[PH-3-7] マインドフルネス瞑想を取り入れた作業療法介入によるうつ病患者の変化
【序論】
マインドフルネスは,うつ病の重症度を下げ,心理社会的側面にも有効であることが実証されている(SG. Hofmann,2010).また近年,メンタルヘルスにおける治療目標として,リカバリーの概念が重要視されている(P. Roberge,2022).
【目的】
マインドフルネス瞑想を取り入れた作業療法プログラム(以下,MOT)がうつ病患者の症状改善およびパーソナルリカバリー促進に寄与したと考えられたため報告する.
【方法】
症例は40歳代後半の女性.夫と2人暮らし.病前性格はおとなしく人に意見を言えなかった.高校卒業後,銀行に5年勤務し結婚後に退職した.数年前から飲食店で週4日パート勤務をしていた.X-2年Y-9月,コロナ禍でパート時間が削減された頃から,思考がまとまらず決断ができなくなった.X-2年Y-5月,ご近所トラブルで相手住人に会わないように生活し始め,自責の念や不安が高まり,Aクリニックで薬物療法が開始された.2ヶ月後に娘の交際相手について悩み,不眠に対して睡眠薬が処方された.X年Y-2月,本人希望にて当院当科を初診.抑うつ気分,思考制止,集中力低下,疲労感があり,「外に出ることも人に会うことも怖い」と述べた.X年Y-1月,症状継続しており任意入院となる.ハミルトンうつ病評価尺度(以下,HAM-D)は20点であった.X年Y月,自主性・活動意欲の向上を目的にOTが処方された.初回評価時,「過去の嫌な出来事をぐるぐる考えてしまいしんどい」,「~しなければ・するべき」等の発言が目立ち,「もともと趣味がない」と述べた.OT評価は,マイナス面として①反芻思考を止められず抑うつ・不安状態になること,②退院後は入院前と同じ環境に戻る予定であること,③趣味がないこと,プラス面はOT参加に前向きであることを挙げた.介入方針は①の認知面と②の対人交流に関してはMOT,③は個人創作活動による改善を目指すとした.評価は,HAM-D,社交不安尺度(以下,LSAS-J),日本語版リカバリープロセス尺度(以下,QPR-J)を用い,介入開始時((0M),退院時(1M),退院2ヶ月後(3M)に行った.また,性格傾向の変化は人格検査(以下,NEO-FFI)を用いて0Mと3Mに評価した.本研究は当院の倫理委員会にて承認され,個人情報を保護し,発表に際して本人の同意を得ている.
【結果】
入院中,個別MOTに4回,個人創作活動に15回,病棟ストレッチに9回参加した.退院後も外来OT(個人創作活動)を週2日継続した.薬物療法は入院時に調整された内容から変更は無かった.評価尺度の変化を0M,1M,3Mの順で示す.HAM-Dは11点,6点,2点,LSAS-J(不安)は55点,42点,30点,LSAS-J(回避)は52点,43点,25点で症状改善した.QPR-Jは37点,50点,54点でリカバリーの促進を示した.NEO-FFIでは神経症傾向が軽減していた.創作活動は革細工を気に入り,退院後は自宅で革細工のデザインや配色を考えて下書きをする時間を持つようになった.外来OTの帰りにスーパーで買い物をし,無理のない範囲で家事ができ,近隣住民を避けずに生活できるようになった.
【考察】
マインドフルネスでは「浮かんでくる考えを判断せず観察できる」ようになるとで嫌なことの反芻が抑制される(van den Hurk PA,2011)と考えられている.今回の症状改善やリカバリー促進について,個人創作活動との相乗効果も否定できないが,入院中からマインドフルネス OT を取り入れることは有意義である可能性が示された.
マインドフルネスは,うつ病の重症度を下げ,心理社会的側面にも有効であることが実証されている(SG. Hofmann,2010).また近年,メンタルヘルスにおける治療目標として,リカバリーの概念が重要視されている(P. Roberge,2022).
【目的】
マインドフルネス瞑想を取り入れた作業療法プログラム(以下,MOT)がうつ病患者の症状改善およびパーソナルリカバリー促進に寄与したと考えられたため報告する.
【方法】
症例は40歳代後半の女性.夫と2人暮らし.病前性格はおとなしく人に意見を言えなかった.高校卒業後,銀行に5年勤務し結婚後に退職した.数年前から飲食店で週4日パート勤務をしていた.X-2年Y-9月,コロナ禍でパート時間が削減された頃から,思考がまとまらず決断ができなくなった.X-2年Y-5月,ご近所トラブルで相手住人に会わないように生活し始め,自責の念や不安が高まり,Aクリニックで薬物療法が開始された.2ヶ月後に娘の交際相手について悩み,不眠に対して睡眠薬が処方された.X年Y-2月,本人希望にて当院当科を初診.抑うつ気分,思考制止,集中力低下,疲労感があり,「外に出ることも人に会うことも怖い」と述べた.X年Y-1月,症状継続しており任意入院となる.ハミルトンうつ病評価尺度(以下,HAM-D)は20点であった.X年Y月,自主性・活動意欲の向上を目的にOTが処方された.初回評価時,「過去の嫌な出来事をぐるぐる考えてしまいしんどい」,「~しなければ・するべき」等の発言が目立ち,「もともと趣味がない」と述べた.OT評価は,マイナス面として①反芻思考を止められず抑うつ・不安状態になること,②退院後は入院前と同じ環境に戻る予定であること,③趣味がないこと,プラス面はOT参加に前向きであることを挙げた.介入方針は①の認知面と②の対人交流に関してはMOT,③は個人創作活動による改善を目指すとした.評価は,HAM-D,社交不安尺度(以下,LSAS-J),日本語版リカバリープロセス尺度(以下,QPR-J)を用い,介入開始時((0M),退院時(1M),退院2ヶ月後(3M)に行った.また,性格傾向の変化は人格検査(以下,NEO-FFI)を用いて0Mと3Mに評価した.本研究は当院の倫理委員会にて承認され,個人情報を保護し,発表に際して本人の同意を得ている.
【結果】
入院中,個別MOTに4回,個人創作活動に15回,病棟ストレッチに9回参加した.退院後も外来OT(個人創作活動)を週2日継続した.薬物療法は入院時に調整された内容から変更は無かった.評価尺度の変化を0M,1M,3Mの順で示す.HAM-Dは11点,6点,2点,LSAS-J(不安)は55点,42点,30点,LSAS-J(回避)は52点,43点,25点で症状改善した.QPR-Jは37点,50点,54点でリカバリーの促進を示した.NEO-FFIでは神経症傾向が軽減していた.創作活動は革細工を気に入り,退院後は自宅で革細工のデザインや配色を考えて下書きをする時間を持つようになった.外来OTの帰りにスーパーで買い物をし,無理のない範囲で家事ができ,近隣住民を避けずに生活できるようになった.
【考察】
マインドフルネスでは「浮かんでくる考えを判断せず観察できる」ようになるとで嫌なことの反芻が抑制される(van den Hurk PA,2011)と考えられている.今回の症状改善やリカバリー促進について,個人創作活動との相乗効果も否定できないが,入院中からマインドフルネス OT を取り入れることは有意義である可能性が示された.