[PH-5-3] 自己分析レポートの活用が有効であったうつ病休職者への就労支援についての一考察
【序論】近年,気分障害の患者数の増加に伴い休職する方に対する就労支援が求められており,当院デイケアにおいてもリワークプログラム(リワーク)を導入している.リワークでは自己分析レポート(レポート)を通しての休職理由の分析が重要とされている(五十嵐良雄,2018).本報告では,レポートを作成し休職した要因が明らかになり,退職し障がい者枠での再就職を選択した事例を通してレポートの有効性を考察した.
【事例】50歳代男性.調理師.家族は母,妻,長女,次女.20歳代半ばにうつ病と診断された.料理長や店長も経験したが,症状の増悪にともない,休職,退職を繰り替えしてきた.今回の勤務先では約1年働いていたが,X年7月に自宅で自殺を図り,休職し当院に入院した.入院後は病棟のMCTプログラムや,OTプログラムに参加.OTプログラムでは,革細工などを行っていた.X年10月に退院し当院デイケアに通所を開始.X年11月よりデイケアのリワークに参加.尚,発表に際し,書面による症例の同意と,当院倫理審査委員会の承認を得た.
【評価】デイケア初回面接では「自宅にいるとまた変なことを考えてしまいそう」と話され,デイケアへ毎日通所することを希望された.集団活動への適応は良好であった.退院後の生活リズムは,概ね整っていたが,中途覚醒後の再入眠が困難であった.WAIS-Ⅳ:FSIQ80(VCI90,PRI87,WMI88,PSI71).復職準備性尺度:2.04,SASS:19, RAS:54, POMS2:AH58 CB:72 DO:90 FI:77 TA:79 VA:52 F:60 TMD:76
【経過】リワークの各回のホームワークや,レポートなどの課題にグループ内の誰よりも早く取りかかっていた.レポート記載の流れは1.休職までの症状の変化,2.症状が起こったときの環境,3.環境の変化に反応した自分の要因である(五十嵐良雄,2022).それを元に内容について面接,内容の追加や修正を繰り返す中で,自己内省が深化し,休職に陥る要因として,過剰なまでに真面目に仕事に打ち込む姿勢や上司からの期待に決して背くことができないなどといった内因に気付いた.それらの個人因子により,料理長などの管理職を任されがちであり,結果として責任が重くなり,仕事量は増大し,勤務時間が延長するという職場の環境が構築されてしまった.そして責任の重さや周囲からの期待の大きさに反し,仕事をうまく処理することができないという状況に陥り,自責の念にかられ次第に病状が悪化することが分かった.調理師として今までと同じように働き続けることは困難であるという結論に達し,X+1年1月,勤務先から早期の復職を促された際に,妻と相談のうえ退職を決意した.
【結果】本人,妻,筆者らと相談を重ね,支援を受けながら働くことのできる障がい者雇用での就労を目指すこととなった.障がい者民間活用委託訓練は,近隣のA施設の障がい者職業訓練コーディネーターに依頼し,実践能力習得訓練コースを受講することとなった.受講開始まではデイケアへの通所を継続する.
【考察】事例の特徴として,真面目で内省的であるため,レポート作成に協力的であったことがあげられる.それに加えて,筆者らとの面接を通じて自己や仕事内容を客観視したことで,休職原因について課題を整理することができ,今の仕事が自分に合っているのか再考するきっかけとなったと考える.レポートの作成,それを元にした面接は,自分自身や仕事内容について客観的に振り返ることができ,対象者自身が新たな選択肢を見つけていくために有効であることが再確認された.しかし,レポート作成に前向きに取り組めない事例も多く,より個別的な支援方法を検討していく必要もあると考える.
【事例】50歳代男性.調理師.家族は母,妻,長女,次女.20歳代半ばにうつ病と診断された.料理長や店長も経験したが,症状の増悪にともない,休職,退職を繰り替えしてきた.今回の勤務先では約1年働いていたが,X年7月に自宅で自殺を図り,休職し当院に入院した.入院後は病棟のMCTプログラムや,OTプログラムに参加.OTプログラムでは,革細工などを行っていた.X年10月に退院し当院デイケアに通所を開始.X年11月よりデイケアのリワークに参加.尚,発表に際し,書面による症例の同意と,当院倫理審査委員会の承認を得た.
【評価】デイケア初回面接では「自宅にいるとまた変なことを考えてしまいそう」と話され,デイケアへ毎日通所することを希望された.集団活動への適応は良好であった.退院後の生活リズムは,概ね整っていたが,中途覚醒後の再入眠が困難であった.WAIS-Ⅳ:FSIQ80(VCI90,PRI87,WMI88,PSI71).復職準備性尺度:2.04,SASS:19, RAS:54, POMS2:AH58 CB:72 DO:90 FI:77 TA:79 VA:52 F:60 TMD:76
【経過】リワークの各回のホームワークや,レポートなどの課題にグループ内の誰よりも早く取りかかっていた.レポート記載の流れは1.休職までの症状の変化,2.症状が起こったときの環境,3.環境の変化に反応した自分の要因である(五十嵐良雄,2022).それを元に内容について面接,内容の追加や修正を繰り返す中で,自己内省が深化し,休職に陥る要因として,過剰なまでに真面目に仕事に打ち込む姿勢や上司からの期待に決して背くことができないなどといった内因に気付いた.それらの個人因子により,料理長などの管理職を任されがちであり,結果として責任が重くなり,仕事量は増大し,勤務時間が延長するという職場の環境が構築されてしまった.そして責任の重さや周囲からの期待の大きさに反し,仕事をうまく処理することができないという状況に陥り,自責の念にかられ次第に病状が悪化することが分かった.調理師として今までと同じように働き続けることは困難であるという結論に達し,X+1年1月,勤務先から早期の復職を促された際に,妻と相談のうえ退職を決意した.
【結果】本人,妻,筆者らと相談を重ね,支援を受けながら働くことのできる障がい者雇用での就労を目指すこととなった.障がい者民間活用委託訓練は,近隣のA施設の障がい者職業訓練コーディネーターに依頼し,実践能力習得訓練コースを受講することとなった.受講開始まではデイケアへの通所を継続する.
【考察】事例の特徴として,真面目で内省的であるため,レポート作成に協力的であったことがあげられる.それに加えて,筆者らとの面接を通じて自己や仕事内容を客観視したことで,休職原因について課題を整理することができ,今の仕事が自分に合っているのか再考するきっかけとなったと考える.レポートの作成,それを元にした面接は,自分自身や仕事内容について客観的に振り返ることができ,対象者自身が新たな選択肢を見つけていくために有効であることが再確認された.しかし,レポート作成に前向きに取り組めない事例も多く,より個別的な支援方法を検討していく必要もあると考える.