人2, 道免 和久4 (1.兵庫医科大学病院リハビリテーション技術部, 2.兵庫医科大学精神科神経科学講座, 3.兵庫医科大学病院医療社会福祉部, 4.兵庫医科大学リハビリテーション医学講座)

【はじめに】我が国の自殺死亡率は10代で増加しており,第4次自殺総合対策大綱(2022)では子どもの自殺対策の更なる推進・強化が掲げられている.当院では精神疾患診断治療初回加算等の認可を受け,それに伴い精神科リエゾンチーム(以下,リエゾン)では2022年10月より精神科医と作業療法士(以下,OTR)が中心となり自殺企図者の対応を体系化した.今回,当院へ搬送された10代の症例に対し複数のチームでの介入が効果的であったため報告する.なお,当院規定に基づき書面にて同意を得ている.
【症例紹介】10代女性.両親と姉との4人暮らし.母はうつ病のため通院中.小学5年頃よりリストカットを行なっていたが受診歴はない.X年Y月Z日,母と口論となり2階より飛び降り当院に救急搬送された.L4破裂骨折,両側踵骨骨折,左橈骨遠位端骨折,骨盤輪骨折と診断.救命救急センター(以下,救命)よりリエゾンおよび子どもと家族の支援チーム(以下,CPT)へ介入依頼があった.なお,救急隊から市の自殺未遂者支援担当者へ連絡され,警察から児童相談所へ通告がされている.
【経過】Z+1日,救命,リエゾン,CPTでのカンファレンスを実施.それぞれのチームの役割を明確化し,救命では身体加療,リエゾンでは本人の自殺リスクの評価と情報収集,CPTは虐待の観点から本人および両親への面談と地域連携を行うこととなった.Z+2日,OTRは救急医師から母へのインフォームドコンセント(IC)に同席し,受傷時の詳細確認と介入の同意を得た.Z+6日よりOTRが本人への介入開始.学校や家庭内でのトラブルがあり,数年前から持続的な抑うつ気分や不安をかかえ,リストカットをしていたが家族に精神科受診を反対され,友人関係も限定的で学校や家に居場所がなかったことなどを語り,再企図のリスク因子を複数確認した.コミュニケーション能力や作業遂行能力に大きな問題は見られなかったため自殺の防御因子の強化を目的にストレスマネジメント方法や相談相手などを本人と検討したところ,次第に退院後の生活への期待も述べるようになった.また,定期的に全チームでのカンファレンスを実施し,それぞれの進捗の確認と課題を整理した.Y+1月要保護児童対策地域協議会を実施し,学校や精神科も含めた地域サポートについて検討を行った.CPTのソーシャルワーカーとOTRが協力して地域サポートについての細かな調整を行いY+2月に自宅退院となった.
【考察】この症例は家庭や学校で思い通りにならない経験が重なり自己効力感が低下し自殺企図に至った.若年者では生活範囲狭く,問題解決方法も限定的である.今回,OTRが介入することで,生活背景や今後の目標設定が具体的となり,本人の強みを活かしながら問題解決方法を広げることができた.自殺未遂者には多職種チームにより患者を支援していく必要がある(2015精神科救急医療ガイドライン).今回,複数のチームで連携したことで本症例や家族が抱えている課題を多面的に評価し,効果的な介入を行い,スムーズに地域へつなぐことができた.また,多くのメンバーで情報共有をし,ディスカッションを重ねることで,直接介入するメンバーの不安が軽減した.再企図防止にはこのようにチーム連携をしての介入が有効であると考えた.