第57回日本作業療法学会

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ポスター

精神障害

[PH-7] ポスター:精神障害 7

Sat. Nov 11, 2023 10:10 AM - 11:10 AM ポスター会場 (展示棟)

[PH-7-1] CAODを用いた外来精神科作業療法が統合失調症患者に及ぼす影響

鶴貝 彰悟, 松川 勇, 馬場 尊, 黒崎 修平, 星野 英里香 (足利赤十字病院リハビリテーション技術課)

【はじめに】外来精神科作業療法(以下,外来OT)の役割は,役割遂行能力の改善や社会性の獲得などとされており(香山2014),当院においてもそれらを目的に外来OTを行っている.作業機能障害は,作業に基づく主観的体験を含めた状態を示す概念として,その評価・介入の重要性が注目されており,作業機能障害の種類と評価(Classification and Assessment of Occupational Dysfunction;以下,CAOD)は,作業療法が解決すべき問題を明確にスクリーニングできるツールとして利用されている(須藤2017,崎本2017).そこで,当院外来OTを利用する統合失調症患者(以下,対象者)の作業機能障害の傾向と,CAODを用いた外来OTが対象者に与える影響について検討したため報告する.尚,本報告に対し,対象者には書面にて同意を得ている.
【方法】2019年6月から2023年1月の間で,当院外来OTを10か月以上利用している対象者8名(男性5名,女性3名,平均32.8±7.6歳)を対象とした.8名のうち,7名が無職,1名が休学中であった.実施形態は,療法士1人に対して患者10人以内のパラレルな場を利用した個別作業療法で,頻度は2週間に1回とした.個別作業療法の内容は,振り返りノートを用いた10分前後の面接,個別でのアクティビティ,軽運動を実施した.CAODは外来OT開始時と約10か月後に実施し,CAODをもとにプログラムの立案を行った.作業不均衡・作業剥奪・作業疎外・作業周縁化・重症度を示す潜在ランクスコア(以下,ランク)の平均値をそれぞれ開始時と再評価時で比較した.
【結果】初回評価時(括弧内は中央値)は,作業不均衡は8.0±4.7(5.0)/24点,作業剥奪は9.0±3.2(8.5)/21点,作業疎外は14.9±5.41(5.0)/21点,作業周縁化は17.1±7.81(6.5)/42点,ランクは2.8±1.0(3.0)/5であった.対象者のいずれも外来OT開始時は外出の機会がほとんどなく,日中は横になっている等,目的のない活動を繰り返していることが多かった.再評価時は,作業不均衡は8.4±5.7(5.0)点,作業剥奪は6.8±5.6(3.0)点,作業疎外は9.4±6.8(7.0)点,作業周縁化は11.0±5.2(10.0)点,ランクは2.0±1.3(1.5)であった.平均値は初回評価時と比較し,作業不均衡が悪化,作業剥奪・疎外・周縁化・ランクが改善した.ランクは6名が改善しており,福祉的就労,就学,家庭内役割の獲得,外出の機会の増加などが行えていた.1名はランクの変化なし.1名はランクが悪化しており,面接にて幻聴などの精神症状による生活の困難さや,子育てへの不安が強く聞かれた.
【考察】初回評価の結果より,対象者は作業疎外の点数が高く社会的な繋がりに乏しい傾向であった.入院中の統合失調症者は,作業療法など退院に向けて取り組む意味が見出せずに作業疎外を呈することがあるが(崎本2017),対象者は20~40歳代と若年であり学業や就労などが課題として求められ(野中2003),これらの経験の喪失が地域生活における作業疎外の要因の一つであったと考える.外出機会の増加や成功体験は新たな習慣となり,自己効力感を高めると報告されており(小砂2019),外来OTへの参加やアクティビティを継続して行えている成功体験は,自己効力感を高め,これらの積み重ねが生活に対する認識の変化や日々の活動に意味をもたらし,作業疎外の改善および役割・社会性の獲得に繋がったと考える.対象人数が少なくさらなる検討は必要ではあるが,CAODをもとにした個別性に配慮した外来OTは,地域で生活する統合失調症患者の役割遂行や社会生活能力を改善する傾向がみられた.