[PH-4-1] 回復期病棟における精神的問題の疑いがある患者への対応について
【はじめに】
一般的にICD-10診断における主要な精神障害の生涯有病率ではうつ病はじめとする気分障害6.9%,パニック障害や全般性不安障害を含む神経症性・ストレス性障害5.4%といわれている.一方,脳卒中後うつ病(Post-Stroke Depression:以下PSD)の発症頻度は15~60%と幅広いが,一般的な精神疾患と比較しても発症率が高いことがわかる.このことから当院に身体機能回復を目的に入院してくる患者のなかでも精神的問題を有している可能性が少なくないことが予測される. そこで本研究では,当院リハビリテーションスタッフが精神的問題のある患者への経験や対応を明らかにすることを目的する.現状の把握をすることで課題の抽出が可能となり,身体機能面だけでなく精神機能面も考慮した多方向からのアプローチによる患者の回復促進及び,より良いリハビリテーション提供に繋がると考える.
【方法】
研究対象は当院回復期リハビリテーション科に所属する国家資格有する作業療法士,理学療法士とした.調査用紙には経験年数と精神的問題の疑いがある患者への対応について回答を求めた.回答は自記式自由記載で構成し,データ解析にはKJ法を用いて質的に分析を行った. 倫理的配慮として, 本研究は無記名で行うため,調査用紙の投函後は本人の特定が困難であることを説明.投函をもって同意とみなし,投函後の同意撤回は困難となる事も付記した.また,本研究はふれあい横浜ホスピタル倫理員会にて承認を受けた後に実施した(2022年9月13日承認).本研究には開示すべき利益相反関連事項はない.
【結果】
配布した調査票は25通であり回収された調査票は24通.そのうち2通は無効回答であり,解析対象の調査票は22通とし,回収率は88.0%であった.また,調査対象者の平均経験年数は3.37年であり,5年未満が19名,5年以上が3名であった.
回収された回答より123のラベルが抽出され,分析対象とした結果,20の小カテゴリ,さらに4つの大カテゴリが抽出された.4つの大カテゴリはそれぞれ【患者の精神面によるリハ介入への影響因子】 【患者への直接的な対応】【患者への間接的な対応】【セラピスト自身の振り返り(反省)】と命名した.
【考察】
大カテゴリのひとつである,【患者の精神面によるリハ介入への影響因子】では患者の感情失禁や暴言暴力などによる訓練拒否や非協力などリハ介入に影響がある要因から抽出された.当院回復期病棟においても,全ての有効回答で精神的問題に対応をした経験があり, 領域やリハビリ対象疾患を問わず,患者の精神的問題への対応に直面する場面があることが明らかとなった.また対応には,傾聴やリハの説明,訓練内容の工夫など【患者への直接的な対応】と介入場所や時間,担当スタッフなど環境調整.家族や他職種との連携などの【患者への間接的な対応】を行っていることも明らかとなった.【セラピスト自身の振り返り(反省)】は自分自身の対応への迷いや知識不足を感じたなど自責の反省と,ラポール形成の重要さを再確認したとの回答から抽出された.実際に当院では身体的介入や知識の勉強会は実施されているが精神的な対応を学ぶ機会は少ない.そのため資格習得後の学習の場の乏しさや,対応に不安や迷いが生じているのではないだろうか.今後はこのような情報を持ち寄り,ケースタスディや勉強会を通して各々が対応を向上していく必要があると思われる.そのためにも,領域を問わず精神的問題への対応の必要性について,認識を高めていくことが重要であると考える.
一般的にICD-10診断における主要な精神障害の生涯有病率ではうつ病はじめとする気分障害6.9%,パニック障害や全般性不安障害を含む神経症性・ストレス性障害5.4%といわれている.一方,脳卒中後うつ病(Post-Stroke Depression:以下PSD)の発症頻度は15~60%と幅広いが,一般的な精神疾患と比較しても発症率が高いことがわかる.このことから当院に身体機能回復を目的に入院してくる患者のなかでも精神的問題を有している可能性が少なくないことが予測される. そこで本研究では,当院リハビリテーションスタッフが精神的問題のある患者への経験や対応を明らかにすることを目的する.現状の把握をすることで課題の抽出が可能となり,身体機能面だけでなく精神機能面も考慮した多方向からのアプローチによる患者の回復促進及び,より良いリハビリテーション提供に繋がると考える.
【方法】
研究対象は当院回復期リハビリテーション科に所属する国家資格有する作業療法士,理学療法士とした.調査用紙には経験年数と精神的問題の疑いがある患者への対応について回答を求めた.回答は自記式自由記載で構成し,データ解析にはKJ法を用いて質的に分析を行った. 倫理的配慮として, 本研究は無記名で行うため,調査用紙の投函後は本人の特定が困難であることを説明.投函をもって同意とみなし,投函後の同意撤回は困難となる事も付記した.また,本研究はふれあい横浜ホスピタル倫理員会にて承認を受けた後に実施した(2022年9月13日承認).本研究には開示すべき利益相反関連事項はない.
【結果】
配布した調査票は25通であり回収された調査票は24通.そのうち2通は無効回答であり,解析対象の調査票は22通とし,回収率は88.0%であった.また,調査対象者の平均経験年数は3.37年であり,5年未満が19名,5年以上が3名であった.
回収された回答より123のラベルが抽出され,分析対象とした結果,20の小カテゴリ,さらに4つの大カテゴリが抽出された.4つの大カテゴリはそれぞれ【患者の精神面によるリハ介入への影響因子】 【患者への直接的な対応】【患者への間接的な対応】【セラピスト自身の振り返り(反省)】と命名した.
【考察】
大カテゴリのひとつである,【患者の精神面によるリハ介入への影響因子】では患者の感情失禁や暴言暴力などによる訓練拒否や非協力などリハ介入に影響がある要因から抽出された.当院回復期病棟においても,全ての有効回答で精神的問題に対応をした経験があり, 領域やリハビリ対象疾患を問わず,患者の精神的問題への対応に直面する場面があることが明らかとなった.また対応には,傾聴やリハの説明,訓練内容の工夫など【患者への直接的な対応】と介入場所や時間,担当スタッフなど環境調整.家族や他職種との連携などの【患者への間接的な対応】を行っていることも明らかとなった.【セラピスト自身の振り返り(反省)】は自分自身の対応への迷いや知識不足を感じたなど自責の反省と,ラポール形成の重要さを再確認したとの回答から抽出された.実際に当院では身体的介入や知識の勉強会は実施されているが精神的な対応を学ぶ機会は少ない.そのため資格習得後の学習の場の乏しさや,対応に不安や迷いが生じているのではないだろうか.今後はこのような情報を持ち寄り,ケースタスディや勉強会を通して各々が対応を向上していく必要があると思われる.そのためにも,領域を問わず精神的問題への対応の必要性について,認識を高めていくことが重要であると考える.